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移住して28年。“第一町人”として移住者とまちをつなぐ 【前編】

福井県池田町は、面積の9割が森や山に囲まれている人口3000人弱の小さなまち。山からの雪解け水と寒暖差の大きい地形から美味しいお米が育つ米どころとしても知られています。池田町で農家とカフェを営む長尾伸二さん・真樹さんは、28年前この地にやってきました。今では移住の大先輩として、まちを訪れる人たちをあたたかく迎え入れています。前編では池田町との出会いと、農業が軌道に乗るまでの道のりについてうかがいました。


長尾伸二さん・長尾真樹さん
大阪府出身。30歳の時に福井県池田町に移住。新規就農し、長尾農園を立ち上げる。長尾農園のお米「一俵懸命」は県内外にファンが多い。さらに2018年3月24日、池田町内に空き家と蔵を改修した週末カフェ「長尾と珈琲」をオープン。こちらも夫妻とのおしゃべりを楽しみに県内外から多くの人が訪れる。

池田町との出会いは新聞広告

大阪府出身の長尾伸二さんは今から28年前に
妻の真樹さんと2人のお子さんとともに
縁もゆかりもない池田町に家族で移住しました。
そのきっかけから伺っていきます。

長尾伸二さん(以下、伸二さん):
もともとは大阪の喫茶店で働いていました。24歳の時に生まれた長男がひどいアトピーで、どうしたら治るんだろうと調べているうちに、ごはんと魚と野菜、その土地で採れたものを食べるのが基本だと知りました。その頃から食の安全や有機農業に関心を持つようになったんです。

長尾真樹さん(以下、真樹さん):
私も自然食品を扱うお店にで働くようになり、そこの食品を積極的に使っていました。でも自然食品はスーパーで購入するものより値段がずっと高いんです。それなら自分たちで育てて食べるのが一番安全だし安心だなと思うようになりました。

伸二さん:
ある日、お客さんから「こんなんあるよ」と見せてもらったのが、「20年間農林業に従事すれば新築一軒家をプレゼント」という池田町の移住施策が載った新聞広告。「面白そうやなぁ、こんな自然豊かな田舎に住んだら、子どものアトピーも治るかも。ちょっと行ってみようかな」って冗談で言ったはずが、翌日「長尾が田舎に引っ越すらしいで」とお店で大盛り上がりになって(笑)。でも、嫁さんも意外と乗り気だったので、思い切って行ってみることにしました。

真樹さん:
池田町に向かう道中、山道を車で走っていると霧がかかって「本当に大丈夫かな」と不安になりましたが、辿り着いた池田町は、山と田んぼが一面に広がる自然豊かな場所でした。地元の子どもたちとすぐにうちとけて、田んぼを裸足を駆け回る我が子を見て、いい場所やなぁって思ったんです。まずは子どもがこの場所を好きになることが一番だと思っていたので、移住しようと決めました。

その時の移住施策にはタイミングが合わなかったものの
長尾さん一家はその後も池田町に通う生活を3年間続けたそう。
移住の決意がゆらぐことはなかったのでしょうか。

伸二さん:
仕事の合間に暇があれば池田町に行っていたので、そもそもほかの地域を見る暇がなかったですね。その間に人とのつながりができたし、池田町で農業を始めるための勉強もできたので、移住の決意が揺らぐ事はなかったです。


移住して農業を始める難しさを痛感

移住後は池田町の先輩農家の元で4年間勤め、
その後「長尾農園」として独立。
しかし、簡単な道のりではありませんでした。

伸二さん:
移住当初、「無農薬で育てる」というとまず周りの農業関係者に反対されてね。そんなことできるわけないと言われて対立することもありました。しかも、農業を始める時には田んぼは借りないといけないし、機械も買わないといけない。農協にお金を借りにいくと、親以外の保証人が必要だと言われるんです。移住したばかりの、どこの馬の骨かわからない若造の保証人になってくれる人なんているわけがない。だから実家の親に頭を下げて「必ず返すから頼む!」と、トラクターと田植え機を買うお金を貸りたんです。

もう意地でしたね。飲まず食わずで必死に働いて、耳を揃えてお金を返すことができました。自分たちの経験をふまえて、移住して農業を始めたいという人には厳しいかもしれませんが、「よっぽどの覚悟がないと、見ず知らずの場所での新規就農は難しいよ」と、伝えるようにしています。

有機肥料のみを使った長尾農園の米「一俵懸命」は、
農協を通さず、自分たちで販路を開拓。
並々ならぬ努力と工夫もあって、
今では全国各地に長尾農園のお米のファンがいます。

長尾農園のお米「一俵懸命」

伸二さん:
池田町内でも有機農業を町ぐるみで推進しようという動きが生まれ、ようやく自分たちがやってきたことが周りにも認めてもらえたような気がしました。自信を持って農業ができるようになってくると、やる気もどんどん出てくるもんだから、町内のいろんな活動に参加するようになったんです。例えば、池田町では家庭内の生ゴミを回収して有機の肥料にする取り組みを行っているのですが、この活動も20年以上になりますね。人のつながりもずいぶんと増えました。

今では池田町を代表する農家として
地域に欠かせない存在となっている長尾夫妻。
後編では、新たなチャレンジとして始めたカフェと
そこから生まれた交流についてうかがっていきます。

後編はこちら

長尾農園
http://nonkina-okome.com/


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