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進行方向、西。

子供の頃から地理はあまり得意ではなく、東西南北は地元の盆踊りの唄で覚えた。今自分がどちらの方角を見ているかなんてことは、コンパスのアプリか何かを使わなければわからない。もちろん地図もうまく使えない。ナビも自分の向きが矢印で表示されないと全く役に立たない。

左右すら怪しいレベルの方向音痴である。(流石に左右は認識しているけれど、咄嗟に言葉が出てこないことがよくある。老化の可能性もなくはないが子供の頃からそうなので、言葉としての左右が自身に浸透していないのかもしれない、と思ったりもする。)


そんなわたしが急に西に惹かれるようになったのはここ一年くらいで、最近の西の追い上げが凄まじい。(あくまでわたしがそう感じているだけだが)わたしを西へ西へと引っ張り込もうとする何かがある。

まず、突然スペインに行きたくなった。スペインに対しての予備知識は全くなく、何故スペインなのかもわからぬまま、漠然とスペイン語を学習する為のアプリや本を揃えた。全く話せるようにはなっていないのだが、簡単な挨拶を覚えたところで自分はスペインに行くんだ、と確信した。根拠はない。

それからなんとなくスペインについて素人ながらに調べてみた。世界の教会の写真集を買ったりした。これについては自覚があったが、わたしは宗教的なものが好きなのである。わたし個人は特に信仰しているものはないが、神様というコンセプトが好きなのだ。御伽噺のような神話も、語り継がれるにあたっての大元が存在するはず。見えないものを信じるに値する何かがある。面白い。

宗教的建造物も魅力のひとつで、宗教色が色濃く反映されるそれらは本当に美しい。何も専門的な知識がないわたしでも、直感がそう思う。

仏像の類も好きで、それを知っている友人たちから誕生日にインドのガネーシャの置物を貰ったことがある。高さは20cmくらいだがかなり重たい。これを誕生日プレゼントに選んだ友人たちは本当に最高だし、何年も経ったが今でもちゃんと部屋に飾られている。

スペインに話を戻す。スペインはキリスト教のカトリックが主だが、かつてイスラム教も存在していた。

 (写真で巡る 世界の教会 / 雷鳥社)

イスラム教とキリスト教文化の融合…どうしてこんなに惹かれるのか本当にわからないのだけれど、すごく、すごく興奮するのだ。

更に意外と身近なところで再発見するスペインに、わたしのスペイン熱は上がる一方だった。例えばファッションブランドのZARAがスペインのブランドだとは知らなかった。それなりに利用していたのに、全く気付いていなかったのである。

そしてもう一つ、わたしは秋田県出身なのだが、秋田県民は誰もが知っている秋田銘菓、金萬のCMがスペイン語だったのだ。子供の頃は訳がわからないと思っていたが、簡単なスペイン語を勉強していく中で聴いたことがあるフレーズがいくつか出てきた。もしやと思い検索してみると、やはりそうらしい。

このCMの経緯は全くの謎だが、わたしはこれほど金萬を愛おしく思ったことはない。これほど秋田生まれで良かったと思ったことはない。リコ=おいしい!

わたしの気持ちは既にスペインへと飛んでいた。

だんだん全てのことが自分とスペインをつないでいるような気がしてきていた。自らの想像と妄想だけで、一種のトリップ状態に陥っていたように思う。


スペインに行くためには旅行資金が必要だ。まず神頼みから始めた。風水も見てみた。非現実的すぎて呆れるが、わたしは真剣だった。なにがなんでも金運を上げたい。昼休憩中も金運アップを片っ端から検索していたわたしに、職場の友人が言った。「今年の干支は猪だけど、日本以外だと豚なんだよ。豚の貯金箱とかあるでしょ?豚は金運のシンボルなんだって。」その流れから、西に行くと良いという話になった。ソースは見つけられなかったが、風水では金運は西から来て北に貯まるというから、そこから来ているのではないかと推測する。

