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散歩しながら考えた乃木坂46文化

人生で最も追いかけたエンタメは?と聞かれれば迷わず乃木坂46と答える。

俺が中学生の頃に結成されて、今年でデビュー10周年。今やアイドル界の頂点に君臨するトップグループになった。その気になれば各種媒体でメンバーの活躍を毎日のように見れるし、OGも幅広く活躍している。
一番熱心に追っていた当時は伊藤万理華が好きで、ライブも握手会もよく参加していたが、大学入学と共になんとなくフェードアウトしていった。

最近、乃木坂の曲を聴きながら散歩をしているときに、乃木坂46の文化的な流れについてなんとなくまとまった考えが出来たのでだらだらと書くことにする。


あくまでも個人的な考えなので、全然違えよと思った人は無視してください。


1.結成〜グループの色の確立

乃木坂46は2011年8月に結成、2012年2月に「ぐるぐるカーテン」を発売してメジャーデビューする。
結成当初の乃木坂のコンセプトは、当時アイドル界の圧倒的王様であったAKB48の"公式ライバル"というものだった。メディアに最初に取り上げられた楽曲はAKB48の代表曲をオマージュした「会いたかったかもしれない」だったし、初めて客前でパフォーマンスをしたのもAKB48のイベントだった。

生駒里奈をセンターに据え、1年間グループの方向性を模索した乃木坂において最初にグループの色を確立させた楽曲といえば5thシングルの「君の名は希望」になるだろう。
現在の乃木坂にも受け継がれる『清楚』『淑やか』のようなイメージを最初に作り出したのは紛れもなくこの楽曲で、紅白歌合戦初出演時にも歌われている。

「君の名は希望」は透明人間と呼ばれるような”僕”が、自分の存在に気づいてくれた”君”に対して恋することで世界の美しさに気づく様を描いている。
要するに、クラスの中心ではなく端にいる大人しい子の歌であり、それが乃木坂メンバーの雰囲気にマッチしたとも言える。
そして、この曲において確立されたグループの色を最も濃く表現していたメンバーがいる。西野七瀬だ。

その後白石麻衣と共にグループの顔となる西野七瀬だが、当時のポジションは3列目。握手人気は少しあるがグループの先頭に立つようなメンバーではなかった。
冠番組でも泣く姿が度々放送され、本人もグループの中心、ましてやセンターになることなど想像もしていなかっただろう。

しかし、その少女が持つ儚い雰囲気こそが乃木坂が最初に確立したコンセプトであり、その表現者として相応しいメンバーこそが西野七瀬だったのである。

そして、8thシングル「気づいたら片想い」で乃木坂における”清楚”や”儚さ”の表現は一旦結実する。
西野七瀬をセンターに据え、Akira Sunsetの楽曲、柳沢翔と澤本嘉光によるミュージックビデオ、泣き顔のジャケット写真など、当時の乃木坂が持つ儚さの表現力を全面に出して制作されたシングルだった。


2011年の結成〜2014年は
グループの色の確立と西野七瀬の台頭によるその深化
の期間だったと言える。
同時に、乃木坂46にとって次のステップへと進む準備が始まっていたのもこの時期である。


2.パフォーマンスとグループ愛

8thシングルにて”清楚系”の深掘りをひと段落させた乃木坂にとって、次のステージとなったのがパフォーマンスの強化だった。このきっかけとなった二つの出来事は共に2014年初頭に起きている。

一つは現在も続く人気コンテンツであるアンダーライブの誕生だ。
8thシングルから始まったアンダーライブ創世期。伊藤万理華を中心に、1000人規模の会場で大掛かりな演出を行わず歌とダンスだけで観客を魅了するスタイルは、当時のファンの間で大きな話題となった。

もう一つが生駒里奈、松井玲奈の交換留学による異文化交流である。
48Gの中でも最も体育会系で知られるSKE48のエース松井玲奈と触れ合い、生駒里奈が実際にAKB48劇場に立ってステージ上でのノウハウを持ち帰ったこと。さらには2014年の夏に初となる大規模全国ツアーを行ったことも大きかっただろう。

これらの流れを汲んで生まれたのが11thシングルの「命は美しい」だ。
当時の乃木坂において史上最高難易度と謳われた激しいダンスナンバーは、グループの新しい一面を見せる絶好の楽曲となった。アイドルグループが一度は通るダンスナンバーという路線を乃木坂も歩み始めたのだ。
乃木坂のパフォーマンスの力は17thシングル「インフルエンサー」においてさらに磨きがかかり、同曲でレコード大賞を受賞することになる。


