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Good night ~12夜:罠だとしても……~

これまでのGood night

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【キャラクター】

主人公:白土 明(シラト アキラ)

影:カゲロウ

幼馴染:伊達 健吾(ダテ  ケンゴ)

生徒会長:黒亜 夜空(クロア ヨゾラ)

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《昨晩のこと》

 全ては一つの曲から始まった……。曲の名は『Good night』。その曲を耳にしてから僕は一睡もできなくなってしまった。それと同時に不思議な力も手に入れた……。影が自我を持ち動き出したのだ。自分の体……そして影に起きている謎を解くために、僕は謎の曲『Good night』の噂の出所を調べることにした。そして僕は幼馴染である健吾から『Good night』についての新たな情報を得た明は『Good night』の歌声に声が似ているという生徒会長に探りを入れることにした……

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(明様、きました!)

 カゲロウの声を受けて、手にしていた本を本棚に戻す。

 生徒会長が生徒会室から出てきたのをカゲロウが察知したようだ。

(よし、尾行するぞ!)

(はい!)

 カゲロウと心の中で話しながら、図書室の出入り口まで素早く移動する。

(生徒会長は?)

(今、2階につづく階段を上がり始めました!)

 図書室から出てゆっくりと階段の方へと進む。カゲロウの聴力があればこその尾行。明は、かなりの余裕をもって生徒会長の後を追うことができた。

(2階に上がり廊下を少し歩いた先にある。扉を開けて中に入っていきました)

(分かった! どこの教室に入ったか確認したい。生徒会長がその部屋から出てくるかどうか注意してくれ!)

 本当にすごい聴力だなと、改めてカゲロウの能力に感心していた。そして、明は階段を一気に駆け上がり2階の生徒会長が入っていった教室を確認する。顔だけを廊下へ突き出して2階にある一番近い扉の教室名が書かれたプレートを確認する。

(え~~と、一番近い扉は……)

「んな!?」

 明は小さく声を漏らした。

(明様、生徒会長が部屋の中でまた1つ扉を開いたようです!)

 生徒会長の動きを細かく聞き取りそれを報告し続けるカゲロウ!

「タイム‼ 待った、待った、待った! 報告、スト~~プ‼‼‼」

 尾行しているということを忘れて、声を上げながらカゲロウにストップを命じた! 廊下と階段を利用していた何人かの生徒が明を不審な目で見つめる。慌てて自分の口を手で押さえるが、まったくもって間に合っていなかった。

 慌てて上がってきた階段を逆戻りして一階へ。

(どうされました、明様!?)

(ト・イ・レ‼ トイレに入ってたの‼ ト・イ・レに‼)

(トイ……レ? ですか?)

 まったく理解していないカゲロウの返事に明は大きく溜息をつく。影にそこら辺のことを理解してもらおうと、願うこと自体間違っているのだろうか? 明は軽く頭を抱えながら悩むのだった。

(とにかく、トイレを出たかどうかだけ報告してくれ! 分かったな!)

(分かりました)

 は~~。一度、大きな息を吐いて呼吸を整える。呼吸が元に戻るころに、ちょうどカゲロウから言葉が届いた!

(トイレから出てきました! 生徒会長はさらに上の階へ向かっています)

(よし、もう一度だ!)

 気合を入れ直して、改めて尾行を開始する。

 生徒会長が3階に上がると同時に明は2階へ。ちょうど、1階ずつ距離が空くように追跡する。

(今、3階に到着。まだ上がっていきます!)

 カゲロウが生徒会長の動きを逐一報告する。ゆっくりと近づきすぎないように後を追う。

(4階へ到着! まだ、上に行くようです!)

(4階の上に!?)

 明は、予想外の行先をカゲロウの口から聞き驚きを隠せなかった。

(明様、どうかされましたか?)

(4階の先は……屋上なんだよ!)

 明は、3階の時点で一度足を止める。そしてある可能性について思案する。

(罠……ですか?)

 カゲロウも同じことを考えていた様で、明に確認を取る。カゲロウの言う通り。罠の可能性が非常に高い。生徒会長といえど屋上に行く用事などまずないだろう……。思考の停止と同時に足も止まる。

(どうします……?)

(行くしかないよな‼)

 明は、カゲロウに返事を返しながら、先ほどより力強く階段を上り始める。

(罠だとしても行くしかない! 『Good night』の手掛かりは今はこれしかないんだから‼)

(分かりました! 安心してください、明様! 何かあればこの私目が明様をお守りいたします‼)

 相棒の心強い返事を聞いて、明はより力強く階段を上がっていくのだった。

 生徒会長がいる。屋上はすぐそこまで迫っていた……‼


【続く】 

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。