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妊娠11週、自宅で流産した日のこと。

はじめに

ある日の早朝、第二子妊娠中に突然大量出血があり、そのまま流産しました。

数日前に受けていた妊婦健診の経過は順調で、「流産のリスクは比較的低いでしょう」とのことだったので、とても驚きました。

本来の予定日は11月。新型コロナウイルスの流行もあり、大きな不安を抱えながらも、「今年のクリスマスは家族が増えるんだね」と、赤ちゃんの誕生を楽しみにしていました。つらい悪阻を紛らわしながら、少しふくらんできたお腹を愛でていた最中のことです。

2歳の長男は「○○くん、おにいちゃんになるの」と、得意げな顔。ぬいぐるみを可愛がりながら「あかちゃん、はやくあいたいね」と笑う子どもと、毎日幸せな日々を過ごしていました。

妊婦の約15%が経験する流産

日本産科婦人科学会の調査によると、医療機関で確認された妊娠事例のうち、約15%が流産になるとされています。そのうちの約80%が妊娠11週までの流産です。多くが染色体異常によるものであり、母体が原因とされることはほとんどありません。30代、40代と年齢が上がるにつれ、流産の確率は更に上がります。

15%の妊婦が流産するということは、多くの夫も、間接的に流産を経験することになります。また、流産は身体と精神に大きな負担がかかります。

法律で定められた産休前に起こる出来事ですが、通院と安静のため、突然の休暇が必要です。パートナーをサポートするために、休暇を申請する男性もいらっしゃいます。

妊娠中のパートナーを持つ男性や、企業のマネジメント層、まだ女性社員が少ないスタートアップの方にも知って欲しいと考え、流産当日の状況とその後の経過をまとめ、公開することにしました。

流産は妊娠報告前に起こる悲しい出来事

妊娠11週は一般的に「安定期」と呼ばれる時期より前。現在、私はフリーランスとして働いています。年間契約の仕事を抱えていること、アルコール飲料や旅行案件など、明確に受けられない仕事が出てくること、また悪阻がしんどかったことから、早々にSNS上で妊娠の事実をオープンにしていました。

一般的には「報告は流産の心配がなくなってから」という空気が根強く、まだ周囲への妊娠報告をしていない方も多い段階です。人に知られないまま、ひっそりと流産を経験する方もたくさんいらっしゃいます。

多くの妊婦さんが経験する流産ですが、とてもデリケートな話題であることから、詳細が公になることはあまりありません。

私自身、妊娠発覚時から流産する可能性が常に頭の片隅にはあったものの、それまでの妊婦検診での経過は順調。流産のイメージは「心拍が確認できない→病院で処置(稽留流産)」だったので、まさかいきなり出てきて動けなくなる状況になるとは、思ってもいませんでした。

突然の自然排出が流産の何%で起こるかは調べきれませんでしたが、妊婦さんの外出先や職場で突然起こることも考えられます。週数や体調で状況は大きく変わりますし、気持ちの面でも一人ひとりの受け止め方は異なります。「ある妊婦の流産体験のひとつ」として読んでいただければ幸いです。

流産当日の状況

・前触れなく、突然の大量出血(同時に胎児の排出を確認)
・陣痛のような激痛が走る
・痛みと貧血で立ち上がれず

妊娠11週のある日の早朝、大量出血に気がつきました。不正出血に備え、普段から夜用ナプキンを着用していましたが、シーツは真っ赤に。トイレに立とうとしたところ、下腹部に動けないほどの激痛が走りました。

どうにかトイレにたどり着いたあとも、出血が止まらず、貧血状態に。立ち上がれない状況となりました。

夫が病院に連絡したところ、「シャワーは浴びず、すぐに病院に来て欲しい」「その際、排出された子宮内容物は出来る範囲で保管し、持参を」との指示があり、そのまま家族で病院に向かうことに。

緊急事態宣言の中でタクシーが配車アプリでもつかまりにくく、病院までの移動は近所のカーシェアリングを利用しました。夫がごみ収集袋を敷いて、シートを汚さないように先回りしてくれたので、本当に助かりました。

病院に向かう途中から、さらに体調が悪くなっていきました。子宮収縮による陣痛のような痛みがどんどん大きくなり、貧血からくるめまいと震えも。夫の手助けがないと立ち上がれない状況になり、病院の待合室のソファでもずっと横になっている状況でした。

