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労務の知識を広めたい。ライター社労士ズコさんの仕事観

今回インタビューしたのは、ライター兼社会保険労務士(以下、社労士)としてご活躍されているズコさん。歯科助手として働いていたズコさんが、なぜ社労士を目指したのか。社労士の働き方や、知ることの大切さを伺いました。

歯科助手として約6年勤めたのち、社労士事務所で3年勤務。その後、大阪の出版社で人事•中途採用を経験、現在は社労士事務所を開業。【白い会社を増やす】をモットーに労務についての普及をライティングにより行う。
Twitter:https://twitter.com/zuccoxbaxxxx
note:https://note.com/zucozoo/

ライター社労士の働き方

ーーまずは簡単に、自己紹介をお願いします。

ライターと社労士の活動をおこなっております。ライターは4月からはじめて主に採用、労務などの人事関連の記事を書いています。

社労士としては労務相談、記事の監修、校閲、就業規則のチェック、クラウドシステムの初期設定をやっています。仕事の比率としては7割ライター、3割社労士です。

ーークラウドシステムの設定もおこなうのですね。

そうですね。クラウドシステムは初期設定をしないと使えないんです。自社の従業員情報を登録して、自社ルールをシステムに教えないと動かないのでその対応をしています。

初期設定以外にも、設定を変更したいけど方法が分からない場合に代理でシステム設定をすることもあります。ただ、社労士のメイン業務としてやっている方は少ないです。

今までは紙で手続きをすることが多く、給与計算やタイムカードも紙で管理されていました。でも現在、アナログなものを電子化する動きが見られます。

パソコンやスマホを利用してクラウド上で出退勤の記録をしたり、クラウドシステムを活用して煩雑な人事業務を効率化していこうとしています。

歯科助手から社労士を目指す

ーー社労士を目指した背景をお伺いしてもよろしいですか?

25歳から目指し始めましたがそのときは歯科助手をしていました。歯科助手って歯科医院のなかではすごい給与面や位置が低いんですよね。資格をもっていなくてもできる仕事なので。

この仕事を死ぬまでやるのは無理だと思っていました。もしキャリアアップするならば歯科衛生士になるか他の仕事をするしか選択肢がないんです。意を決してキャリアチェンジをしようと思いました。

もともと社労士には興味があったんですよね。アルバイト時代に先輩がクビになってしまった経験があって、そのときに労働基準法を勉強したいなと思ったのが、そもそものきっかけです。

法律で人を守る仕事をして、法律の知識をもっていたら人を守れるのかなと。1番接することが多い法律を考えたときに身近だと労務だなと思い、総合的に判断して社労士を目指しはじめました。

1軒目の歯科医院をやめたあとに試験を受けたのですがそのときは落ちてしまいました。無職でいるわけにもいかないのでとりあえず就職しようと思い仕事を探したのですが、当時まわりには社労士関連の仕事がなかったんです。

すぐに就職しなければと思い一旦2軒目の歯科医院に就職しました。2軒目の歯科医院で働いている間もずっと社労士の勉強はしていたのですが、それでもなかなか受かりませんでした。

ーー受験にあたってどれくらい勉強されたのですか?

試験に受かったのが4回目でした。ネットによると約800~1000時間勉強時間が必要と書かれている記事が多いですが、私はそれ以上の時間を費やしました。

でも私のまわりには独学で数ヶ月勉強して合格した猛者もいるので、ほんと人によりけりだと思います。

ーーどのように社労士の勉強はされたのですか?

もともと試験勉強を真面目に受けたことがありませんでした。勉強の仕方も一夜漬けで。高校も100%受かると確信がある高校を受け、大学もAO入試なので面接だけでした。ちゃんと勉強した経験が今までの人生でないんです。

社労士の試験は一夜漬けでは絶対にムリなのでまず、勉強の仕方から全部変えないといけませんでした。必要な勉強のスケジュールを組むのも人生ではじめてでした。

7割とったら合格する試験なので、満点を目指すより7割を目指す考え方にしましたね。
平日は1日2、3時間勉強して土日に10時間以上勉強する生活をずっとしていた時期もあります。でも、最後は結局自分との戦いでした。最後の年はもう意地ですね。

念願の社労士

ーー努力の末合格されたのですね。晴れて社労士になりましたが、最初の事務所で働いてみていかがでしたか?

業務量がとにかく多かったです。社労士の受験勉強と実務は全然違うので、当初は書類の書き方もわかりませんでした。

でもやらないといけないので、ネットで検索したり行政やハローワーク、年金事務所に電話したりして確認しました。それでも専門度が高すぎてわからないんです。

作業が全然進まないのに仕事はどんどんたまり、業務過多になって残業が増えるスパイラルでしたね。精神的にも追い詰められてしまいました。人間関係はよかったんですが、業務過多なのが問題でした。

ーーそうだったのですね……。次の事務所に勤務先を変えてからはどうでしたか?

2軒目の事務所はちゃんと仕事がまわせる環境でした。お客様もきちんとコンプライアンスを守っていて、意識の高い人ばかりでした。計画的にお仕事をとり、もらうべき報酬をもらって社員に還付する考え方をしていましたね。

社労士の手続きで年度更新という1年に1回の大きなイベントがありますが、その締め切りもしっかり守っていて。2軒目のような環境は珍しい方だと思います。

ーーそこから開業に踏み切ったきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか?


