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小浜「よっぱらいサバ」の養殖を受け継いだ、ゼロからの挑戦 〜前編〜

「地方で暮らしたい」

そんな時に最も気になるのが「仕事」ではないでしょうか。

これまでの経験を生かして転職する、思い切ってイチから起業するなど、いろんな方法がありますが、「事業を受け継ぐ」ことで地域の担い手になる方法もあります。

特に農業や漁業などの「第一次産業」分野では、イチから起業するよりも事業を受け継ぐことで設備やサポートが整うため、安心して始められるメリットも。

後継者不足や高齢化などの課題も同時に解決できるため、今注目されています。

「起業してみたいけど、イチから始めるのは大変そう」
「地域とのつながりをつくる仕事を始めたい」
そんな方にも新たな選択肢になるはず。

今回は前編後編の2回にわたり、福井県小浜市田烏(たがらす)でサバの養殖を受け継いだ横山拓也さんをご紹介します。

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横山拓也さん/田烏水産株式会社 代表取締役
兵庫県尼崎市出身。大学卒業後、牧師として東京の教会に赴任し、32歳で機械工学の企業に転職。バイオ系企業の立ち上げを経て徳島大学大学院博士課程(後期)で研究中、「よっぱらいサバ」に出会い小浜市へ。2017年田烏に移住し、2019年田烏水産株式会社を設立。

上品な味で香り高い「よっぱらいサバ」

ーー横山さんこんにちは。今日はよろしくお願いします。田烏って初めて来たのですがいいところですね。

田烏は全部で120世帯くらいの小さな漁村なんですよ。海だけじゃなく、山や棚田など日本の原風景のような景色が気に入っています。今日は「よっぱらいサバ」の水揚げを見ていただこうと思います。

早速いけすに向かいましょう!

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▲5分ほどでいけすに到着

ーーいけすにはどれくらいの数のサバがいるんですか?

いけすは10基あり、多い時で約7000匹ものサバを養殖しています。若狭湾や近海で育った天然種苗(養殖用の稚魚)をいけすの中で約3ヶ月間かけて育て、出荷するんです。

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ーーところで、「よっぱらいサバ」とはどんなサバなんですか?

「よっぱらいサバ」とは、酒粕を混ぜた飼料を与えて育てた小浜市のブランドサバです。
魚は食べたものの香りが身に移るのですが、「よっぱらいサバ」は酒粕の作用で生臭くなくさわやかな香りがするんです。全国各地で脂の乗ったサバはたくさんありますが、脂の乗りよりも旨みや甘みを感じられるサバを目指しています。

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▲これが「よっぱらいサバ」の餌。細かい穴が空いていて、酒粕の成分が浸透するようになっている


ーー酒粕でそんなに味が変わるんですね。

餌だけでなく、若狭湾に面した環境も大きいと思います。田烏の海って海独特の磯臭さがないと思いませんか?


ーーそう言われると、そこまで潮の香りが強くないかも…。

若狭湾付近の海は有機栄養分が低いので、磯臭さが少ないですし、赤潮もほとんど起こりません。しかし、田烏は海だけではなく山にも囲まれているので、山からの無機栄養分が海に流れ込むんです。その作用もあり、サバの身が締まって美味しくなるんですよ。サバって焼いたり〆たりすることが多いですが、「よっぱらいサバ」は刺身で食べると歯応えを感じられるのでおすすめです。

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抜群の鮮度を保ち、その日のうちにお届け

ーー今からどんな作業をするんですか?

サバは海を広範囲で泳ぎ回る魚なので、実はいけすで養殖をすることが難しいんです。体も傷つきやすく、水温や環境の変化に弱い魚なんですよ。まずは餌を与えながら、各いけすの様子を確認していきます。

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▲いけすを覗き込み、注意深くサバの様子を確認

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▲元気よくはねています!

その後は必要な数だけ水揚げし、鮮度の高い状態で市場や飲食店に届けています。京都ぐらいの距離であれば、今朝獲れたサバをその日のディナーで使っていただくことも可能です。

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▲活きが良すぎて写真におさまりきらない「よっぱらいサバ」

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▲料理人や仲買人のオーダーで鮮度を保つ「神経締め」という作業を行うことも

サバ復活にかけた思い

ーー横山さんは2019年に小浜市から事業を受け継いで、「田烏水産株式会社」を立ち上げたんですよね。

はい。先ほども言いましたが、サバは養殖が難しいので、世界中でもサバの養殖を専業で行っている会社はまずないと思います。今では漁業協同組合や大学などと共同で、IoTを活用したサバの管理も始めていますが、それでも昨年の猛暑では7000匹いたサバのうち4000匹が死んでしまう出来事もありました。


ーー4000匹も! なぜ難しいといわれているサバの養殖にあえて挑戦したのですか?

実は小浜市ではサバが大量に獲れた時期があったんです。田烏では日本で初めて巾着網漁法という方法でサバを獲っていて、昭和49年には田烏だけで3580トンもの水揚げがありました。それが環境の変化などで次第に漁獲量が減少し、今では年間1トンほどになってしまいました。


ーーそんなに減ったんですか……。

そんな中で、平成27年4月に「御食国若狭と鯖街道」が日本遺産第1号に認定されたんです。小浜は京都を結ぶ「鯖街道」起点の場所なので、昔から続く独自のサバ文化を取り戻そうと、小浜市で「鯖復活プロジェクト」が立ち上がりました。

刺身でも食べられる美味しい小浜のサバを安定供給できると、観光にもプラスになるはず。「よっぱらいサバ」を通してたくさんの方に田烏へ来てもらいたい、そんな思いがあるからこそ、この養殖を広げていきたいと思っています。

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漁業は未経験からでも始められる

ーー横山さんみたいに「漁業の仕事を受け継ぐ」ことはできるのでしょうか?

漁師の高齢化や後継者不足など、存続に頭を悩ませている事業者も増えているので、「水産の仕事を始めたい」という方は「事業を受け継ぐ」選択肢もあると思います。

小浜市では水産事業に関するサポートも手厚く、親身に相談に乗ってくれる体勢も整っていますし、福井県でも「ふくい水産カレッジ」という給付金つきの研修制度があります。

未経験から養殖や漁船漁業、海女の仕事を実践的に学びながら独立のサポートも受けられるので、おすすめしたいですね。


ーーそういう研修があるなら、挑戦しやすいですね。

僕だって、本格的に養殖のことを学び始めてわずか2年でこの会社を立ち上げたので、興味のある方はぜひ飛び込んでもらいたいですね。漁業で活躍する仲間がもっと増えるといいなと思っています。

後編では、県外出身の横山さんがなぜ小浜市で「よっぱらいサバ」の養殖を始めることになったのか。田烏の暮らしについても伺っていきます。

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【取材先】
田烏水産株式会社
福井県小浜市田烏63-3
http://www.tagarasu.com/
Youtubeチャンネル▶︎「田烏水産サバラジオ」で検索


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