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私が旅人になった日~Iceland~

それは、旅に出てよかったと心から思えた日

旅に出る理由は、なんだってよかった。




初めて1人で海外に飛び立った。

バックパックに必需品と気合を詰め込んで、飛行機の乗り方も分からないまま、私は旅に出た。

旅に出る理由は、なんだってよかった。

ここではないどこか遠くへ行きたい。

ここにいては見られない景色を、この目で見たい。


高校を卒業する時、大学生のうちにすることノートというものを作った。そこには漠然と、たくさん旅をすると書かれていた。


ちっぽけだった私は、まだ見ぬ世界をこの肌で感じたくて仕方なかったのだろう。

そして、一人でも海外に行けるという自信が欲しかったのだ。ただただ、一人で海外に行ったんだと、言いたかった。


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フィンエアーに乗って

世界最北の首都

旅先は、アイスランドに決めた。

本当はフランスに行きたかった。大学の留学プログラムに、フランスでの短期研修があり、私はそれに応募していた。

矢先。

パリで同時多発テロが起きた。

安全を第一に考え、短期研修は中止。私は一人で旅に出ることにした。

フランスに行きたかったのは、習ったばかりのフランス語を試してみたかったから、というよりは、ヨーロッパへ憧れていたからだったと思う。

まだ見ぬヨーロッパの地を、歩いてみたかったのだ。


せめてその願いを叶えるべく、と、選んだのはアイスランドだった。

アイスランドは「世界一平和な国」と言われている。

オーストラリアに本部を置く「世界経済平和研究所(IEP)」は、毎年「世界平和度指数レポート(Global Peace Index)」という報告書を出しており、アイスランドはそこで2008年から1位を獲得しつづけているのだ。

「世界平和度指数レポート」は継続中の国内・国外紛争、安全度や治安、軍事度など平和に関する3部門・23項目を点数化している。


それはそれは安全だろうと、完全にアイスランドの治安を信頼しきった私は、安心して初めての一人旅@海外に飛び立ったのだった。

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世界最北の首都:レイキャビク
シンボルから眺める街並み


遺書を書いた

飛行時間はおよそ12時間。

万が一飛行機が墜落したらどうしよう。

そんな不安が拭いきれなかった私は、遺書を書きました。どうして旅に出ようと思ったのか。私のこれまでのこと、それから、私が今考えていること。

だから、私は後悔してません、って。

仮に私が死んでしまったとしたら、悲しんでくれるであろう人達に向けて、ただひたすらに遺書を綴り続けた。

書いてみて気づいたことがある。

遺書を書くという行為は、ネガティブに捉えられることも多い。

しかし、私にとって、万が一死んでしまった時のために、残された人達に「私は後悔していない」ということと、「私はあなたのことが大好きだ」と伝えるために書く遺書は、とても有意義であった。

自分にとって本当に大切なことがなんなのか、きちんと言葉にして残せたおかげで、自分の行動に対しての評価が、とても肯定的になった。

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友達との出会い

アイスランドで、友達ができた(日本人)。

彼女は同い年の大学生で、英語の発音がもっっっのすごく良かった。その子と話す際、1週間ぶりに日本語を話した。

同じ国から来た、同い年の女の子2人が、同じ旅先で出会い、友達になる。

こんなことも、あるんだな。

と、旅に出る前はイメージすらもしなかった出来事に、胸が躍った。


どこに住んでいるのか、どんな人生を歩んできたのか、なぜアイスランドを選んだのか、これまでに旅した国は、これから行きたい国は、話せる言語は、好きなことは、熱を入れて取り組んでいることは…

