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サンマ昨年上回るも依然低調 ホヤ貝毒対策で海域再編

 今年の石巻地方の水産業は、春漁のコウナゴが漁獲ゼロと前代未聞の事態となり、夏場も養殖のホヤが貝毒で出荷規制を受け大きな打撃となった。主力となる定置網や底引き網は前年比で4割ほど水揚げ量が減少。新型コロナウイルスの影響で飲食店の消費が鈍ったことも響き、魚価も下落した。【渡邊裕紀】

 一方で32年ぶりの陸揚げとなった商業捕鯨では、鮎川漁港に活気を呼んだ。秋漁の主力となるサンマは、初水揚げがこれまでで最も遅くなったが、その後に巻き返しがあり、女川魚市場は最終的に過去最低だった昨年を上回る5千トン以上を水揚げした。

 鮎川漁港を拠点とする商業捕鯨が再開され、4月11日に実に32年ぶりとなるミンククジラが陸揚げされた。出荷された鯨肉は地元で需要が多くあったが、商業捕鯨の安定には鯨食文化の普及、地域外へのさらなる販路と消費拡大が喫緊の課題となっている。

 宮城の春漁の主役であるコウナゴは、4月13日から漁が解禁。しかし、初日から漁獲がなく、続く16日も空振り。何隻も調査を兼ねた漁に出るも「お椀に入る程度」と言われるほど、まとまった量が獲れない状況が続いた。出漁期最終日の5月8日も船は出ず、そのまま漁獲ゼロで打ち切られた。加工品を生産する業者にも大きな打撃があり、生産ラインを稼働できない日が続いた。

サンマ水揚げ好調 (25)

女川でのサンマ水揚げは昨年を上回った

 5月18日には、最盛期となっていたホヤからまひ性貝毒が検出され、県中部海域で出荷が停止。コロナ禍で自粛していた飲食店が再開を始めた時期で、消費回復に向かっていた矢先の出来事に生産者は苦境に立たされた。

 石巻地方のホヤの本格的な出荷規制は平成4年以降初めて。ホヤの検査海域は北部、中部、南部とかなり大まかに区切られ、多くの漁業者が見直しを訴えていた。これを受けて県漁協では、6月23日に検査海域を8海域に細分化。石巻地方を含む中部海域でも雄勝湾と女川湾・牡鹿半島東部の2つに分かれて検査し、基準を満たした海域から順次、出荷が再開された。

 好調となったのはイワシの水揚げで、石巻魚市場では上半期の水揚げが前年の4倍となる1万3400トンまで伸び、梅雨時期には旬となる「入梅イワシ」が多く揚がり、市場を活気付けた。

 女川魚市場を拠点するサンマ漁船は8月4日に出港し、北海道の釧路に船首を向けた。10日からロシア沖で操業を始めるも魚群が見当たらない日が続いた。女川での初水揚げは10月10日と過去最も遅かったが、その後は漁獲が安定。全国では3割近く水揚げ量が落ち過去最低を記録したが、多くのサンマ漁船が女川を選んで水揚げしたため、同市場は昨年を500トンほど上回る5060トンで着地した。

 温暖化など海況の変化によって魚種にも大きな変動があった今年の水産業。予測などを見ると来年も厳しい状況が続きそうだ。変化に対応し魚種を変更して漁を切り替えていくことも、現実味を帯び始めている。


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