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飲食を通して福井の可能性を広げていく 〜前編〜

JR武生駅から徒歩約10分。2020年5月にオープンした『bistro Un(ビストロアン)』は、「福井でしか食べられないもので、福井では食べられないものを創る」をコンセプトに、誕生したビストロです。

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いたるところに伝統工芸品が活用された店内は、平日にもかかわらず予約でほぼ満席。福井だからこそ手に入る食材を使ったここだけの味や思わず歓声があがるような見た目の料理は、県内外で話題になっています。

オーナーの髙田太賀さんは神奈川県出身。2019年に仕事がきっかけで福井を訪れ、その後、家族とともにIターンしました。今回は見ず知らずの土地に移住するだけでなく開業も果たした髙田さんに、地方での暮らしや起業のリアルについて伺っていきます。

やりたいことがなかった大学時代

ーー髙田さんは移住するまで、福井を訪れたことはあったんですか?

いや、まったくなかったですね(笑)。まさか福井でお店を出すとは思ってもいなかったです。

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ーー福井に来るまでも飲食のお仕事をされていたとのことですが、昔から飲食の仕事に興味があったのですか?

昔は特にやりたいことがあったわけではなかったんです。とりあえず手広く勉強してみようと、大学は総合政策学部に入学したのですが、宗教や文化人類学、デザインの歴史などいろんなことを勉強しても興味を持てず、大学の図書館にこもって本を読み漁りながら書評ブログをつくっていたこともありました。

ーー今の髙田さんからはなんだか想像できないですね。

一方で学生団体を立ち上げて、平塚市の企業や行政と若者をつなげる活動もしていたのですが、将来仕事として取り組みたいかといえばそうでもなかったので、3年生になる時に大学を退学したんです。

セブでの運命的な出会い

ーー退学とは思い切りましたね。

うちの家系は独立起業している人が多いので、とにかく自分も手に職をつけたいなと思っていました。そこで、まずは得意な英語を伸ばそうと、フィリピンのセブ島に留学したんです。

セブでは朝から夕方までしっかり勉強するのですが、夜は自由時間なんです。そこで、留学仲間や先生と一緒にごはんを食べにいったり、現地に来ている日本人に向けてガイドをやっていたりしました。そんな時に僕の飲食業の師となる人に出会ったんです。まだ20歳そこらの若造にもかかわらず、飲食業の深い話を熱心にしていただき、この業界で働くのって面白そうと初めて自分のやりたい世界に飛び込んでみようと思いました。

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ーーすごい、人生何が起こるかわからないものですね。

帰国後はさまざまな店舗で修行を積んだ後、セブで出会った師匠のところに入社しました。六本木のビストロや天ぷら屋2店舗の統括店長を務め、料理をはじめ、接客やスタッフ教育、業者との交渉、数字の管理など、飲食店におけるあらゆるノウハウをマスターすることができました。ところが問題があって(笑)。

ーー問題とは?

人に任せたり後輩が育ったりすると、仕事が自分の手から離れていくんですよ。そこで副業しようと、飲食店の経営コンサルを始めました。その時に越前市にある『和牛ひつまぶしと肉盛りの店rita』の立ち上げサポートをしてくれないかと依頼を受け、はじめて福井に来ることになったんです。これが僕にとっての運命を変える出来事になりましたね。

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▲立ち上げのサポートをした『和牛ひつまぶしと肉盛りの店rita』

この土地に惚れ込んだ出会い

ーー福井にはじめて来たときの印象を詳しく教えてください。

福井は「恐竜博物館」のイメージくらいしかなかったのですが、空気はきれいだし、食材のレベルは高い。都市部に比べると家賃などの固定費がおさえられるので、経営的な数字を見ていると、都会レベルの売り上げを出せるくらい飲食業のポテンシャルが高いなと思いました。

あとは、『秋吉』が印象に残りましたね。

ーー『秋吉』って焼き鳥の?

