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月に1回、大阪から東京に行って“息継ぎ”をする

私は去年の頭から夫と大阪に住んでいて、月に1週間ほど、東京に滞在する生活を送っている。東京滞在中は実家を拠点としつつ、状況に応じてビジネスホテルなどを活用する形だ。

夫は就職を機に大阪に移っていたため、大学卒業後のしばらくは遠距離だった。「結婚=自分も引っ越し」と考えると、決断にはどうしても時間がかかった。

正直な所私は、東京でのライターや編集の仕事が楽しくて楽しくてたまらなかったのである。折しも新型コロナの流行を受け、ほとんどの取材がリモートに切り替わったこと。所属していた小さな会社に優秀なメンバーが2人も入ってくれたこと。VTuber関連のオンライン仕事が増えたこと。こうしたできごとが、私を独立と大阪行きへ踏み切らせてくれた。

入籍当時、月1回なんて高頻度で東京に戻ることは考えていなかった。どうしても引き受けたい対面仕事が入ったときなど、3カ月に1回くらいかな……と思っていた。でも、どんなに自分本位の決断に至ったと思っても、いざ新天地で同棲を始めてみると、そううまくはいかなかった。

先に断っておくと、夫はものすごく優しくて、私が心地よく過ごせるよう100%の理解と協力をしてくれた。主に原因は私の内面性の部分で、同居人の機嫌・視点に敏感だったり、そのくせ我慢弱かったり、上の階の住人の物音にビクついたり……。間取りの都合上、家に自分の個室がないことで、なかなか心が「ここは自分の家であり、安心していい空間である」と認識してくれなかった。

一番つらかったのは、孤独だ。話し相手が夫しかおらず、フリーランスなので昼間行くところもない。オンラインの取材や打ち合わせのときだけハイテンションになるが、それ以外の時間は起きているんだか寝ているんだかわからないような状態が続き、できないことが増えた。なんというか、いろいろ不安定にもなった。

春・夏が最も心身ともにきつかったが、秋ごろには「東京に行ったあと、どうやらしばらくは体調が良い」ということがわかってきた。それで、月1回東京に行くことにしたのである。一度調子が悪くなりはじめると認知がゆがみ、視野も狭くなってきてしまうので、体調に関わらず「月に1回」と頻度を決めた。

「月に1回東京に行く」と聞くと、ワガママ嫁の息抜きだと思われるかもしれない。でも自分としては「息抜き」というより「息継ぎ」に近い。東京でいろんな人と顔を合わせ、会話して、思い切り東京の空気を吸い込む。そうしてため込んだ空気があれば、大阪に戻ってからもずっと機嫌よく、エネルギッシュでいられる。旅費を稼ぐことが仕事のモチベーションにもなる。

去年の私が一番つらかったのは、不安定で機嫌が悪い自分を夫に見せ続けたことだった。その理由を話そうとすると、育った家庭環境の話が出てきてしまうので伏せるが、とにかくそういう所を極力見せたくないのだ。本当に見せたくないのだ。ずんだもんはそういう自分が大嫌いなのだ。

そういう自分すらも受け入れることができれば晴れて悟りが開くのだろうが、残念ながら私のような凡人は、できる限り「自分の好きな自分」でいられる時間を伸ばす努力しかできない。その方法が「月1回の東京行き」だった。

日常的にやりとりしているクライアントは私が大阪に引っ越したことを知っているので、今も気遣いながらアサインしてくれているのを感じる。本当にありがとうございます。でも、自分としては東京仕事をいただけると、そこから滞在のスケジュールを立てられるようになるので、ぜひ引き受けたい所だったりします。

どのみち東京には行っているので、「あれ、コイツめっちゃ東京にいるな」と思ってくれていたらすごくうれしい。やっぱり発注者心理として、離れた所から呼び出すようなことってハードル感じますしね。

どんなに「大阪での生活を愛している」と自分に言い聞かせても、去年まではなんだか逃げるような気持ちで東京行きののぞみに乗っていた。今は「行ってきます」とだけ、心の中でつぶやいている。

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