朝一で病院に到着。子宮にたまった血の処理の後、「子宮の内容物はまだ半分程度残っていること」「自然排出の経過観察後、3日後に再診察。必要があれば手術へ」「子宮収縮剤と痛み止めを処方」という診察を受け、すぐ帰宅することに。

胎児は病理検査に出すということで、病院でさようならをしました。検査後、赤ちゃんが自宅に戻ることはありません。

その後の経過

・痛み止めが効くまでは一人で動けない状況
・初日〜2日目まで出血と下腹部痛が激しかった
・身体中の浮腫みと倦怠感がひどくつらかった
・私の場合、3日後の通院では経過順調(手術は不要に)
・4日目以降も生理痛のようなジリジリした痛みが続く
・(私の場合)6日目、激しい下腹部痛と出血が再び

産後の子宮収縮〜悪露が出るまでの数日間と似た感じでした。経験者にしか伝わりませんが、体感的には帝王切開手術後の2〜3日目くらいキツかった……。大量の出血を伴うので、水分補給はもちろんのこと、食事もとったほうがいいです。

翌日は、痛み・出血量ともに、生理2日目の感覚に近かったです。気分を紛らわすため、少し外気浴に出てみましたが、立ちくらみが起きました。無理は禁物です。

3日目は出血・下腹部痛は続くものの、歩いて移動することが出来ました。4日目以降はだいぶ楽になりましたが、出血と子宮収縮はまだ続き、今も鈍い生理痛のような痛みがあります。

振り返りと所感

とにかく、痛みと貧血で身体への負担が大きかったです。排出したあとも、子宮収縮の痛みで夜はまったく眠れませんでした。

つらい出来事でしたが、赤ちゃんの顔を夫婦で一緒に見て、手のひらで抱えることができたのは、とても幸運だったと思います。手足の指までしっかりできていて、可愛い男の子でした。

今は気持ちも落ち着いていますが、2歳になる長男はまだ状況がわかっていません。彼が「○○くん、おにいちゃんになるの」「あかちゃん、げんきかなあ」と笑うたびに、私も夫も突然涙があふれてしまう状況です。

子どもには「今後我が家に赤ちゃんがくるかはわからないけれど、保育園や公園で出会う子どもたちに優しくすることで、すぐにでもおにいちゃんになれるよ」と伝えています。

病院では、最後に「手術を伴わない場合は、2回目の生理後から妊活を再開可能」とお話がありました。

自分からハッキリと質問すると「こんな悲しいことがあったのに、すぐ次の子のことを考えていいのだろうか」と罪悪感を持ってしまいそうだったので、先方から案内してもらえて安心することができました。

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(妊娠が発覚した日、お気に入りのお菓子を得意げに手渡してくれた長男)

「流産したばかりでこんなことを書けるなんて、随分ドライな人間なのですね」という見方もあるかと思います。正直、まだ私も、完全には気持ちの整理がついておりません。

ただ、大変ありがたいことに「体調は大丈夫ですか?」「悪阻は苦しくないですか?」と素敵なお気遣いをいただく機会も多く、相手の方が気まずく思うこともあるかと考え、このタイミングで公表することにしました。

本来であれば「妊娠おめでとう」と声をかけてくださった方、お世話になった方には、直接お伝えしたいところです。しかし流産の悲しい報告は、どうリアクションをしたらいいか困る方もいらっしゃいます。

優しい言葉をかけていただけることは本当にうれしいし、救われます。ただ、私が突然泣いてしまうと、相手のご負担にもなると判断し、ご報告方法のひとつとしても、このnoteを書いています。

体調が落ち着いてきたので、出来ることから、段階的に仕事を再開しております。在宅勤務中なので、自宅でベッドに横になりながら少しづつの作業です。通常通りの生活までは、もう少し時間がかかりそうです。

流産は乗り越えるものではありません。もし、また子どもを授かることがあったとしても、一生抱える出来事です。

緊急事態宣言の最中なので、供養もできない状況が続きます。昔から悲しいことがあったときには、文章を書いて思考を整理するのが私の習慣です。このnoteを書くことで、なによりも自分自身の心が楽になりました。

お墓もなく、戸籍にものこらないけれど、大切な家族である赤ちゃんのこと、これからも忘れずに生きていきます。

追記

悩んで「流産」「自然排出」などの検索ワードでこのnoteにたどり着く方も多数いらっしゃるかと考え、その後の生活やあって良かったアイテム、手続き、周囲にしてもらって助かったことなどの具体的な情報も下記記事にまとめました。

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