はい! 『秋吉』が福井のソウルフードだと言われていたのは知っていたのですが、実際に行ってみると焼き鳥は美味しいし、老若男女さまざまな方が働いていて活気がある。お客さんもお店の方もみんな楽しそうなのがいいなと思いました。店員さんがお客さんのことを「社長!」って呼ぶんですよ(笑)。なぜだろうと思って後から調べてみると、福井は社長輩出率が日本でもトップクラスだということを知りました。

ーー『秋吉』を気に入ってもらえたのは嬉しいです!

さらに福井に通うなかで、越前打刃物をはじめ、越前和紙や越前箪笥など、数多くの伝統工芸品が息づいていることも知りました。伝統工芸というと自分とは遠い世界のように感じていましたが、福井は職人さんの存在が身近なんですよ。ものづくりに関わる方といろんなお話をさせていただくなかで、すっかりこの場所に惚れ込んでしまったんです。そんな時に運良く「空いている物件があるよ」と教えていただき、思い切って移住することを決めました。

開業はあくまでもやりたいことへの第一歩

ーー馴染みのない土地に拠点を移すだけではなく、開業することに不安はなかったですか?

それはほとんどなかったです。この場所の伝統工芸や地元食材は素晴らしい武器になると確信してましたから。でも、現状ではそれらを十分に生かし切れてないのがもったいないと感じていました。さまざまな業態の飲食店を経験してきた自分なら、それらをもっと活かせるんじゃないかと、逆にワクワクした気持ちになりましたね。

福井でお店をオープンすると決めてからは、友人知人から情報を入手したり、自ら問い合わせて歴史や文化、技術などを聞き、実際に伝統工芸のものづくりの場に足を運ぶことも多かったですね。知り合いもいないところからのスタートになりましたが、おかげさまでクラウドファンディングでも多くの方にご支援いただき、2020年5月に『bistro Un』をオープンすることができました。

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▲昔ながらの佇まいを残す『bistro Un』

ーー
素敵なお店ですね。開店当初から話題で、満席の時も多いと聞きます。

ありがとうございます。「福井でしか食べられないもので、福井では食べられないものを創る」というコンセプトを大切にしたかったので、鮮度抜群の魚介をあえて熟成させて旨みを閉じ込めたり、水が滴り落ちるような朝どれの地場野菜を使ったり、衝撃的な美味しさだったブラッターチーズを特別に取引きさせてもらったりなど、時間と手間をかけて仕入れた素材を用いて創り出しています。

すべて福井の食材ですが、この場所でしか口にすることのできない味にこだわっていますね。

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店内ではこれまで出会った越前打刃物のナイフや越前和紙の照明などを取り入れています。福井の方々でさえまだ知らないような福井名物の数々を実際に見て、触って、使って、食べて、知ることができる機会をつくれたらと考えています。

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店名のUn(アン)は、フランス語で1や一歩、1号店、初心などの意味を持ちます。僕がやりたいことは、飲食を通して福井県の持つ魅力を県内はもちろん日本中、世界中に伝えていけるようなシステムを構築することなんです。このお店は、福井を盛り上げていくための第一歩だと思っています。

ーーー

無事、お店をオープンした髙田さん。しかし、それは福井で実現したいことの第一歩だったようです。後編では、福井での暮らしやビジネスを広げていく髙田さんが今後実現したいことについて迫っていきます。


bistro Un(ビストロ アン)
住所:越前市本町1-22
電話:0778-42-7123
営業時間:11:30~15:00(14:30L.O.)、17:30~22:30(21:30L.O.)
定休日:不定休
駐車場:13台
https://r893200.gorp.jp/

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福井暮らすはたらくサポートセンター ( 福井Uターンセンター )
〒910-0858 福井県福井市手寄 1 丁目 4-1 AOSSA7 階
電話:0776-43-6295 ( 東京、名古屋、京都、大阪にも窓口があります)
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福井県公式就職情報サイト「291JOBS」
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