医療福祉や防災機能集約 まちの〝顔〟復興拠点に
石巻駅前
石巻駅に入る列車の窓から見える駅前の風景は、この10年で大きく変化した。市役所の隣に市立病院が開院したのを皮切りに、公共交通の結節点に医療福祉や防災の拠点が集約整備された。【熊谷利勝】
地震から約40分後の市役所前。写真からは津波が来る危機感がまだ伝わらない(平成23年3月11日)
市役所は大地震で6階の議場を中心に被害を受け、職員や来庁者は隣の広場など雪が降る屋外に避難。多くの人は、海から離れた駅前まで津波が到達するとは思ってもみなかっただろう。周辺は1メートル前後の浸水。市役所は孤立し、避難した多くの人が不安な夜を過ごした。
沿岸部に比べれば駅前周辺の被害は軽い。当時は復興事業で駅前整備が進むとは考えられず、震災直後に記者が撮影した写真は多くはない。市はその年の9月に被災した市立病院を移転再建する方針を決め、翌1月に駅前を選定。周辺を津波復興拠点に位置付け、復興交付金による公共施設整備が進められた。
市立病院が移転し、歩行者デッキで結ばれた市役所(令和2年10月7日)
市立病院は平成28年9月に開院し、昨年5月に防災センター、今年6月には地域包括ケアシステムの推進拠点であるささえあいセンターが供用開始。歩行者デッキで市役所と市立病院などが結ばれ、浸水時も行き来できるようになった。
長く空きとなっていた市役所1階は今年、スーパーのイオンがオープン。市立病院用地となったにぎわい交流広場も再整備された。残る駅周辺整備事業は渋滞対策の南北間道路だけで、市は年内の開通へ急ぐ。
駅前への公共施設の集約は、コンパクトなまちづくりの象徴。ただ、若者や観光客の目線に立てば、まちの〝顔〟としては寂しくもある。
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