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「三陸道全線開通」 ②課題 地域の素通り懸念

 全線開通した三陸道(三陸沿岸道路)は、仙台―八戸間約359キロを東日本大震災前より3時間20分短い5時間13分で結ぶ。

 県内の三陸道の交通量は、延伸効果や復興関係の利用もあって震災前より増加。半面、石巻地方から気仙沼まで被災沿岸6市町の自治体は人口が減り、高齢化率も34%(令和2年)と全国平均の28%を上回る。高速道路網が地域振興に役立てられることが望ましいが、地域の素通りのほか、宿泊を伴わない日帰りの範囲の拡大が、逆効果になる心配がある。

 仙台河川国道事務所の資料によると、三陸道の交通量(4月平日平均)は昨年、鳴瀬奥松島―矢本間が3万5300台、石巻河南―石巻女川間が2万9300台。それぞれ震災前の平成22年に比べて9100台、1万2900台増えている。鳴瀬奥松島の下り八戸方面は無料区間。県北を広く見ても、内陸の国道4号と有料の東北道は震災前後で交通量が減り、三陸道とそれに並行する国道45号は伸びた地点が多い。

 河北インタ―チェンジ(IC)から1キロ弱の国道45号沿いにある道の駅上品の郷は、平成17年開業。当時は河北ICが仙台方面からの終点だった。農産物直売所やレストラン、県内の道の駅では唯一の温泉保養施設を併設し、震災でもボランティアの需要があって客足を伸ばした。

 しかし、平成27年度に約105万人あった客(レジ利用の実数)は30年度に約94万人まで減少。老朽化した施設改修のための休業もあったが、約30キロ先の三陸道に隣接する道の駅「三滝堂」が開業し、河北ICを下りて上品の郷で休憩する車も減った。

 東松島市でも三陸道の矢本パーキングを拡張して道の駅を設置する計画が進められる。三陸道沿いの道の駅は競争。というのも、気仙沼市の本吉パーキングから北は本線上にトイレがなく、休憩するには基本的に国道45号に下りる必要がある。沿線に道の駅は数あるが、本線から遠いほど不利だ。

 上品の郷に止められた車のナンバーは県外、県内が半々。浮津康逸駅長は「ここ2年は新型コロナウイルス感染症で客がぐっと減っている。感染が落ち着いた最近は客が戻ってきたが、全線開通の効果とはいいがたい」という。「類似施設がたくさんあるが、県内の中間地点として立ち寄ってもらえるよう、ここにしかないものを用意したり、イベントを開催したりしたい」と話す。

 二十数年前まで終点だった石巻市は今や通過点。いかに下りてもらい、滞在してもらえるかが課題になる。【熊谷利勝】



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