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『その手に舵を握れ』

 思えば流れのまま生きてきた。

 歳をとるごとに、何度か大きな分岐点がきて。
 その度に周りの声や社会の常識などを気にして、流れの強い方向に流されてきた。

 気がつけばずいぶん流されてしまった。
 自分がたとりつきたいと、夢見た島は遥か遠く。
 
 一体全体どうしてしまったんだ?
 今や手に持つコンパスすら、目を回している。

 いったい自分はどちらに進めばいいんだ?

 先が見えない恐怖や不安に襲われて、体が動かない。
 そんな自分を気にもかけずに、時の流れは止まらない。
 
 迷い立ち止まる自分を無常の波が襲う。
 立ち止まることすら、許してくれないのか?

 刻々と寿命という名の食料は肉体という名の船から消えていく。
 一方通行の砂時計が止まることはない。
 
 焦りと迷いが、ただただつのる。
 打ちつける波は力を増す一方だ……。

 覚悟を決めるしかない、覚悟を決めるしかないのだ!

 その手に握るべきはコンパスか?
 それとも夢の島を記した地図か?

 違う。

 その手に握るは覚悟と言う名の己の舵だ。
 強い意志と覚悟を持って己の舵を握るのだ!

 進むべき方角は分かっているはずだ。
 迷いを捨て、己の舵を握る。

 その手に舵を握れ。

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。