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アダム・カヘン『共に変容するファシリテーション』から学ぶ、「愛」「力」「正義」の生成的な衝動とは

こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。

自分にとっての読書は、著者の人生や哲学の追体験の時間です。世の中には素敵な人がたくさんいます。著者の独自固有な経験や体験、そして、そこからしか覗くことができない独自の世界観があります。読み進めることで、著者の人生そのものに迫り、片鱗に触れると、その世界観の一部が自分の中にふわっと立ち上がります。そこから自分を見つめなおすと、突然思いもしない気づきが湧き上がる瞬間があります。そんな贅沢な読書の時間がたまらなく好きです。

今回は、今年に入って読んだ本で、これはいいなーと感じた著書を取り上げました。皆様も興味を持たれたら是非ご一読くださいませ。

『共に変容するファシリテーション』

2冊目は、大好きなアダム・カヘンの最新著書です。
南アフリカでの白人政権や黒人政権へのスムースな移行、さまざまな派閥間で暴力的抗争や政治腐敗の続いたコロンビアの近年の復活、互いに敵対しがちなセクター横断でのサプライチェーン規模の取り組みなど、さまざまな対立や葛藤にある複雑な課題を、彼は「対話ファシリテーション」という平和的なアプローチで取り組み、成果を残してきました。伝説的なファシリテーターの一人です。

理想は、垂直型と水平型のバランス良いファシリテーション

アダム・カヘンが、ファシリテーションにおいて一番大切にしていることは、集団が「共に前に進む」こと。

アダムカヘンのこれまでの人生を通じた探求の中で辿り着いたのが、共に変容するファシリテーションという方法論でした。これまでのファシリテーションは、垂直型と水平型の2つの型で、垂直型は、トップダウン的なアプローチ、水平型は、ボトムアップ的なアプローチだったと整理されます。一方、変容型ファシリテーションは、垂直、水平の2極をバランス良く極を行き来し、両極の良さを引き出しながら、徐々に全体が「共に前に進む」ことを後押ししていくと書かれています。

大切なのは「愛、力、正義」

そして、変容型ファシリテーションの土台としては、愛、力、正義が大切だとアダムカヘンは言っています。「共に前に進む」と「愛、力、正義」がそれぞれ、共に=愛、前に=正義、進む=力、とリンクしています。

「愛」の定義
切り離されているものを統一しようとする衝動のこと。
単につながろうとするだけではなく、バラバラに見えるものを1つにしようとする普遍的な衝動。

「力」の定義
生きるものすべてが次第に激しく、次第に広く、自己を実現しようとする衝動のこと。
単に貢献しようとするだけではなく、自分の目的を達成し、成長しようとする普遍的な衝動。

「正義」の定義
その中で「力」が自ずと活性化し、それを通して「愛」は自ずと役目を果たす構造のこと。
不正義は、単に不公平なだけではなく、あらゆる存在が自らを実現するための本質的な要求が拒否されるような構造や習慣の中で生じる。

本書のテーマである変容型ファシリテーションという領域に到達するためには、この「愛」「力」「正義」の生成的な衝動すべてを組み合わせることが大切になる。私自身、過去に体験してきたさまざまな場の状態を振り返ると、非常に納得感がある話です。

▼そのなかの体験のひとつ。全社合宿での設計、ファシリテーションについての記事はこちら


実は、2023年3月10日、11日に、アダム・カヘンの来日ワークショップが開催され、私もそこに参加してきました。まさに垂直型と水平型と呼ばれるファシリテーションの型をその時々によって行ったり来たりして、共に前に進むという状態を体感するような内容で、感銘を受けました。

今回の著書では、初めて「正義」という概念が出てきました。実はアダム自身も「正義」については探求中とおっしゃっていました。その素直なスタンスや在り方も素敵だなと感じる次第でした。

私の中では、「愛」「力」というのは、自然界の中でも見られる現象の用に感じます。森のメタファーで考えると、「愛」は木々が共につながりあっていく部分と重なりますし、「力」は木々が力強く成長していく様を表すように感じます。一方で、「正義」という概念は自然界にはなく、人為的な感覚があります。人間が共に共生していくために必要な構造として捉えるといいのかもしれないなとも感じています。この辺りは今後、自分自身も実践を通じて、探求をしていきたいと思います。

今後は、ワークショップで学んだことを自身の中に落とし込み、さらにもう一歩深ぼって理解を進めていきたいと思っています。

今日はこんなところで。

ええ一日にしていきましょう。


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