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震災遺構整備が大詰め 旧門脇小・年内で工事完了 観察棟設け4月公開

 石巻市の旧門脇小学校は、東日本大震災の津波と火災で被害を受けた本校舎を遺構として部分保存し、防災教育に役立てる施設とするための整備工事が大詰めを迎えている。10月末までに観察棟の新築や外構工事が完了し、内部の展示工事も来月までに終えて施工業者から市へ引き渡される見通し。年明けから来年4月の公開に向けた準備に入る。

 3階建ての本校舎は3階建てで、被災地で唯一、津波火災の痕跡を残す遺構。維持管理費などの関係で両端が解体され、中央部を現状のまま保存していく。4月の公開時には安全上、内部に立ち入れないが、北側から東側にかけて新設した観察棟から各階や南の海側が眺められる。

旧門脇小学校震災遺構20211116 (4)

外観が整った震災遺構門脇小学校。校門が再現された

 校庭には校門を再現。近くの石巻南浜津波復興祈念公園と一体感を作るように植栽を施し、被災後に新芽が成長した正面玄関のイチョウの木を残した。本校舎1階は東西の外側から内部が見られ、当時の児童の避難経路が分かるようプール跡も示す。

 既存の体育館や特別教室棟は、主に展示施設として改修。体育館は見学の発着点になるほか、被災車両を展示し、間取りの異なる2つの応急仮設住宅を復元する。

 被災校舎を見学後、観察棟から続く形で特別教室棟に入る。特別教室棟3階では旧門脇小と周辺地域の震災以前を写真や模型で紹介。被害と避難行動を焼けた黒板やピアノといった実物展示、ドキュメンタリー映像で伝える。一つ下の階には、外に突き出した場所を設け、震災当時いた住民の避難経路を解説するパネルを置く。

旧門脇小学校震災遺構20211116 (5)

 2階は市全体の被害を紹介する壁面展示や映像が主で、ラジオ石巻の当時の放送を用いて津波襲来時の緊迫した様子も伝える。また、日本列島や海溝の模型に投影した映像などで過去の地震が学べるほか、渡波、蛇田地区の地層の標本などから過去の津波と浸水域が分かるようにする。1階は企画展示室と多目的学習室になる。

 総事業費は約10億円。1周約1時間半前後の展示内容で、入館料(大人600円、高校生300円、小中学生200円)を徴収し、年間5千万円を見込む維持管理費の縮減に充てる。4月には旧大川小震災遺構と合わせて民間に管理運営を委託。来月の市議会定例会に委託先の選定に伴う議案を提案する。
【熊谷利勝】


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