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1-2 説得出来ないのは自分の説明が悪いから?:親や大人は何を見て/何が見えて、どのように考え…だから反対するのか。

(※写真は卒業生枠で入れるトロント大学のRobarts Library13階からの眺め)

前回はゲームとルールとしての制度について「ルールを分かっていないとゲームは出来ないけど、海外進学というゲームのルール分かってますか?」という話をしました。
今回はその続きと「それについてどう話すか」についてです。

ゲームとルールを
・調べること
・理解すること

・ゲームを理解している人は、知りたい/知るべきことを分かっているので上手にルールを調べられる
・ルールを上手に調べられる人は、より良くゲームを理解出来る
というようにセットになっていて、これは裏を返せば「ゲームを分かっていないと、何を調べて良いかも分からない」という話になります。私は「経験(日本とアメリカで大学を出て、カナダの大学院にも行った)+仕事(ヨーロッパへの学生派遣)+学習(修士は大学の国際化とその制度面がテーマ)」を元に、進学を考える人の質問に対し「どこで何を調べれば、この人の欲している/この人が読むべき答えがあるか」が分かり、その情報を教えたり、関わったことの無い国で仕組み分からない場合も自分の知っている範囲の制度から「どこをどうやって調べたら良いか」を考えられますが、そうした「ゲーム自体への理解が無い」と「調べる事すら上手くいかない」これが難しさの本質です。(私が質問に答えたあと「もうちょっと調べてみます!」という反応は良く出ますが、こちらとしては「…で、あなた調べ方は知ってるの?」と思っています。)

では、何からやればよいのか。
まずは「制度についてきちんと勉強する」事、「その国の高等教育機関にはどういう物があって(カレッジ/総合大学、応用科学大学(UAS)/研究大学、単科大等々)、それぞれがその国でどういう機能を持った組織なのか」を正しく理解する事だと私は考えます。何故それが重要かというと単純に「それを理解しないことには自分の進学の目的、そこに行きたい理由に合っているか分からない」からです。これが日本の大学を志望する場合、大学・学部学科選びに関して「自分はAを学びに行きたいが、どの大学を選ぶか」という基本的なレベルで「コンピュータサイエンスを勉強したいが、その専攻があるかどうか分からない大学に行く」という、他人から見てワケの分からない選択をする人は多くないと思いますが、海外進学を考える人々は何故かこのレベルの発想の人が…多い。(※個人のツイッターランド対応による感想です。)確かに調べるのも、制度一般を理解するのも難しいとして、「あなた自身の志望それでいいんですかねぇ…。」と制度を読んで理解出来る人としては日々思っています…。

上記の様にゲーム(制度)とルールはそれぞれを構成する関係(ルールに基づく役割と、その動作がゲーム(制度))にあり、またゲーム/ルールをある程度理解しないと「それについて何を調べたら良いかが分からない」という関係もまた厄介です。そのため学習としては地道に制度についての情報を読み、分からない事があれば調べ、また制度について読み続ける…という方法しかありません。(※大学に入ってから新しい分野の勉強をするのもそんなもんです。)特に出願に関してはまず個々の大学のAdmissionのページを自分で読んで英語的にも内容的にも理解出来てない事には何も始まらんので、それを読解していくのも良いでしょう。(有益な情報、というか必要な情報は基本的にそこに全てありますし。)

さて、実際の基本的な事項の調べ方/勉強の仕方について、以前大学院志望向けに書きましたが、することは大きく変わらないのでまずはコレを参考にしてください。
https://note.com/hibi_mobi/n/n3041c214d775
そこから次に「公的機関が出している情報」(例:フルブライトのコレ https://www.fulbright.jp/study/abc/index.html)を、そこからもう少し「各国における大学の社会的意義と制度について」を調べたい時には専門書の該当箇所を(一例として下記)読む、というのを(簡単ではないけど)お勧めします。
・アメリカにおいてカレッジとはどういうものか
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-00539-8.html
・ドイツの大学は何故大学、工科大、応用科学大とあるのか
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-14004-4.html
・ヨーロッパの大学についてもう少し広く知りたい
https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766426588/
…というのも「制度」は歴史的経緯に基づいて作られているので、より良く理解するためにはどうしても「今そういうものになっているけど、どうしてそうなったか」を理解する必要があるからです。

…はい、少し難しいですが「歴史的・社会的な経緯がわかる」と「今の制度がなぜそういう物なのか」「だからそれは自分に合っているのかどうか」が分かると思います。

…そしてそれが今回のテーマ「それについてどう話すか」に繋がってきます。何故なら「自分でも分かってないことは、人に説明出来ない」からです。

サッカーや野球のルールは多くの人がある程度「それがどういうもので、どうなれば勝ちか」を説明出来ると思います。勿論、実際にやっている人はもっと具体的な作戦(こういう局面では、こういうプレーをする)も人に説明出来るでしょう。では、球技という事でアメフトはどうでしょう?更にもう一歩進んでオーストラリアンフットボールは…?同じ事は進学一般についても言えます。国内の大学進学志望の人は関係者に「共通テストというものがあり、国公立はまずそれが必要で、私立は大学によって、1月にあるからそのためにどういう準備が必要で…。」という説明が出来る。…では海外進学を志望されるみなさんは、それがどれぐらい出来ますか?そして、もし自分の知識が間違ってた時にそれに対して正しい情報を教えてくれる人がいますか…?

