Good night ~11夜:静かな図書室~
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全ては一つの曲から始まった……。曲の名は『Good night』。その曲を耳にしてから僕は一睡もできなくなってしまった。それと同時に不思議な力も手に入れた……。影が自我を持ち動き出したのだ。自分の体……そして影に起きている謎を解くために、僕は謎の曲『Good night』の噂の出所を調べることにした。そして僕は幼馴染である健吾から『Good night』についての新たな情報を得た明は『Good night』の歌声に声が似ているという生徒会長に探りを入れることにした……
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パラ!
本のページをめくる音が静かに響く。明は現在、図書室にいた。テーブル席に座って本を読んでいる。しかし、ただ本を読んでいる訳ではなかった。
生徒会長を待ち伏せしていたのだ。
図書室と生徒会室は非常に近い位置にあり、図書室から生徒会室の音を聞き取ることができるとカゲロウが言い出したのだ。しかも、足音で人物を特定することもできるという……。
自分の体に宿ったこの謎のカゲロウ(影)にもだいぶ慣れてきたと思っていたが、まだまだ秘められた力が沢山ありそうで油断ならないと思った。
(静かですね、明様)
カゲロウが心の中で話しかけてきた。
(そうだな……。特に今日は人も少ないしな)
そういって軽く図書室を見渡してみる。生徒の数は10人もいないと思われる。今、目に入る範囲内で6人しかいない。しかも、皆静かに本を読むか、探すかしているだけで誰一人として声を出す者はいなかった。
いつもならもう少し生徒がいて騒がしさも感じられたと思う。しかし、今日は終業式ということもあり、授業も早く終わったので大抵の生徒はすぐに帰宅したか、クラブに行ってしまったのだろう。
つまり、今図書室にいる生徒は相当な本好きだといえる。わざわざ空いた時間を使って図書室を訪れるほどには……。そんな者たちが図書室でのマナーを破るわけがないのだった。
(明様が読んでおられるのは「睡眠についての書物」ですか?)
(分かるのか?)
(はい! 明様の目を通して何を見ているのかを視認することができます!)
でた! カゲロウお得意の後出し!
(…………)
(どうされました? 明様)
(いや! 何でもない!)
ツッコみたい気持ちはあったがあえてツッコまないことにした。カゲロウのこの癖にも慣れていかないと……。
(不眠について何か分かりましたか?)
カゲロウからの質問を受けてパラパラと本のページをめくっていく。しかし、そこには自分が欲している情報は書かれてはいなかった。少しは期待したがやはり、睡眠についての専門的な本は図書室にはなかった。あったとしても今手にしている。『ぐっすり寝れる睡眠法』というタイトルからして、あまり期待できない本しか置かれていなかった。
(ダメだな! さっぱりだよ……)
(そうですか……)
残念そうなトーンでカゲロウが返事をした。
「それにしても本当に静かだな……」
小さな囁き声を出しながら、改めて図書室を見渡す。こんなに静かなら眠たくなってもおかしくはずなのに……。しかし、あくび1つでない。どうして眠れないんだ……?あまり考えないようにしているが、油断すると自分の体に起きている異変について考えてします。
「ダメだ!」と声を出しながら突然、席から立ち上がってしまう。そして自然と静寂を乱した者に視線が集まった。
明は、視線に気が付きその場で固まる。気まずい空気が消え去るのをその状態のまま待った。ありがたいことに10秒も立たない間にまた静かな空気が図書室の中を支配した。
(明様、どうされました?)
突然の主の行動に軽く驚きながら声をかけてくるカゲロウ。
(何でもない。違う本を探すだけだよ……)
そんなカゲロウの問を適当な言葉で返して。本を探しにゆっくりと移動を開始した。
静かに移動しながら明は思った。
静かすぎる図書室というのも考え物だなと。
【続く】
読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。