もともと開業をしたい!というより「在宅」にこだわっていました。25歳のときに社労士を目指しはじめたのですが、そのときから飼っているうさぎがいるんです。

うさぎが高齢期になったときに介護をしたい思いが強く、在宅で働ける仕事を探していました。

2軒目の事務所のときに上司に在宅の打診をしましたが、まだコロナが深刻化していない時期でもあり、あまり前向きではありませんでした。

その後は事務所を辞めてスカウトされた企業で在宅ワークをしていましたが紆余曲折あって、開業に至っています。

ーー社労士のキャリアはどのような選択肢があるのでしょうか?

大体開業するか会社の人事、インハウスの社労士をやる人が多いです。一方で、社労士試験に合格しても「資格を持っているだけ」の人もいました。社労士の登録にもお金がかかるんです。

地域によりますが開業するときに払ったお金は約30万円。それから毎年会費として約8万円が必要になります。

社労士のネームバリューに払わないといけないお金が高いんですよ。だから社労士として開業しないでとりあえず資格だけもっていますっていう人もいます。

8士業ってあるんですけど、統計データをみたときに年収ではそのなかで7番目なんですね社労士って。

稼げていないと言われていますが、実情は稼いでいる人はすごい稼いでいて二極化になっているんです。稼ごうと思えば敵が少ないのでむしろチャンスじゃんと私は思っています(笑)。

社労士が語る労務の重要性


ーー社労士からみて、「これ知っていたら便利なのになあ」と思う知識ってありますか?

雇用保険の給付についてもっと知ってほしいです。特に再就職手当。雇用保険の給付のひとつですが、失業保険は知っているけど再就職手当を知らない人が多く、もったいないなあと。

再就職手当は満たす要件が細かく、満たしていないともらえなかったり額が減ってしまったりしますが、制度があるのを知ったうえで自分の人生計画をたてるのは有意義だと思います。

2、30代の方で失業保険を満額もらおうとすると、自己都合でしたら3ヶ月の制限があり、その次に3ヶ月お金を貰える期間があるのがふつうです。

6ヶ月間無職でいるか、失業保険と再就職手当を貰って新しいキャリアを早めにスタートするかで選択肢が増えてきます。

保険を上手く使うことによって選択肢が増えるんですよね。保険の使い方を知らないと、少ない選択肢のなかで自分の生き方を決めないといけません。知っておくのは大切だと思いますし、自分を守るためにも必要な知識です。

あとは、退職届に「自己都合退職」と記載してやめてしまっていいのか、疑問を持ってほしいです。会社から辞めるよう言われたのに、自己都合退職で辞める人があまりにも多くて。

会社から言われたのならば「自己都合退職」ではなくて会社都合退職だよと強く伝えたいです。

退職届に「自己都合退職」と書いたあとで相談に来られても、本当は会社都合だったとは立証がむずかしいので、「退職届を書いてほんとにいいのかな?」と疑問に思ってほしいです。

ーーもし上司に強く言えない場合はどうするのがよいのでしょうか?

1人で言い返すのではなく、その段階で誰かについてきてもらうのがいいです。上司との面談に同席していただける社労士もいらっしゃいます。知らないことが悪いことではないので、知っている人に聞くステップを踏んでほしいです。

社労士の存在があまり認知されていないのでその発想にならないと思うんですが、ライターとしてもっと社労士の存在や仕事について伝えていきたいです。

本当にこれで良いのかな?と思ったらTwitterのDMで社労士に相談する人もいるらしいので、ちょっとしたアクションを起こすだけでももらえる失業保険は違うことを覚えておいてほしいです。

ーー若い世代になると法律にあまり詳しくない方もいらっしゃるかと思いますが、情報を知るにはどうすればよいのでしょうか?

今の日本は石につまずかないと法律を知らない環境になっています。会社でトラブルに巻き込まれた段階で労働基準監督署にいったり、ハローワークに電話したりするケースが多いんです。

労務相談が得意な先輩がいるんですけど、先輩がよく言っているのは「痛い目にあわないと知らない法律がある世の中が間違っている。」と仰っています。

学校教育でもやるべきと仰る先輩もいますが、私はなんでも学校教育に押し付けるのは違うと思うんです。ここは課題ですね。答えが出ていません。

「ブラック企業」をなくしたい

ーー最後に、今後の目標を教えて下さい!

ブラック企業についての本を出すことと、子どもたちが社会に出る前に社会保険や労働保険について最低限の基礎知識を知ってもらうことを考えています。

先ほどもでてきましたが、知らない人に向けて知ってもらうきっかけづくりをもっと自分のなかで明確にしたいです。知らなくてもいいからちょっと違和感を感じた段階で相談してほしいです。

「それってこの業界だったらあるあるだよね。」とか言われていることってあると思うんですけど、私からしたら違反を当たり前にしてほしくないんですよね。

自分で解決を試みるのもいいんですが、もう少し人に相談するって選択肢をもって仕事をしたほうが自分も守れると思います。今は「ググって調べろ」と言われる風潮ですけど、検索して分からなければ人に聞いてほしいです。

ーー応援しております。本日はありがとうございました!

今回ズコさんの話を伺い、労務や法律の重要性を改めて感じさせられました。若い世代ですとまだまだ知らない人も多いかと思われます。違和感を感じたらまずは調べるところからはじめていくと現状の改善につながるかもしれません。

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