皆さんが既にお持ちの「何となく行きたい気持ち、興味関心」は最初の入り口として大事ですが、それがあるなら気持ちだけ焦ったり、他の進学アカの表面的な情報を真に受けたり羨んだりするの「ではなく」、ちゃんとした準備、「目的に対して実質が繋がっていく個々の準備」をやる必要があります。そしてその一つとして保護者への説明はどうしてもついて回りますし、自分の知識を訂正してくれる人も多くない以上、正しい準備について他の人より相当真面目に・慎重に考え、可能な限り正しく理解しておかなければいけません。(そしてそれは…簡単ではないのです。)そうでなければ「海外進学をしたい本人であるあなた」が正しく分かっていないものを、「保護者や奨学金の団体に説明し」て「納得・支援してもらい」、最後に「志望先に上手に志望動機を伝えて合格する」というのは…おそらく無理でしょう。(この逆のパターンで、親だけが熱心に勉強してて本人はあんまり興味が無い、という悪い話もありますが…それはまた別のお話。)

前回の内容にも関わりますが、日本国内で大学進学率はずっと上昇していますが、この解釈として「日本社会一般として、大学進学(によってより高いレベルの教育を受けること)は『良いこと』であると認識されている」と言って差し支え無いでしょう。あなたの保護者や高校の先生もそこについては(おそらく)同意するとして、「何故海外進学は反対するか」というと彼らは少し長く生きて色々経験した人として「経験したこと、知っていることの限りであなたの選択に関して妥当な事を伝える」責任を感じているから(知らない事にはすぐに賛成出来ない)です。これは良い意味で考えると、悪い選択肢を選んで欲しくない、前向きな気持ちからの支援ですが、悪い意味では「特に他国についてはその国についても、制度についても知らない事の方が多い(だから反対・留保する)」という事にもなります。これがもし保護者や関係者自体に留学歴、長期の滞在歴がある、という場合であれば、仮にネガティブな場合であってももう少し具体的・実践的な反応(「A国よりB国の方が良いのでは?」「C大学は学費的に厳しい…。」等)が返ってくる、「知っているからこそ具体的な話が出来」ます。一方で経験・情報が無い場合はどうしても「外国→知らない→『だから』やばそう」というイメージだけで雑な反応しか出来ません。

もし親友が「高校出たら
・芸人になりたいので修行する
・インドでクリケットの選手になりたい
・セコヤ族のシャーマンになりたい
けど、どう思う?」と聞いてきたらなんと返しますか?
「芸人…は何となくわかるけどリスク高くね?お前そんなに話面白かったっけ?」
「インド、クリケット?聞いた事あるけどなんかスポーツよね、って何故??」
「セコヤ族…????シャーマン????なる?なれるのかそれ!?」 (なった人の話 https://courrier.jp/news/archives/68234/
という具合に、知らない事への反応が微妙になるのは保護者だけが特殊な話ではなく、みなさんも自分が知らない事をやろうとしているのに意見を聞かれた場合こうなる思います。しかも保護者や学校の先生に関しては、そこに責任が付いてくる(しかも結構なお金が掛かる!!)ので、更に保守的に「よくわからないけど、それは大丈夫な選択なんだろうか…?」という反応にならざるを得ないワケです。

自分が何を考えているかを理解し、そのための情報を集めて、人を説得して支援を得て、それを実現する…目的と行きたい所がどこであれ、そういう段階を踏んでいくというのは自立した人になるための大事な要素です。もし上手く進学出来たら今度は着いたそこで卒業するまでも、その先も「誰も自分のことを知らない社会で、助けてくれる人々を調べて探し、やりたい事を伝えて、助けてもらいながら進んでいく」のの繰り返しです。今はまだ自転車の補助輪が付いている様な状態で、進む事自体は前向きな人達が色々と助けてくれますが、その先には自分で探しに行かない限り何も助けはありません。まず保護者の説得が出来ない人が、言葉も前提も違い、当然自分の事なんて知らない人に説明して、助けてもらうのは…まあ無理でしょう。

説得自体は周りの人の不安要因によって、気にしている情報が違うので効果的な方法は人次第だと思います。
(お金の話、情勢や治安、その先の進路/キャリア等々、そこは個別にご相談あれば話聞きます。)
いずれにせよ、行きたい/実際行くのはあなたであり、そのためにまずは「少なくとも人に説明出来る程度に、自分が正しく理解する」事が出来なくてはいけません。


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