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並の高校生が海外進学を考えるのを助けるために 1-1 制度を理解する、とは?:ルールとゲーム


(※背景画像は権威によって素人をビビらせ、根拠無い業者よりも説得力を持たせるためだけに載せた学位記です。)

両親に「高校進学を反対された」という話は流石にこのご時世聞きませんが、「大学進学を反対された」は「女性で理系」となるとまだ少なからずあり、同じ大学でも「海外進学は反対された」というのはよりあり得る話ですが、同じ進学でもこれらの違いは何でしょうか。

二つ目の「女性で理系」というので親があげるのは「結婚出来ない」という理由ですが、その言い方を構成する要素をもう少し考えるとそれは『「文系」ならば「結婚出来る」ので(価値観として)「良い」』という「親の理解」で、そう読むとこの主張に対して下のツッコミ所があります。
・文系と理系の実際のデータを取って結婚出来るか比較したのか
・結婚出来れば「良い」のか
・親の理解はどこから来たのか

もし、母親が昔から「結婚願望が強い大卒理系」で「自分の選択が、自分の価値観に対して苦労した」という実体験に基づいて言っているのであれば多少の根拠はありますが、そうでない場合(高卒、文系、調査結果を引用してない、自分で調べてもいない等)は、その主張には根拠がなく、「ただ漠然とそう思っているだけ」に過ぎません。しかし、「そう思う様になった」のには理由がないワケでも無く、学問的なトレーニングを積んでない人程「テレビや周りで、つまり世間一般でそう言われている事をフワッと信じる」のは一般的にそうである、と言えます。

今時高校進学を反対しないのも同様に、世間的な"常識"として「高校に行くのは当然」と思われていて、それを特に疑いもせず信じているからですが(今や高校については常識的に『当然』、みんな行くものだからこそ小中学校のように無償化されたと言えますが、50年前は下のリンクを見てもらうと当然ですらなく)、
・高校の進学率:98.8%→推移で考えると親の世代(1998−2000年/平成10-12年頃に高校生)でも進学率変わらない 「文部科学省 高等学校教育の現状について」
・大学の進学率:R3で54.9%(以下P5参照)→推移で考えると、親の世代の4年制大学は41−2%ぐらい。「文部科学省:令和3年度学校基本調査(確定値)の公表について」
大学に至っては今半分は行く様になりましたが、親の世代(20年弱前)の感覚からすればまだ行ってない人も6割はいたので、根拠なく想像だけで「結婚出来ないんじゃないか」から「結婚出来ない!」と思う人がいても仕方が無いと言えるでしょう。

…さて、本題に入りますがこれが海外進学となると…親に留学歴がある/海外の学位がある、という方が…恐らく少なく、「知らないから自分の考えられる範囲で想像する」というのがより普通の反応になる。

今の「2020(令和2)年度日本人学生留学状況調査結果」 この1ページ目にある107,346人というのは「日本の大学に在籍している学生で、その大学から大学間協定で留学した人+日本の大学に在籍していて、その大学のプログラムを利用せずに留学した人」の合計とそれぞれの数(しかも長期となる当然少ない)ですが、それでも同年の全学生数291万人(「文部科学省:令和2年学校基本調査(確定値)の好評について」)からすると3.6%程度。遡れる平成18年(2006)では学生数286万人に対し、1.8万人しか留学してないという…。しかも学位留学/海外進学については「受入国が各大学に学生ビザ正規生の外国人学生のデータを提出させる」もので、日本政府が知るよしもないですが恐らく実態数はもっと少ない…。

親としては子に教育の機会を与えること自体には一般的に賛成ですが、知らない選択肢でリスクを取る事には一般的に反対するもので、
・名前すら知らない大学よりは、有名大学
・それをやって何になるかよく分からない学部よりは、飯の種になりそうな分野の学部
・見た目の就職率が悪い大学・学部よりも高い大学・学部
を、大学制度について分析出来る専門家でないのでざっくり「良い選択」と思うものです。(専門家目線では確かに大きい大学の方が予算もあり、学生サービスが充実してたり、科目数が多くレベルも高いとは思いますが、本人にとってベストかは分からない…。)

