
好きな時間で酪農にかかわる、“ちょうどよい”働き方
一つの仕事にとらわれず、いくつかの仕事を掛け合わせる。
そんな「複業」という働き方が最近注目を集めています。
特に地方は、農業や漁業などの「第一次産業」を中心に、一日のうち数時間だけ働く仕事が多いのも魅力の一つ。仕事を掛け合わせながら、自分らしいライフスタイルを叶えている人がたくさんいます。
「田舎暮らしってあこがれるけど、いきなり環境を変えるのは難しい」
「今の仕事を続けながら、新しい働き方に挑戦してみたい」
そんなふうに思っている人にこそおすすめしたい「複業」。
今回は「酪農」の仕事をご紹介します。
牧場の朝は早い
福井県の北端に位置するあわら市。全国でも有数の温泉地「あわら温泉」が有名ですが、お米をはじめ野菜や果樹栽培が盛んな丘陵地帯、越前加賀国定海岸に指定されている海岸地域や北潟湖など、多様な環境が揃う地域です。
温泉街から車で10分ほどの場所にあるのが、今回ご紹介する「田嶋牧場」です。
朝6時、まだ夜が明ける前の暗い時間帯ですが、牛たちはすでに活動を始めていました。
「朝早くからようこそお越しくださいました」と出迎えてくださったのは、田嶋牧場の田嶋和恵さん。田嶋さんは大学生の頃からここで働く、酪農歴15年のベテランです。
「田嶋牧場では乳牛を飼育しています。搾乳牛は50頭、妊娠する前の育成牛が20頭いて、一日1400kgもの生乳が出荷されているんですよ」
牛舎を見てみると、「ゆきちゃん」「むさし」などすべての牛たちに名前がつけられています。田嶋牧場では牛の血統を大切にしているため、仔牛から手厚く育て次の世代へつなげていくそう。
仔牛の名前はお父さん・お母さんの名前が由来になっていることも多く、例えば「ゆきちゃん」の血統は代々「アルプスの少女ハイジ」にちなんだ名前がつけられているのだとか。
▲それにしてもなんてきれいな瞳。癒されます
良い乳を出すためには心地よい環境から
田嶋牧場は、冬場は5時半から、夏場は5時から朝の仕事がスタート。
まずは牛舎の掃除から始まります。
牛たちの排泄物を取り除き、きれいなもみがらを敷き詰めていきます。
牧場は牛独特の匂いがするのでは…と身構えていましたが、田嶋牧場の牛舎は想像していた匂いはほとんどしません。
酪農の仕事は「搾乳」をイメージされる人が多いかもしれませんが、いい乳を出してもらうためには、まずは牛の環境を整えることが大切。人間と同じですね〜。
▲換気もバッチリ! 牛舎には牧草の香りが漂います
牛床がきれいになったところで、続いてはエサやり。
田嶋牧場では飼料のうち、半分以上を所有する畑で生産しています。牛の排泄物も肥料として畑に戻し、牧草づくりに利用する循環型農業を採用。エコですね。
▲畑の面積はおよそ10ヘクタールと、東京ドーム2.13個分!
▲飼料には牧草に加え米も利用。これにより、休耕田を活用できるメリットも
さらに、エサの量や与えるエサの種類も、牛一頭一頭に合わせて調整するというこだわりよう。
「人間が一人ひとり体質が違うように牛にも個体差があります。定期的に生乳の品質を調べることで牛にとって必要な栄養分がわかるんです。うちでは乳質の良い生乳を目指しているので、一頭一頭最高のコンディションにできればと思っています」
▲牛ごとに必要なエサの量が書かれているので、この通りにあげればOK
エサの時間とわかると、急にテンションが高まる牛たち。
「はい、エサだよ〜」とスタッフのみなさんが声をかけながら、手際良く牧草を運んでいきます。
▲牛によって性格もさまざま。一頭一頭に個性があり、愛らしいです
いよいよ搾乳
ここまでで約1時間。ようやく搾乳です。
乳首を拭いて手作業で少し搾って刺激を促し、「ミルカー」という機械をつけて搾乳、そして乳首を消毒するまでが一連の作業です。
▲前搾りが刺激となってホルモンが分泌されます。興奮している状態だと乳は出ないため、牛がリラックスしてこそ搾乳は成り立つそう
ミルカーを手際良く装着する田嶋さん。
「機械をつけると、あとは自動的に搾乳してくれますし、どのくらいの量を搾ったか機械が教えてくれるので慣れるとすぐにできます」
▲一頭につき搾乳時間は約5分。これを50頭分行います
ミルカーで搾乳された牛乳は、空気に触れないように牛舎に張り巡らされたパイプを通って、牛乳を保管する容器に集められ、冷蔵庫に。搾りたての牛乳はあたたかく、そのままだとすぐに腐ってしまうため、すぐに冷やすことが大切です。
こうして集められた牛乳は集乳車で乳業メーカーのもとに運ばれ、福井県産牛乳となって私たちの食卓に戻ってくるのです。
スタッフ2〜3名で手際良く搾乳を繰り返すこと約1時間半。
すべての牛たちの搾乳が終わり、機械を洗浄して後片付けをしているとすっかり夜が明け、空も明るくなっていました。午前9時半、朝の作業が終了です。
一日のうち4時間、牛と触れ合う働き方
酪農の仕事は朝と夕方の2部制。
田嶋牧場のように朝は5時〜9時(冬期は5時半〜9時半)、夕方は16時〜20時といった、「1日4時間だけ酪農に携わる」という働き方ができます。
▲田嶋牧場では牧場の近くに「ソフトクリーム屋」を運営しているため、日中こちらで販売に携わることも可能
田嶋牧場のスタッフのなかでも、昼間は学生をしていたりほかの仕事をしていたりと、朝や夕方の時間を有効に使っている人が多いそう。
「例えば、デスクワークがメインの仕事でも、数時間だけ生き物と触れ合い、身体を動かすと気分もリフレッシュできると思います。酪農の仕事は慣れるまで体力が必要な部分もありますが、1日4時間だけだと良いリフレッシュになるんじゃないかな」と田嶋さん。
牧場によっては、「まずは週末の朝だけ」といった始め方もできるそう。酪農を始めたいけど、いきなりでは不安……という方も、まずは1日4時間から経験を積むのがおすすめです。
▲「牛たちを見てると、平和だな〜と思います。毎日癒されるんですよね」
「複数の収入源を確保できる」「幅広いスキルが身に着く」など、複業の魅力はさまざま。
なかでも「今の仕事に軸足を残しつつ新しいことに挑戦できる」というのは、複業の大きな魅力ではないでしょうか。
自分の興味に合わせて、取り組む作業の幅を広げたり、別の仕事と組み合わせたり。「酪農」を軸に、新しい働き方の一歩を踏み出してみませんか。
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【取材先】
(株)田嶋牧場
福井県あわら市国影1
http://www3.fctv.ne.jp/~s-t-day/
instagram @tajima_farm_fukui
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