藤井8冠に勝つためには数学的思考が必要

名人戦の1局目があり、藤井8冠が勝利した。

内容はというと、終盤の途中まで豊島九段が優勢に進めていたものの、ノータイムで打った香車で形勢は互角になり、その後はずるずると形勢が悪くなって、そのまま負ける形となった。

結局、終盤力の違いで負けたということになる。

実のところ、藤井8冠の対局において、終盤の途中までは対局相手が優勢に進めているという場面は結構ある。しかし、それらの対局のほとんどで最終的に逆転されてしまっている。

つまり、他のトップ棋士と藤井8冠には中盤までの差はあまりない。あるのは終盤における力差と言える。

ではこの終盤力というのは何なのかということなのだが、それこそが数学的思考である。

終盤になると見たことのない盤面が現れるわけだが、当然それは研究や暗記だけでは対応することができない。そこで使われる思考が数学的思考なのだが、その思考力が藤井8冠と他の棋士とで大きな差がある。

さらに、終盤に自分が優位に進めていたとしても藤井8冠が指した手には何かあるのではないかと考えてしまうらしいが、これは明らかに文系的思考であり、数学的思考ではない。

なぜなら、数学には人間の感情や感覚が入り込む余地がなく、どんな手を指されたとしても、それに対して最善手は何かを考えればいいだけだからである。

よく数学が苦手な人はある数学の問題に対してこれはひっかけ問題だと言うことがある。
もちろん、出題者はそれを狙って作成しているのだが、それはひっかかる人がいるからであり、数学的思考で問題を解いている人からするとひっかけでも何でもないのである。
つまりその問題は、数学を数学的に勉強したかどうかを問うているのである。言い方を変えるなら、パターン(解き方)の暗記ではなく本質を理解しましたかと聞いているということである。


現状、この数学的思考において藤井8冠に勝る棋士はいないように見える。というよりも、終盤力=数学的思考と考えている棋士もあまりいないのではないかと思う。

数学的思考と言っても数学が得意である必要はない。しかし、それでもなお、数学的思考で考えている人はかなり少ない。

いくら藤井8冠と言えども、全体局で勝利することは不可能に近いと思うが、現状では今後も高勝率を維持していき、タイトル戦においても防衛を続けていく可能性が高いのではないかと思う。


果たして、藤井8冠の牙城を崩す棋士が現れるのはいつになるだろうか。


あくまで個人的見解です。

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