いろんな話をした。

文字通り、色とりどりの話をした。


遺書を書いていたこともあり、私はちょうど自分の人生が整理されていたので、それはそれは整然と、人生の話をすることができた。


初対面の人とこそ、深い話ができることがある。


恥ずかしがることもなく話せたのは、もちろん彼女の人柄のおかげでもあるのだが、異国にいたことと、初対面だったことも、それを手伝ってくれたのだと思う。


そんな彼女とはその半年後、ベトナムで会い、さらにその半年後くらいに、日本で会った。

日本で会った時「あ、この子日本に住んでるんだ」と感じたくらいには、海外で過ごす時間の方が長かった。

今は少し遠くに住んでいるが、たまにテレビ電話をし近況を報告し合う。いつもたくさんの刺激をくれるこの子との会話は、私の人生になくてはならないものになった。

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この靴で歩いた大自然

国際ワークキャンプ

アイスランドでは、国際ワークキャンプに参加した。

国際ワークキャンプとは、世界各国から来たボランティアたちが、同じ宿に泊まりながらボランティアに取り組む、いわば合宿型ボランティアだ。

私と同じボランティアに参加していたメンバーは、男性3人(ポーランド人、イタリア人×2)、女性3人(ロシア人、ウクライナ人、日本人(私))の計6人で、なんだこのリアルテラスハウスは…と思ったのを覚えている。


プログラムの内容は、極寒の地アイスランドで、夏野菜であるトマトときゅうりを栽培しようというものだった。(果たして育つのか)

取り組んだのは、その土台作り。

まずは温室をつくり…そのために土を耕し…と、なにかとプランはあったはずなのだが。

私たちのキャンプリーダー(ボランティアの代表)は、とてもゆるい人で、「今日は雨が降るから活動なし!」「今日は温泉に行くぞ!」「今日は休日だからゆっくりしよう!」と、一向に活動する気配はなく。

結局、活動したのは実質3日間だった☆


あとの日は何をしていたのかというと、6人でゲームをしたり、お散歩をしたり、お互いの国の料理をふるまい合ったり、お互いの国のことを聞き合ったりと、全員で存分にのんびり過ごした。

人生で一番なにもしない時間だったと思う。

のんびりできて、よかった。


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アイスランドのセーター:ロパペイサ(Lopapeysa)

最後の夜 空港にて

あっという間に2週間が過ぎた。

次にいつ来るかも分からない、もしかしたら一生来ないかもしれないこの地を、ゆっくりとあとにした。ともに過ごしたワークキャンプメンバーと、別れを惜しみながら。

帰りの飛行機は早朝5:00に出国する便。飛行機の時間が近い、ロシア人のメンバーと、前日の夜に空港へ向かった。

結局、オーロラ見られなかったな。


アイスランドで、ひそかに楽しみにしていたことの1つに、オーロラの観測があった。9月~4月がオーロラの発生時期で、条件が整えば肉眼で十分に楽しめるらしい。

日本ではお目にかかれないものだから、ぜひともこの目で見たかった。


仕方ない。リベンジしよう。またここまで来たらいい。


そう思いながら、最後の夜、空港まで乗ったバスを降り、空港の建物に入ろうとした矢先。

Haruna, wait!!


振り返ると、空には見たこともないくらい明るい光が放たれていた。

一瞬過ぎて、自分の目を疑ったが、それはもう一度輝いてくれた。

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オーロラだった


肉眼で見るオーロラはこんなに緑ではなく、実際には白い光が波打つように動いていた。その動きはとても活発で、荒れた海の波を彷彿とさせる大きな動きだった。

ああ。

本当はこんな姿だったんだ。

写真で見るイメージと、全然ちがった。

そして、実物を見た方が100倍感動すると確信した。


オーロラの撮り方が分からず、ぼやけてしまいましたが…本当はもっと鮮明でした。次にオーロラに出会う時までにカメラの設定を勉強しておこう。

旅をしたんだなぁ。

空港を背に、オーロラを見ながら、私は物思いにふけった。


きっと私は、

ヨーロッパに憧れてここまで来たし、

カラフル屋根の街並みをカメラに収めるためにここまで来たし、

ロパペイサを買いにここまで来たし、

大自然の温泉に入るためにここまで来たし、

日本人の彼女に会うためにここまで来たし、

のんびりするためにここまで来たし、

この景色を目に焼き付けるために、

ここまで来たのだ。


12時間もかけて、空を飛んだのだ。


全部全部ひっくるめて、旅に出てよかった。


私はこれからも、何度だって旅に出る。

まだ見ぬ世界を、この目に焼き付けるために。


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