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超短編小説 「高田の場合1」

・高田はバイト中 自分がワイドショーのコメンテーターとして大物司会者に話をふられたときに斬新なコメントで共演者を感心させられるようなカズレーザー的な立ち位置のタレントになってる想像をして暇をつぶしていた。

・高田はバイト仲間で 私服が汚れるのを気にしないで働いてる人は信用できると思っていた

・高田は職場に 誰かが買ってきたお土産が置いてあってもがっつくのはやめて勧められたら遠慮しながら頂く演技をしていた

・高田はバイト中 会社の偉い人が見回りに来た時いつもと態度変えるのが嫌なのでできるだけ関わらないようにしていたから自分は絶対社会で出世しないだろうなと思っていた

・高田はバイト先の責任者が 若い女性とパートのおばさんに対しての接し方が露骨に違うのを見て あんな大人にはなりたくないと思っていた

・高田はバイト仲間でカラオケ行ったときヒューマンビートボックスをノリノリでやる奴をサブいと思っていた

・高田はバイト先の人に 休みの日なにしてるの?と聞かれ、なにもしてないことがバレるのが嫌で 適当に嘘ついてごまかしてる自分が嫌いだった。

・高田は休みの日に散髪にいった翌日 バイトに行きいじられるのも嫌だがまったく無視されるのも少し寂しいと思っていた

・高田はクリスマスやバレンタインの日に バイト先でかかってるラジオでテンション高くDJが喋ってるのを聴くと誰か消してくれと思っていた

・高田は休みの日に職場の人と会うと どう接していいかわからず逃げてしまっていた

・高田は無料エロ動画に bad評価をつける奴にはなりたくないと思っていた

・高田はニュースのコメント欄に偉そうに語ってる連中全員バカだと思って見下していた

・高田はブックオフで長時間立ち読みして 時折笑ってる奴を見て気持ち悪いなと思っていた

・高田は買い物してる時 やたら同じコーナーに来る女性は自分のこと好きなんじゃないかと密かに思っていた

・高田は小さい子供が手を振ってきたときに振り返すのが恥ずかしいのでできるだけ距離をとるようにしていた

・高田は小さい子供が自分とぶつかりそうになった時にすぐ謝ってくれる若いお母さんが好きだった

・高田は写真撮影を頼まれたときにハイチーズと言うのもダサいしありきたりだなと思っていたが 変わったことを言うのも恥ずかしいのでやっぱりハイチーズと言っていた

・高田は30歳くらいでブレイクした歌手や芸人が出す 若い頃の苦労を綴った自叙伝が嫌いだった。

・高田は好きな漫画1位ワンピースっていう奴漫画知識浅そうだなと思っていた

・高田は炎上したニュースにコメント出す芸能人って小物ばっかりだなと思っていた

・高田はスーパーで見切り品を大量にカゴに入れて平気な顔してるおっさんにはなりたくないなと思っていた

・高田は友達のことをツレっていう奴が嫌いだった

・高田は外人と付き合ってる日本人の女性はなんであんな自信満々な顔してるんだろうと不思議に思っていた

・高田は駅のトイレの便器にガムやゴミ捨てる人間は最低の人間だと軽蔑していた

・高田は電車内で友達が話しかけてきたとき、周囲の人間に会話を聞かれるような気がして出来るだけ小声で喋るようにしていた

・高田はシンガーソングライターの女性が歌う恋愛ソングに たとえ同じクラスだったとしても自分は歌詞に出てこないだろうと思っていた

・高田は学生モノのAVを見て色黒の明らかなおっさんの男優が学生服を着ているのを見るとなぜか切なくなっていた

・高田はネルシャツGパンでリュックサックを背負って水筒を挿している小綺麗な白髪のじいさんに勝手に好感を持っていた

・高田は美容室でやたら丁寧な接客を受けると どう返していいかわからず
キョドって必要以上にヘコヘコしていた

・高田は熱い曲や青春映画を見ると モロに影響を受けてなんの脈絡もなく友達に「まだ何も始まってない」などと痛いLINEを送って迷惑がられていた

・高田はホームセンターで流れているオリジナルソングがやたらメッセージ性が強いと笑いそうになっていた

・高田は最終的にどうせみんな死ぬんだから幽霊なんて怖くないと思っていた

・高田はクリエイティヴなものが好きなオタクなだけなのに自分には面白いものを見極める能力が勝手にあると思い込んでいて 何の実績もないのに上から目線で友達の作品を批評してうざがられていた

・高田は中学の時 給食の時間 横入りしてきた不良のことを大人になってもいつまでも恨んでいた

・高田は自分が好きな有名人が 自分の好きな映画や本を絶賛してる記事を見つけると嬉しくなって やっぱ俺と感性が似てるんだなとほくそ笑んでいた






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