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つみ重ねてきた建物の歴史をリスペクトし、新たな関係性を生み出す【後編】

趣味のスノーボードがいつでも楽しめる場所に拠点を作りたい。ごはんや水が美味しくて、自然に溢れた場所で自分のクリエイティビティを発揮したい。さまざまな偶然の出会いに誘われ、福井県大野市に拠点を移したWEBコンサルタントの中村和幸さん。移住者としてこのまちと関わる中で感じたのが、観光より深い関係性を育める場所の必要性でした。

前編はこちら

「スノーボードで移住した人がいるらしい」と噂に

2018年の年末に大野市へ拠点を移した中村さん。
移住直後は趣味のスノーボードを楽しむ日々だったそう。
「スノーボードのために移住した人がいるらしい」と中村さんの噂は広まり大野でのつながりがゆるやかに広がっていきました。

中村さん(以下、中村):大野は田舎でよく聞くような“ねっとりとした”付き合いはなくて、僕のように外から来た移住者にも「どこから来たんや?」とやわらかく受け入れてくれるまちなんです。お誘いをいただくたびに少しずつこのまちで仲の良い人たちが増えていきました。

しかし、大野の暮らしに馴染んでいくなかで、
中村さんにある疑問が生まれます。

中村:大野って本当に住みやすくていいところ。僕は仕事柄、ついPRや発信の目線で物事を考えてしまうのですが、ちゃんと発信していたらもっと話題になっていてもおかしくないまちなんですよ。僕の場合、運良く空き家が見つかって、近所の人にも恵まれてこの暮らしを楽しんでいるけど、“たまたま”でしかこのまちの良さに辿り着けないなんてもったいないなと思ったんです。「このまちにはいつ訪れてもゆるく地元の人と接点を持てる場所が必要だ」と思うようになりました。

「特に旅慣れた人であれば、なおさら観光より深いつながりを作りたいと感じるはず。受け入れる側としてもできることがたくさんあるんじゃないかと思いました」

大野を訪れる人が求めるのはどんな場所なのか。
中村さんが考えたのは観光案内所ではなく「関係案内所」でした。

中村:カフェやゲストハウスはすでにあったので、あと必要な場所は「仕事をする場所」だと思っていました。旅先で仕事ができて、移住者と気軽に情報交換ができる場所。仕事だけだと限定されるから、飲食店も作ったら飲みに行けるし、地元のキーパーソンとつながることもできる。「そんな関係性を育める場所があればみんなうれしくないですか?」と大野の仲間たちにプレゼンしたところ、みんな「それいいね!」って賛同してくれたんです。

取り壊し寸前の古民家と奇跡の出会い

こうして、新たな関係性を育む場所をつくるべく、
計画をスタートさせた中村さんたち。
ある時偶然にも取り壊し寸前の古民家と出会います。

中村:大野の中心地、七間通りの突き当たりにある築60年ほどの古民家です。もともと米屋だった場所で、梁も立派なんですよ。理想的な建物との出会いは、急にやってくるものなんですね。この建物を壊してはもったいないと、家主に僕たちの考えていることを伝え、佇まいを残しながら使わせてもらうことになりました。

建てられた当時の立派な梁は今も健在

中村:基礎や電気、水道関係など素人ではできないところはプロの力を借りていますが、基本はリノベーション。お金もそこまでかけられないのでワークショップを開いてみんなで作業したり、ビジネスプランコンテストに出場して資金を得たりしながら、多くの方にこの場所のことを知ってもらい、少しずつ認知度を広げていきました。


中村さんが考えるリノベーションの良さとは

こうして2021年7月、「カンケイ商店」が無事完成しました。
中村さんはリノベーションの良さをどのように考えているのでしょうか。

中村:建物が積み重ねた歴史の重みや風合いは新築には出せないもの。大野の城下町は約400年の歴史がありますが、その文脈を汲んで自分たちならどんな合いの手が入れられるかを考えることが重要と考えています。例えばカンケイ商店の1階にある「イチナナバル」は、ここの住所の番地が1-7だからつけられた名前なんです。ロゴはもともとあった住所プレートをモチーフにしていて、大家さんもとても喜んでくれました。先人たちが積み重ねてきた建物の歴史をリスペクトしながら僕たちなりにアレンジして表現する、それがリノベーションの良さかなと思っています。

みんなで思い切って床を剥がした1階は……
素敵な空間に生まれ変わりました!

中村:大野市内には今も空き家が500軒ほどあるといわれています。空き家の活用は大家さんとの相性が重要ですが、いつかそれらの物件を活かして一棟貸しの宿などにもチャレンジしてみたいですね。僕だけじゃなく、リノベーションを通してまちのポテンシャルを引き出す人が増えていくと、地域に良い循環が生み出せそう。リノベーションに興味がある方もない方も、ぜひカンケイ商店にふらっと遊びにきてください!

※記事の内容は取材当時のものです。

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カンケイ商店
住所:大野市元町1-7
https://www.instagram.com/kankeishoten/


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