そうした親のその観点からすると
・制度的に分からないし、何が得られるのか全く想像がつかない
・そのくせ大体高い
海外進学を反対するのは当然で、それに対し今の皆さんは
・自分も行きたいとは思いつつも、
・制度的にはあまり理解せずイメージだけで良いと思ってる海外進学を、
・自分で制度の調べ方も知らないので、
・行く本人でもないから当然よく分かっていない関係者に、何故それが良いのか、という説明も出来ていない
という状態ではないでしょうか。
(※うちの親は母専門学校卒・父高卒と、大学が何たるかは経験がありませんでしたが教育一般には肯定的で高校の留学も提案したの母ですし、大学でアメリカ行くのも「よく分からないので反対しないし、寧ろ賛成」という…。ここまで放任主義なのも珍しいとは思いますが、その分私は自分が理解していなければならない、という説明責任が発生したとも…。)

これはわかりやすく言い換えれば「何かの新しいこと(スポーツでもペット飼うでも、プログラミングでも)始めたいけど、気持ちだけ先行して反対されてる」状態と同じです。調べ方と制度を理解し、且つそれが周りの価値観に反さない事であれば、親が知らない事であっても「〇〇をすると××いう良いことが有るので私もやりたい」で合理的な話が出来ますが、「やりたいからやりたいのだ」では話が通じません。(例:スポーツしたい程度なら反対されないと思いますが、お金が掛かる事や「プログラミングのサマーキャンプに出たい」てな親の知らない事だとひっかかる、かもしれないというような。)

各種のルールが決まっている状況(競技スポーツや楽器演奏、プログラミング、組織におけるお仕事、等々)で「上手くやる」ためには
・「そもそも状況がどういうルールで動いているか」を理解し、
・それとそのゲーム(ルールで縛られた状況)に応じて、自分の目的が何で、その為にどう振る舞えば良いのか
を考える必要があります。というのも、「上手/下手」「良し悪し」はゲームのルールに依存するからです。

その一例として日本の大学受験というゲームであれば、上手くやるためにまず
・大学から出る試験/出願要項(必要書類、〆切、試験会場や試験日等)、過去の倍率や合格人数、最低点など。
・予備校や教育情報サービスの出す追加情報/解説(出題傾向、出願傾向等々)
・オープンキャンパスで雰囲気を見る、人の話を聞く
・同じ高校からの進路状況
・模試で自分の現在地を確認する
等の情報を集めて、そこから「自分はどこの大学に何故行きたい、今どういう立ち位置にいて、どれぐらいのチャンスがあり、どういう風に助けて欲しい」という話が出来ます。

…が、海外進学に関して皆さんはどうでしょうか?日本での進学と同じぐらい制度、ルールとそこで上手にやる方法を理解出来ていますか?…と、煽って見ましたが、それが上手くいかないのもそもそも国内での大学受験と、他国の大学に出願するのには様々な差が(当然)あるからです。

1)情報入手が難しい
・国内:まず何せ制度についての基本的な情報(形式、人数枠、倍率、点数、日程…)が全て日本語で手に入る
・海外:英語圏はまだましで、非英語圏だと部分的であれ英語で情報が何か出ていれば良い方 (仕事してる時、ヨーロッパは交換留学情報ですら集めるの苦労しました…。)

2)情報の読解も難しい
国内
・それがどういう意味か分からなくても支援が産業化されているので、詳しい人に助けを求められる
・周りの人も経験している人が多いので、その人自体は知らなくても「どこ・誰に聞けば正しい情報手に入るのか」は助言が出来る
海外
・余程高校レベルで多くの人がそうしてない限り詳しい人居ないし、進学人数が多い事で情報を持っている担当の人も各国制度の専門家というわけでは無い
・そもそもどこに情報が有るか、それをどう読めば良いか、知ってる人の方が少ないので、相談されて知らない話を振る人も居ない

