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トピックス(小説・作品)

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素敵なクリエイターさんたちのノート(小説・作品)をまとめています。
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2020年5月の記事一覧

映画『シェイクスピアの庭』

2020年3月6日公開のケネス・ブラナー主演の「シェイクスピアの庭」をご紹介します。 1613年から1616年に52歳で亡くなるまでのシェイクスピアの3年間を描いています。 演劇界が湧きたっていたロンドンで、彼が共同所有していたグローブ座が焼失し、故郷のストラトフォード・アポン・エイヴォンへの帰郷と、彼を中心とした家族との生活がどのようなものであったのかを私たちに教えてくれます。 どこまでが真実であったかはわかりませんが、彼の生涯を知るうえで、とても参考になるのではないで

006 本当に戻りたい夏

本当に戻りたい夏とはどんな夏だろう。 少なくとも、iPhoneはいらない、MacBookもいらない。GoogleマップもLINEもいらなければ、クーラーのきいたオフィスは不要だし、Netflixに甘やかされる必要もない。絶対ない。 本当に戻りたい夏とは、自分の足で道を走り抜けて、自転車があれば何処へでも行ける気がして、畳の上で戯れあって、小学生が将来の夢を話す時のような素直さを取り戻した夏かもしれない。 シャッターを切ろうとして諦めた花火とか、汗ばむ肌とか、飛び込んだ海

vol.20『ツバメとわたし③~断固お断り~』

〈前回作、ツバメとわたし②もよかったらご覧ください。〉  春になると渡り鳥であるツバメは暖かい日本へやってくる。自分たちの子孫を残すために。あの小さな体で1日300㎞も飛び続けるというのだから、おどろきだ。    そんなツバメさんを、ようこそ我が家へ!と歓迎したいのはやまやまなのだが、うちの車庫に巣を作るのはちょっとご勘弁願いたい。 「ツバメと人間の共生」。そんな素晴らしい言葉も頭のどこかによぎった。でも、うちの車庫を住みかにするのはごめんなさい。お断り申す。    ツ

vol.19『ツバメとわたし②~ワラドロ犯人判明~』

〈前回作、ツバメとわたし①もよかったらご覧ください。〉  その時だ。青空を気持ちよさそうに旋回していたツバメが、車庫にシューと飛んで入ってきた。 「うわあ!」  その声に驚いたのか、まさか人がいるなんて、とびっくりしたのか定かではないが、滑るように車庫へ入ってきたツバメは、慌てて向きを変え、逃げるように出て行った。まさに急ブレーキという名前がぴったりくる空中停止、からの方向転換。なかなかのドライビングテクニック。 「やるな、ツバメ。」  もう一羽のツバメも、車庫内の

vol.16『ツバメとわたし①~ワラドロ事件の幕開け~』

うちの車庫は、いわゆるビルトインタイプで箱型だ。車の出入口以外、右も左も天井もすべて壁になっている。箱型の車庫だから黄砂のひどい時期や雨天時は車が汚れないので、とても気に入っている。 ところが、だ。このお気に入りビルトインタイプの車庫付き住宅へ引っ越ししてきて五年。機嫌よく生活していたのに、終わりの見えない闘いが始まろうとは。 ことの発端はこうだ。ある日、異変に気づいた。車庫の後ろの方に、短いワラが数本散らばっている。汚れのなさが自慢の白い壁には、

Bad Things/5

恋だけじゃない。でも、恋に振り回されないわけがない。そんな恋愛短編オムニバス 【prologueヒナキ(2)】  翌朝、スミ君からの電話で目が覚めた。  時計はすでに九時をまわっていて、けれど七時半にセットしたはずのアラームを止めた記憶はなかった。しっかり寝たせいか、少しだけ頭がスッキリしている。 『こっち帰ってきたとこなんだけど、寝不足だから今日の夜は無理かもしれない。とりあえず店のやつには声かけてみるけど、俺はパスしとくよ』  スミ君の声はどこか投げやりだった。

Bad Things/4

恋だけじゃない。でも、恋に振り回されないわけがない。そんな恋愛短編オムニバス 【prologueヒナキ(1)】  手にした黒文字をピタリと止めて、母は思い出したように口を開いた。 「塩谷さんちの結衣ちゃん、このまえ結婚したのよ。ヒナキより下だったわよねぇ」 「うそ、結衣ちゃんが? 中学のころ以来会ってない。私が中三のときに中一だったから、二歳下かな」 「今どきの子にしては早いわねえ」  母は感心したようにため息をついて、紅葉を模した和菓子を切り分け一口ほおばる。