一方で、活動開始から4.5年が経過した乃木坂において、グループを去るメンバーが増えてきたのもこの頃である。特に大きかったのは御三家の一角でもあった橋本奈々未の卒業・芸能界引退だろう。

多くの仲間を送り出す立場を経験し、残されたメンバーはこの頃から口々にグループへの愛を語るようになる。乃木坂46というグループが好きであること。メンバーが大切であること。苦楽を共にしてきた仲間との別れが辛いこと。

橋本奈々未の卒業曲でもあった16thシングル「サヨナラの意味」では、メンバー個人個人のグループ愛を楽曲表現として昇華することに成功している。この曲が若い世代の卒業ソングとして定着したのも、その表現力によるものだろう。


2014年〜2017年は
パフォーマンスの成長とグループ愛の発見
を軸とした期間だった。
そして橋本奈々未と入れ替わるようにして、3期生という新しい風が吹き込んでくる。


3.他者の受け入れから世界愛へ

18thシングル「逃げ水」において最も注目されるべきは白石麻衣と大園桃子、西野七瀬と与田祐希の関係性だろう。当時を批判する訳ではないが、7thシングル「バレッタ」で堀未央奈がセンターに抜擢された時とは明らかに違う”受け入れ態勢”がすでに整っていた。

グループが大きくなり個人の仕事も増えたことによる心の余裕なのか、年齢差によるものなのか、勿論様々な要因があると思われるが、メンバーの精神的な成長が見てとれる瞬間だった。

そして乃木坂はグループ全体としても他者を受け入れる方向へと進むこととなる。この方向性を体現した曲が20thシングル「シンクロニシティ」と23thシングル「Sing Out !」だろう。

「シンクロニシティ」では『言葉を交わしていなくても心が勝手に共鳴するんだ』、「Sing Out !」では『一人ぼっちじゃないんだよ』『仲間の声が聞こえるかい?』と歌っている。また、この2曲ではハモる・クラップするなど他者を巻き込んだ表現が使われているのも特徴的だ。

3期生の加入から始まった世界愛の探求は、メンバーやファンだけでなく、たまたま横断歩道で隣にいる人のような”知らない誰か”にも愛を持って接する。そういった大きな表現へと進化していったのだ。

この試みはコロナ禍に配信シングルとしてリリースした「世界中の隣人よ」にも受け継がれていて、今後の乃木坂における大きな軸となっていくだろう。


2017年〜2020年は
他者を受け入れることから世界を愛する
を軸とした期間だった。


4.現在やっていることと今後の展望

こうして振り返ると、「君の名は希望」では自分自身を肯定することを表現していた彼女たちが、メンバーを愛することを通して成長し「Sing Out !」では世界愛を歌っている。

そう、乃木坂46の表現対象はこれ以上大きくならないのである。

本当に個人的な意見となるが、乃木坂46というグループがやってきた一つの表現は「Sing Out !」で完結している。それほどまでに乃木坂の表現する世界観は綿密に広げられてきたと言ってもいい。

では現段階の乃木坂46は何をやっているのか。実は乃木坂にはまだ成し遂げていないことがある。

それは『世間的なヒット曲を生み出す』こと。聴けば誰もが口ずさめるような楽曲を乃木坂はまだ1曲もこの世にリリースできていない。
「会いたかった」「ヘビーローテーション」「恋するフォーチュンクッキー」など多くのヒット曲を持つAKBがいまだにアイドルの代名詞である所以もそこにある。

白石麻衣という大エースを失った乃木坂が現在取り組んでいるのが、後進育成とヒット曲の模索だろう。山下美月、遠藤さくら、賀喜遥香と次々に若いメンバーを中心に置き、曲調も近年のSNSウケなども考慮したものになっている。I see…が少しバズったこともこの流れを加速させていると思われる。

今後もし世間的なヒット曲を乃木坂が生み出せたとしたら、そのときこそ真に次の一手が問われる状況になると思う。



ということで、結構長々と考えたことをまとめてみました。
まあ実際運営の人たちがどの程度こういうことを意識しているのかは分からないんだけど、少なくとも俺が乃木坂にハマったのはこういう文化的な側面があるからなので、10周年というタイミングで振り返るいい機会になったかなと。
ちなみにこれは基本的に表題曲にしかフォーカスしてないので、カップリングとかを含めて考えるともっと複雑になります。
あと万が一この記事で乃木坂に興味を持った人は、とりあえず乃木坂工事中を観ることをオススメします。最近は合法的に配信されているので。

ここまで読んでくださった方がいましたらありがとうございます。
また別の視点で書きたくなったら乃木坂については何かしら書くと思います。



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