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一歩一歩かみしめ走る 石巻地方で聖火リレー 復興の道 鎮魂と感謝

 東京五輪の聖火リレーは、19-21日に県内16市町村で繰り広げられ、19日午後は石巻市と女川町、20日午前には東松島市でそれぞれ行われた。石巻地方は総勢63人(石巻25人、女川22人、東松島16人)の走者が聖火を灯したトーチを手に走行。それぞれの思いを胸に走り、震災復興と鎮魂、支援への感謝を国内外に発信した。沿道では住民らが大きな拍手で背中を押した。

【石巻市】思いを胸に駆ける

 石巻市の聖火リレーはJR石巻駅前を出発し、雨の中、立町やアイトピア通りなど中心市街地と南境の総合運動公園周辺の2区間を走者がつないだ。

※要トリミング聖火リレー石巻 (15)

石巻駅前をスタートした鈴木さん(石巻市)

 市内第1走者の鈴木典行さん(56)=恵み野=は、震災で亡くなった次女真衣さんの名札を右ポケットにしのばせて走った。真衣さんは当時大川小6年生。大川伝承の会の共同代表として命の大切さを伝える典行さんは「真衣と一緒に走れた。遺族が走ることで、大川小でどんなことが起きていたのか知ってもらい学校防災につながれば」と望んだ。

 最終走者は大和千恵さん(38)=雄勝町=で、小学生らに迎えられて運動公園内のレプリカ聖火台前にゴール。かつて実業団に所属し、陸上競技で五輪出場を目指した大和さんは「選手の夢はかなわなかったが、聖火ランナーで関われた。復興に向けて頑張る雄勝を代表して走った」と笑顔を見せた。

【女川町】再建住宅からエール

 女川町は町総合運動公園から女川小中学校、商店街、女川駅前の特設会場などを走者がつないだ。沿道では多くの町民が傘を差しながら走者に手を振ったほか、高台の住宅からも町民が激励した。

女川聖火リレー (1)

町中心部を走る齋藤さん(女川町)

 第8走者で町地域医療センターの齋藤充センター長(56)は「町民や施設職員、家族の声援を受け、この10年間を思い出しながら走った」と語った。最終走者の植木智子さん(31)は「雨の中たくさんの人に応援いただきリレーをできたことは幸せ」と話し、駅前の特設会場の聖火皿に火を灯す大役も担った。

【東松島市】復興した姿を発信

 2日目の出発地点となった東松島市は、野蒜ケ丘西部集会所が起点。宮野森小が和太鼓演奏で盛り上げ、渥美巖市長は「昨年、日本に最初に聖火が到着したのは航空自衛隊松島基地。復興した地域を走る走者を応援してほしい」とあいさつした。

東松島市聖火

相澤さんが力強い走りを見せた(東松島市)

 第1走者の相澤一志さん(27)は同市矢本出身で、聴覚障害者のデフラグビー日本選抜選手。ゆっくりした足取りで走り、笑顔で第2走者に渡した。相澤さんは「デフラグビーの認知度を少しでも上げたかった。最高に楽しかった」と満足そうに話した。【熊谷利勝、横井康彦、本庄雅之】


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「フェアプレーの炎」赤々と レプリカ聖火台に点火
総合運動公園で寄贈式

 聖火台(炬火台)を模したレプリカが設置されている石巻市総合運動公園で19日、東京五輪聖火リレーの石巻入りに合わせ、寄贈式が行われた。レプリカに火が灯され、トーチを掲げて走る聖火ランナーたちの雰囲気を高めた。

聖火台寄贈式 (83)

点火され、勢いよく炎を上げた

 レプリカは鋳鉄製で高さ、最大直径ともに約1.5メートル。重さは約1トン。国立競技場建て替えに伴って平成27年から約4年半、石巻市に貸与され、同公園内の台座に展示されていた聖火台の3分の2の大きさ。レプリカも同じ台座の上に設置されている。

 市民有志の「聖火リレー出発地・聖火台誘致委員会」が市に寄贈し、制作費約400万円は誘致委の資金残高や寄付を充てた。寄贈式で誘致委の浅野亨委員長は「皆さんが元気になるように活用してほしい」、齋藤正美市長は「新たなシンボルとして大きなイベントで使う」と語った。

note用聖火

 レプリカが除幕された後、石巻専修大学女子競走部がトーチを掲げて入場。千葉彩有花主将が聖火台に上って点火し、炎が勢いよく上がると拍手が沸き起こった。レプリカの名称も発表され、「フェアプレーの炎(ひ)」と名付けられた。

 聖火台の周辺で聖火リレーのミニセレブレーションもあり、石巻地区消防音楽隊が生演奏を披露。小学生は小旗を振ってランナーを迎え入れ、中学生は最終ランナーの後を追うように走り、会場を盛り上げた。【外処健一】


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