3)指標とそれを元にしたの判断
・国内:各種の模試で自分の相対的な立ち位置が分かり、それを元に作戦を立てられるし、足りない部分は課金出来るサービスがある
・海外:試験じゃない書類選考のは何が評価されているのか分かりにくい、だからどう対策して良いか分からない。(でもってネットでドヤってる人は大体が家庭環境や経歴が特殊で、自分の状況から参考にならない…。)

…と、そもそもがその国の国内向け準備されている制度について、外国人として情報を入手、理解して、活用することへの難易度は日本国内向けより当然上がり、さらに言うと合格したいと思うならば「そもそもゲームのルールが分かりづらい中、更にその国のローカルの人よりも上手にゲームを進める必要がある」という事です。

もし自分が
・実家がめちゃくちゃ太いので、幼少時から進学にあたって有利な経験(言語や、活動への参加など)を経ている
・ルールの理解は低くても、もの凄い能力で実績を上げられて、スカウトが来る様な天才
であれば、恐らくもっと簡単に勧められますが…そうではない普通の人々の場合、せめて自分に出来る事で、最初にしなければならない事は「制度をよく調べ、よく読んで、そこに何が書いてあるか、それはどういう意味か理解する」、言い換えれば「正しいスタートラインに立つ」という事に尽きます。

「受かるために、まずその国の制度を理解する」ということ自体は難しい話ではないですが、大学制度の事ばっかり考えてる専門家としては、イメージだけで「外国行きたい!」と言う人々には出来てない人が多い様に思えますし、それは寧ろ高校生・親・高校の先生が、いきなり考えられる様になる方が難しいと考えています。というのも制度というのは単に入試制度だけでなく、
・その国の高等教育制度(アメリカにおけるUniversityとCollegeの違いと、カナダにおける違い、ヨーロッパにおけるUniversityとUniversity of Applied Sciences、その他単科大学の違い、Arts & Science系とビジネスやエンジニアリングなど実科系の違い等々)、
・国毎の違い(3年制と4年制、プログラム毎の出願と学部単位での出願、アメリカ系のカリキュラムとヨーロッパ系の違い等々)
・各国で高等教育制度がそうなっている社会的な理由(現状の制度がそういう風に設計された経緯、何故イギリスやオーストラリアで実科系の学校が大学に昇格したか、UniversityとFH/UASを分ける理由は何か等々)
という社会的な話をちゃんと勉強する、ある種「制度ヲタ」向けの各国の大学制度のルール部分について、「より有利にゲームをプレーする」ために多少は触れる必要があるからです。「大学」という名前と、「第三期の教育である」というぐらいしか同じものが無い業界ですが、制度ヲタはあくまでそれを対象として研究して「面白いなあ」で済みますが、申請・出願する、さらにはそこで人生の大事な部分の時間と労力を費やそうとする当事者ならば、理解の為にできる限りの努力をした方が良いのでは…とその筋のヲタの人は思うわけです。

合格のために「それを勉強するためにカナダに来て800万課金したぐらいの各国高等教育制度ヲタ」の私ぐらい説明出来る必要はありません。ですがが、少なくとも
・「英語圏でどこに行ったらいいの?」
・「TOEFLかIELTSどちらがいい?」
・「選考何にしたら?」等々
海外進学アカでツイートされているのような「それはあなたが自分で理解しないで、だれが代わりに理解して周りの人に説明してくれるの?」という事について、自分で理解する、「分からない事があれば調べられる/正しい情報に当たるためにどうやって調べるかが(ある程度)分かる」という基礎的な部分をまずはしっかり固めた方が良いのではないのでしょうか。勿論、各種の業者を利用してその辺りをある程度すっ飛ばす事は可能ですが、業者は進学させるまでが仕事で、その先の成功はあなた次第です。つまり、もし留学自体は出来ても自分が現地の制度を理解しないままなら、それを上手に使いこなすことは出来ません。「自分のことを自分のこととしてしっかりと考えられる」こと、シンプルですがまずはそこから始めるのが重要だと私は考えます。

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