スペインは漢字で西班牙と書く。略称は西。(他にも班や日などがあるようだが)燃えずにはいられなかった。

また西というよりは南西だが、3月にベトナムに行く予定があった。金運アップの予感しかしない。都合の良い解釈である。

それからは少し緩やかに一人旅について考えていた。スペイン語は勿論だが、英語だって話せない。そんなわたしが一人でスペインに行けるだろうか。人生2回目の海外旅行は韓国に初めて一人で行ったが、日本語が通じるし、飛行機の乗り換えもないし、なんとかなった。ベトナムにも一人で行くが、現地で妹と合流する為そこまで心配はない。しかしスペインはどうだろうか…そう考えて、一人旅の経験を積みたいと思った。色んな国が候補に上がった。どの国も魅力的だし、どの国にも行ってみたかった。手当たり次第に安い航空券を探してみたりもした。

そんな時見つけたのがこちら。

以前からおいしい中央アジア協会さんのnoteを見て、プロフが気になっていた。炒飯やピラフ、炊込みご飯などの味の付いたご飯が大好きなのだ。(世界三大炊込み御飯は絶対に現地で食したい。パエリアにビリヤニ。そして日本の松茸ご飯。)いくつかあるプロフの物語の中で、何故これに惹かれたのか。

バザールである。

バザールでプロフを食べたい。バザール、日本でいうところの市場。フランス語ならマルシェ。英語ならマーケット。活発で、生気が溢れているところ。これはわたしの勝手なイメージだが、旅行に行くなら現地のエネルギーをもらいたい。

さっそく新疆ウイグル自治区を検索。中国。地図を確認。

日本のだいたい西の方角。もうこじつけみたいだけれどここでも運命を感じる。やはりわたしは西に呼ばれている。

スペインと新疆ウイグル自治区の共通点もあった。それが巡礼路である。

スペインの巡礼路、サンティアゴ・デ・コンポステーラ。キリスト教の三大巡礼地のひとつで1000年以上の歴史がある聖地への道。なるべく若いうちに歩いてみたい。巡礼路の一部だけ参加(徒歩で100km以上、自転車で200km以上であれば巡礼証明書が貰える)も可能だが、せっかく行くのなら全部歩きたい。


そして新疆ウイグル自治区の巡礼路がシルクロード。貿易路の名前だが、仏教の巡礼路でもある。

なんの信仰も持たないわたしが巡礼路を歩きたいと思ったり、調べたりするのは変なのかもしれない。けれど今わたしが立っている足元に、歴史や文化があると思っている。それらに思いを馳せるのは全然変なことじゃない。
世界を知りたいと思うのは間違ってない。

よく考えれば地球は丸いのだし、西を向けば見たいものが全てあるのではないだろうか。西の引力に従ったわたしの進行方向に全部ある。西回りで地球一周、良いかもしれない。



わたしの大好きな漫画に、五十嵐大介のSARUがある。小説家の伊坂幸太郎との共作(小説は「SOSの猿」)なのだが、伊坂幸太郎の小説は日本が舞台で、五十嵐大介の漫画は世界が舞台となっている。どういったジャンルなのかは説明しにくいが、宗教、神話、伝承、SF、といったところか。

何故急に漫画の紹介をしているのかと言えば、この漫画(及び小説)の軸に西遊記があるからである。そう、西。

作中にはスペインも出てくるし、サンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂も出てくる。上巻の始まりは中国。購入当時、そこまで地名は気にして読んでいなかったし、現在この漫画を手に取っているのも西遊記にこじつけてやろうという浅はかな考えがあったからだ。
しかしながら改めて読み返してみて、ちょっと怖くもなった。

わたしがスペインに、西の方角に惹かれるようになったのは冒頭にも書いた通りここ1年の話だと思っていた。この漫画が発売されたのは10年程前で、購入時期もそのぐらいだと記憶している。もしかしたら深層で眠っていた僅かな記憶からスペインに憧れを抱いたのか?それとも何かの導きがあって再びこの漫画を開いたのか?果たしてこれは本当にわたしの意思なのか?
段々とオカルトな思考になってきたが、様々な要因(点)が確実に繋がったような気がする。

今年の目標は、新疆ウイグル自治区でプロフを食べること。
そしてスペインに行くこと。パエリアは絶対に食べる。

結局は食欲?
いやいや、食は大事なエネルギー源であり、文化の証し。食べてみたらどうして西の方角に惹かれていたのかわかるかもしれませんしね。


漫画が気になった方はどうぞ読んでみて下さい。
世界は繋がっている、とわたしは感じました。オカルト(?)だけど現実に起こり得そうだと思ってしまうくらい設定がしっかりしています。
五十嵐大介の頭の中見てみたい。






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