Bad Things/3

恋だけじゃない。でも、恋に振り回されないわけがない。そんな恋愛短編オムニバス 【prologueユカリ(3)】 「霜谷、澄田さんに彼女いるって分かってて会ってんの?」  批判的な高波の口調が、ちょうどよく私を傷つける。  悪いのは私。先のばしにしてきた私のせいだ。  何か言い返そうとしたけれど、喉が震えそうでやめた。唇を噛んでも震えは止まらなかった。  風が吹き抜け、カサカサと落ち葉が擦れる音と、木々のざわめきが沈黙を埋めてくれる。 「霜谷」 「……なに?」

Bad Things/2

恋だけじゃない。でも、恋に振り回されないわけがない。そんな恋愛短編オムニバス 【prologueユカリ(2)】  指と指のあいだに絡めた太くて節ばった指はガサガサに荒れていて、ところどころパクリと割れたあかぎれが痛々しかった。  指先でそっと傷をなでると彼は私の手を引きよせ、フロントガラスの向こうに目をやったまま、白とベビーピンクのネイルに唇をつけた。 「ムース・オ・フレーズ。またはカマボコ」  くすくすと笑いながら彼は指を解いてウインカーを出す。その左手はハンドル

Bad Things/1

恋だけじゃない。でも、恋に振り回されないわけがない。そんな恋愛短編オムニバス 【prologue ユカリ(1)】 「投げろ! 一塁一塁!」 「――っしゃああ。ゲッツー」  フェンスのこっち側でハイタッチをする親子、少し離れたところで野次を飛ばす若者、ギャラリーの合間から見えるプレイヤー達は、日曜の草野球にしてはずいぶん本気度が高いようだった。 「セカンドー! ナイスプレー!」  聞こえてくる老若男女の歓声に、秋晴れの空をあおぐ。かすかに朝のひやりとした空気が残ってい

5月

住野よるです。 noteをどれくらいの方が見てくださるのか分かりませんが、せっかく登録したので投稿してみます。 ちなみに、これの前の投稿は三歩の単行本未収録の短編です。もしよかったら読んでみていただけると幸いです。二巻に載ります。 お元気でしょうか。お元気ならよかったです。元気じゃないなら元気になりますように願ってます。 5月にあったことを少し書いていきます。 自粛期間中とはいえ、自分の生活はほぼ変わりませんでした。 ライブに行く趣味と、居酒屋に行く趣味は制限され

Tinderとジェンダー論

Tinderユーザーの友達と話していたら思わぬ展開でジェンダーの話に発展した時のエピソードです。 【登場人物】 私:日本人。平凡な女子大生 アリア:バングラデシュ出身。大学院に通う24歳。 -去年カナダでシェアハウスに住んでいた時の話です- 昨日の夜、Tinderデートしてきたアリアが 「さ〜、私のエピソードタイムよ〜」と話しかけてきた。 ちなみに彼女はTinderをすごくよく使っていて、デートもよくする。 なんなら今日の夜も別の相手とデートである。 一回知らない男が

居場所のキレイは、15分だけ。

長くいる場所は、キレイにしておきたい。 その気持ちを大切にしたくて、 食器洗いやおせんたくとか 暮らしのなかのキレイに+15分のイメージで キレイをレベルアップしています。 ここ気になるなぁってところ、 変えたいなぁってところ。 見つけたら15分くらいでできることをリストアップ。 お天気や気分で 今日はこれをしよう♡って選んで、 試行錯誤しつつ、 キレイを目指してこう。 もちろん、1日15分だけ。 ゆっくりと確実にね。 ★ ちょっぴり文章はちがうけれど、 お絵かき

褐色肌の少年にガイジンと呼ばれた日

学童保育(がくどうほいく)という言葉を広辞苑で引くと、以下のような説明が現れる。 がくどう‐ほいく【学童保育】 共働きなどにより昼間保護者が家にいない家庭の学齢児童を、放課後や休暇中に保育すること。1997年児童福祉法改正により、放課後児童健全育成事業として法制化。 地域によっては「学童クラブ」と呼ぶところもあるらしい。 共働きの両親を持った私は、小学1年生から3年生までの間、地域の学童保育へ通っていた。 学校が終わったら自宅には帰らず、学童へ直行する。そこで宿題を済