保存食を愛してしまう
今年も味噌仕込みの季節がきました。
2019年最初に仕込んだのは、ひよこ豆の味噌。
味噌仕込みを始めて10年が経つけれど、ひよこ豆で仕込むようになったのは、ここ5年くらいのこと。
大豆とは違うねっとりとした甘味で、隠し味に使っても割とすぐにバレてしまう通常の味噌と違い、ひよこ味噌は本当に隠れていい味出してくれたりするんです。
薬膳の本をみてみると、葉酸を豊富に含んでいるので造血作用が高くて、貧血気味の女性にも妊婦さんにもいいなぁ。
イソフラボン(女性ホルモンに近い作用がある)を含む豆は全般的に、女性をサポートしてくれる食材だけれど、発酵という時間を経てさらにパワフルになってしまう。
味噌ってすごい。
時を経て味が作られていく、保存食ってすごい。
ちなみに…。
自宅での味噌仕込みの工程を簡単に説明すると、①豆を浸水する、②豆を茹でる、③麹と塩を合わせる(塩きり)、④茹でた豆を潰し、③の塩きり麹と合わせる、⑤味噌玉を作る、⑥容器に味噌玉を敷き詰める、⑦発酵熟成を待つ、という流れになります。
①の浸水は、乾燥した豆が水分を吸収するのを待つ時間。
②の茹でるのも、豆が柔らかくなるのを待つ時間。
③〜⑥までは、私の手を使った作業。
⑦の発酵熟成についても、時が進めてくれるのを待つ時間。
手前味噌ができるまでに私が関わることができるのは、ほんの数十分。
あとはただただ待つことだけなのです。
(環境を整えたりすることはしているけれど)
それが、好き。
私が毎日覗いたって、毎日手を入れたって、時間が経たなければどうにもならない。
むしろ関わりすぎるとダメな方向に進んでいくし。
自分という小さな存在と、空間や時間という大きな存在との共同作業。
お互いの関係性が如実に味に反映される、それが保存食。
梅干しや沢庵や、糠漬けだってそうだもの。
できることはほとんどない、むしろしないほうがいい。
でも見守ることをやめてはいけません。
過剰に関わらないことと、放置することは違うから。
なんだか人との関わりに似てるなぁ…。
保存食を作り続けてきた中で学んでいたのは、「食」だけではなかったのでした。
私はそのすべての過程で、自分以外の誰かや何かとの関わり方の感覚みたいなものを、掴み取ってきたのかもしれません。
ああ、そう気づいたらますます愛おしくなってきてしまいました。
小さな部屋に積み上がっている、味噌桶や梅干しが入った瓶、糠床も全て、私の手を介してここに生きているもの。
出来上がるまでに時間がかかるから、すぐに食べることはできないし、失敗したらまた一から始めなければならないものたち。
早くもない、便利でもない、自分の意思だけではどうにもならない、そんな保存食。
だからこそ愛してしまう。
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