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薄霧の中で #02 泣くということ

もう動くしかなかった。

主人が入院している同じ病院で産むには、とにかく受診する必要があった。
1度でも受診すれば、カルテができる。
カルテがなくては産めないのだ。

それにはまず、通っていた産院で紹介状を書いてもらわなければいけない。

検診予約を取るのはいつも思い通りにならない。人気の産院で混んでいるから、毎回苦労するのだ。
だが、主人が倒れた翌日が、なんと検診日だった。

毎回主人と来ていた見慣れた待合室。
私のことのみならず、主人のことも気にかけてくれる医師や看護師さん。
どう伝えよう、、、
頭がボーーっとする。

検診の順番が回ってきて、事情を説明し、紹介状を書いてもらうことになる。
ほっとして、看護師さんの包み込むような温かい眼差しと視線がぶつかる。
なんと声をかけてもらったのかは忘れてしまった。
大丈夫よ   だったか、 
がんばって  だったか、

いや、言葉はなかったかもしれない。
でも、許された気がした。泣いていいよって

つらいよ、こわいよ、不安だよ、どうなってしまうの?

私は子供のように、声をあげて泣いた。
つらい状況であることを自分が認めた瞬間だった。
素直に泣ける尊さを感じる。
なんせ、この後素直に泣けたのは、2年3ヶ月だったのだから。





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