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イベント・ブルー

 この時期になると目に入ってくるきらびやかな装飾と、様々なお店でリピートされる定番のクリスマスソングは、「あ、もうそんな時期かあ」と年末感を思い起こさせます。数年前までは、「また煩わしい時期がやってきたな…」と憂鬱な気分にさせられていましたが、今では身近な風物詩の一つとして、私の目の前を通り過ぎていきます。

 昔から行事が苦手だった私は、なるべくその手のイベントからは遠ざかるようにしていて、あらゆる手段を使って避けてきました。親戚の集まりがあるときは友達と合う約束を急遽取り付けたり、クリスマスが近付くと「プレゼントとか、ご飯食べに行くのとかなしね!」と予め宣言してしまうくらい、年間の行事や記念日に特別な何かをする、というのが苦手です。行事やイベントだけでなく、旅行すら苦手で、「行かない」という選択が許されなかった修学旅行や合宿はとても辛く、体調を崩したり夜は一睡もできなかったりと散々でした。

 そして私が最も苦手とするイベントは、クリスマスやハロウィンの規模に比べたら何てことのないちっぽけな、自分の誕生日です。しかしこのちっぽけなイベントにより、その1ヶ月程前から何か得体の知れない不安に襲われ、特別辛いことや嫌なことがあったわけでもないのに「あの日が来る」と怯える日々が続きます。

 
 この“バースデイ・ブルー”と呼ばれるうつ状態、どれくらいの人が体験しているのでしょうか…。実は結構いるんじゃないかと読んでいます。
 授業の雑談の中で思い切って生徒たちにこの話題を振ってみると「わかるわそれ〜」という声が結構返ってきて、何だかもう、それだけで生きていけるような気がしたものです。

 「私は生きていて何かの役に立っているのだろうか」「私が生きていることを誰かが必要としているのか」自分が生まれたことについて考えても意味もないのに考えてしまう、この癖と十数年付き合っているのですが、誕生日を過ぎると何事もなかったかのように、ふてぶてしく生きています。

 当日は、有り難いことに父と母から始まり、一日をかけていろんな方からメッセージをいただいたり、誰かしら一緒に過ごしてくれる人がいたり、傍から見れば「何を悩んでいたのか」と言われるような一日を毎年過ごしています。「私を覚えていてくれて本当にありがとう、また一年生きていけるよ」そう毎年心から感謝します。

 それでもやっぱりあいつはやってきます。
 そして誕生日が過ぎ、あんなにも落ち込んでいたのが嘘のように、軽やかに生きている自分も想像がつくのです。

 それで良いのだと近年は思えてきてます。


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