【映画レビュー】ピーターラビット
「トラウマをどう克服するか。」
この映画に隠されたテーマの一つではないだろうか。
小さい頃に両親をなくしたうさぎのピーターラビットと人間のトーマス。
そして、ビア。彼女は、ピーターラビットにとって母のような存在であり、孤独に生きてきたトーマスには愛を感じさせてくれた。
この愛すべきビアを巡って、一匹のうさぎと一人の人間は、奪い合うために争うこととなる。
あらすじ
ピーターはラビット家の長男として家族のリーダーシップを取り、家族や親戚、一緒に暮らす動物にも人間の庭の作物を分け与えてきた。
そんなピーターたちの近くには、自分たちを可愛がってくれるビアが住んでいて、ピーターは彼女と亡くなった母を重ねていた。(劇中のビアは後に「ピーターラビット」の作者になる。)
一方、トーマスというと、常に整理整頓せずにはいられない潔癖症で、ロンドンの伝統的なデパートで全人生を捧げて働いていた。しかし昇進を断られることで自暴自棄になり、結果クビとなる。そしてピーターたちの住む村へやってくるのだ。
それから隣人であったトーマスとベアはお互い惹かれ合い、デートを重ねていく。
トーマスとビアの愛が深まれば深まるほど、ピーターは嫉妬心でトーマスを攻撃してはいじめることに夢中になる。ピーターは家族や親戚の反対があっても止まらなかった。
対抗しようとするトーマスも作戦を練り…ある大事件を起こしてしまう。
考察
子供向けの映画である認識で観始めたのだが、思った以上に深い内容であった。
田舎でみんなとのびのび暮らしてるピーター、ロンドンで孤独に生きてきたトーマス。
真逆な環境で暮らしていた一匹と一人、実は両親をなくしたトラウマを持っている。
ビアという愛を見つけて成長していくトーマスと、そのビアの愛を奪われたと感じて暴れてしまうピーター。
ピーターは全てをぶっ壊してはじめて、「愛は奪い合いではなく無限である」ことに気付き、克服していく。
小さい頃のトラウマは人生に大きな影響を及ぼす。
ロシアの教育学者であるアントンマカレンコの言葉がある。
「子供に対する親の愛が足りないと、子供は苦痛を感じる。その反面、過剰な愛は偉大なる感情でありながらも、子供を壊してしまうだろう。」
(매일 심리학 공부(毎日心理学勉強) – 우리창 (ウリチャン) ※中国語を翻訳した韓国語の本を自分で翻訳したので正しくはなかもれない)
両親による子供の情緒への影響はとても大きい。
ピーターは、両親を亡くし、ビアを母と重ね愛を求めて執着していた。しかしある事件を機に自分がしてしまったことを後悔し、成長していく。
トーマスも、小さい頃に両親を亡くして、他者から見たらとても変わった大人に成長する。そしてその「変わった要素」を受け入れてくれるビアに恋する。小さい時に十分に味わえなかった「母の包容力」を彼女から感じていたのだろう。(※トーマスの役である俳優がインタビューで、「トーマスの変な性格に他の女性は逃げていたが、ビアはそれを面白いと思い受け入れた。だから惹かれていった。」と説明。)
一見この一匹と一人のトラウマを克服していく姿は似ているが、方法は異なっていた。
「愛」はトラウマに勝つといえるのかもしれない。
それぞれの「愛の形」を受け入れ、やがてその「意味」を知る。
『ピーター ラビット』は、子供と一緒に観に来ている親世代にも「愛」についてのメッセージを投げかけていたのではないだろうか。
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