松本市特別名勝 火打岩
梓川左岸、松本市倭にある岩で、東西9m、南北7.5m、高さ3mの大きさがあります。明神岩とも呼ばれ、松本市の指定文化財(特別名勝)になっています。
岩の上には小さな祠が乗っていて、この祠は、梓川を挟んで対岸にある、岩崎神社の元宮とされています。
というのも、この岩、梓川の河床をくぐって、対岸の岩崎神社に繋がっているといわれ、神社と関係が深いんです。
また、デーラボッチ※が西山から東山へ移動するときに踏んだ飛び石であるとも伝えられ、神社のみならず、民間伝承でも色々といわれのある岩です。
サイズもさることながら、それだけ特徴的な岩であるといえるでしょう。
※東日本を中心に伝わる巨人伝承、ダイダラボッチのこと。この地域でデーラボッチといわれる。
2021年7月撮影
岩の名前と写真を見て分かる人もいるでしょうが、この岩は地質的にチャートに分類される岩です。
チャートはとても硬い性質なので、打つと火花が出るので火打ち石と呼ばれます。
チャートは、二酸化ケイ素の殻を持つ放散虫というプランクトンが海底に堆積してできた岩石です。フッ酸(フッ化水素。劇物。)で処理すると、見事な幾何学形状の放散虫(の殻)を見ることができます。
チャートに特徴的な縞模様が褶曲しており、サイズも大きいため、特別視されていたのも頷けるのですが、この岩の南面はやや土に埋もれた状態になっています。
2021年7月撮影 岩の南面。祠は東面している。
明治時代に梓川が氾濫した際に土砂に埋まってしまったそうで、それ以前は15mとも16mともあったといわれます。確かに、岩はこの土の下へ続いているように思えます。
周りは民家もありますが水田地帯。もっといえば梓川の氾濫原で堆積地形なのですが、そんなところにぽつんと巨大なチャートがある...。
これは梓川が運んできた岩なのか、それとも基盤の一部なのか、度々議論されてきました。
運搬された岩だとすれば、度々の梓川の氾濫に逆らってこの場にあり続けるのも少し不思議ですね。
現在では基盤の一部だと考えられていて、産総研の地質図Naviでもそのような地質断面図になっています。
地質断面図 g:礫及び砂 Sc:チャート Sx:混在岩
(産総研 地質図Naviより)
火打岩の案内板によると、この岩には根があり、梓川から安曇地区にかけて広く分布するチャートの岩体に繋がっているとも言われるそうです。
近くには岩岡や根石という地積もあり、関連の深い地名なのかと考えてしまいます。
おっと。梓川を越えて、岩崎神社までは至ってないようですね(笑)。
参考文献
"岩岡の火打岩(明神岩)", 松本市, cited 2021.8.14.
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