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市政の行方③ 避難路整備の道筋見えず 女川原発2号機再稼働

 東北電力女川原発2号機を巡り、昨年3月に再稼働の前提となる「地元同意」の要請を国から受けた立地自治体の県と女川町、石巻市。住民説明会のほか、各議会での賛否の陳情・請願採決、市町村会議そして立地自治体の3者協議を経て、同11月、正式に地元同意を表明した。最大焦点となったのは「万が一原発事故が発生した際の避難計画の実効性の有無」。特に避難道路の早期整備を国や県に求める声は賛否を問わず多く出された。立地自治体の長として、原発課題にどう向き合っていくか、注目が集まる。【山口紘史】

 2号機は昨年2月に原子力規制委の審査に合格し、3月には再稼働の前提となる地元同意について経産相が県に要請。その手続きの一環で、8月には国や東北電が住民理解を求める住民説明会(県主催)を石巻地方では6カ所で開いた。

 2号機の新規制基準適合審査の経緯や結果、広域避難計画の内容を説明したが、原発の不安が拭えない住民からは広域避難計画の実効性に対する疑問の声が多く上がり、どの会場でも焦点となった。

 特に女川町から内陸に避難する際の主要道路となる国道398号は現状片側1車線。住民は「複合災害ではスムーズな避難は難しい」「再稼働するにしても避難道の早期整備は必要」などと指摘したが、具体な回答がないまま質疑は終結し、参加者からは不満の声が漏れた。

石巻市長選 市政の行方③ 女川原発2号機再稼働

住民説明会では再稼働に不安を抱く住民から避難計画の実効性を問う質問が相次いだ

 9月には女川、石巻の両議会が再稼働賛成の陳情、10月には県議会も賛成の請願をそれぞれ採択。いずれも再稼働容認の姿勢を示した。特に女川町議会は立地自治体議会として最も早く容認の姿勢を示したが、賛成議員たちも「何が何でも賛成」という意向を示したわけではない。

 原発の安全性や東北電の事業姿勢、地域の経済効果などを総合的に判断し、真剣に議論した上での「苦渋の決断」だったことは特筆すべきだろう。もちろんその中でも避難道の早期整備については徹底的に議論され、賛否問わず、国や県の積極的姿勢を求める声が多数挙げられた。

 11月の市町村長会議では各首長から賛否双方の意見が出されたが、最終的な判断は立地自治体の県、女川、石巻の首長判断に一任することで同意。その後の3者協議で正式に地元同意の意向が示された。

 村井嘉浩知事は「安全性確保が大前提だが、再生可能エネルギーで需要構造が支えられるまでは当面は原発が必要」とし、有事対応でも「避難道整備を含めた原子力災害の備えには終わりや完璧はない」と明言している。

 東北電は具体的な工事計画の妥当性、安全管理の保安規定など技術的な過程で国の原子力規制委員会の審査を受けながら、安全対策工事が終了する令和4年度以降の再稼働を目指している。

 本来ならこれと並行して避難道の整備も進めるべきだが、コロナの影響もあり、整備どころか、国の原子力防災訓練も延期になったまま開催の見通しが立っていない。

 女川原発の避難計画を考える会の原伸雄代表(78)=石巻市鹿又=は「市民の安全確保のため、避難計画のあり方が市政の当面の最重要課題。避難道以外にも屋内退避の方針やコロナ禍に伴う避難所スペース不足など課題は山積している。真剣に向き合ってほしい」と語気を強めた。

 原発再稼働の諸課題は石巻市、女川町だけでなく、広域や国、県を巻き込んだ全体の問題。この課題を首長はどう捉えるのか。他自治体とどう連携を取り進めていくのか。姿勢と手腕が試される。


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