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私の母は間違いなくスーパーお母さんであり素敵な一女性だった

母が亡くなってから8年が経った。

あの時の悲しみは昨日のことのように思い出すのに、数字にすると随分時間が経っているようだ。

母が亡くなったとき高校3年生だった私は、今年の4月で社会人4年目を迎える。

昨年夏の帰省で久しぶりに会った父は、8年前から随分老けこんでいた。

8年という時間はとても長かったようだ。



この8年、母の偉大さを感じることが何度もあった。

母は若くして結婚し、23歳で長女を出産してから、次女が生まれ、そして母が30の年には私が生まれた。

それから私が小学校にあがってしばらくすると、一旦は寿退社した会社にパートとして職場復帰、その後は仕事と家庭を両立してくれていた。

8年前と比べると人々の多様性も、家庭の構造も、働き方も随分変わった。

今後、令和という時代のもと、もっと時代は変わっていくのだと思う。

母親像、女性像というものもどんどん変わっていくなかで、私の母の時とは求められるものはまったく違うかもしれない。

もしかしたら、今では反感を買うようなこともあるのかもしれない。

それでも、母の生き様は私たち娘にとって、今思い出してもスーパーかっこよく、憧れの母であり一女性だ。



母は誰よりも家族を、子どもたちのことを考えてくれていた。

自分のおしゃれは後回し。毎日の食事はバランスよく作られていて、朝には洗濯物をぴしっと干して、ご近所付き合いも良好。

どんなに忙しくてもいつも笑顔で弱音を吐かない。

父のこともずっと大好きで、お互いが尊敬しあっていたように感じる。

父への母の態度は女性として見習いたいところが多い。詳細は書かないけど、愛される人だなと思っていた。

そんなしっかり者の母の、姉からスカートをプレゼントされたときの嬉しそうな顔はいつまでも忘れないと思う。母であり、一人の女性なのだとほっとした気持ちがあったことを覚えている。



母のことで一つだけ欠点があったとすれば、「長所と短所は紙一重」とはまさにこのことで、弱音を吐かず、自分のことは後回しなところだったと思う。

何に問題があったかというと、体調面で後回しにしてしまうところだ。

どういう気持ちだったのかはわからない。もしかしたら、迷惑かけたくなかったのか、もしくは病院が嫌いだっただけかもしれない。

とにかく、自分の体調は我慢できなくなるまで隠すし、病院もいかずに毎日仕事と家事を続けていた。

ある日、母は突然入院した。

どういう経緯だったか詳細は覚えていない。たぶん長女(看護学校に通っていたことがある)に相談したのか、それかあまりにしんどそうなので父がすぐに病院に行くように説得したのかだと思う。

私にとってはすごく衝撃だった。たしかにここ最近お腹を痛そうにしていたが、入院するまでとは思ってもいなかった。

《子宮体がん》

見つかった時にはすでに悪い方向に進行していたようだった。私は受験を言い訳にして、日に日にやつれていく母のいる病室から遠ざかっていたため、詳しい病状は覚えていない。どうやって治療が進んでいったのかも覚えていない。いま思えばあの怪しい飲み物が登場してきたときには、すでに民間医療に頼るしかないフェーズだったことを物語っていたが、あの頃はそんなことさえ知らなかった。

そんな状況になっても、母は最期まで母を貫いた。

脳にまで転移して、次第に言葉を発することすら難しくなってきたときに、母が気にしていたことは私の高校の卒業式に出席できるかどうかだった。自分のせいで受験勉強が満足にできていないんじゃないか、そんなことを気にしていたと知ったのは卒業式を前にして亡くなったときだった。自分を保てなくなるその瞬間まで、母は自分のことは後回し。ケータイのカレンダーには「卒業式」の文字が確かにあった。

本当にスーパーかっこいい生き様だと思った。私も母みたいな人になりたいと心から思った。

お母さん、かっこいいじゃん。



あれから8年。

母に憧れているくせに、私はまったく成長しないでいる。

長く会社に勤めることもできず、彼にはわがままばかり。仕事と家事を両立させるなんて難しいし、自分より誰かを気にできるような余裕もまだない。

理想と現実は程遠い。大人になると、母がしていたことがいかに難しいかが身に染みる。

いつか私も結婚して、子どもが産まれたりするのだろうか。

その時には私も私なりに、子どもからスーパーかっこよく思われる人間になれるといいなぁと思うけど、私にとってのお母さんほどの存在になれる自信はまだない。道のりは遠い。



そうそう、お母さんに憧れてはいるけど、何かあったら病院にはすぐに行くようにしてるからね。お父さんにも心配かけちゃうし。そこだけは真似しないようにするよ。



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