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リスク管理の秘訣②

繰り返して損切りするより
最大ドローダウンを抑える効率的な方法は

キャッシュの割合を増やして
ボラティリティ(価格変動)を調節する
ことです。

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高いボラティリティだとチャートはこんな形

まず、ボラティリティは
一体何なのか、定義から始めてみましょう。

ボラティリティも測定方法が様々ですが、
最も簡単な方法を選んでみました。

●1日ボラティリティ=(前日の高値-前日の安値)/始値×100(%)
●ボラティリティ=最近5日間の1日ボラティリティの平均

上記のボラティリティの公式を使って
12月24日から12月28日までの
ボラティリティを次のように計算してみました。

5日間のボラティリティの平均である8.99%を
12月29日のボラティリティとして使いました。

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ボラティリティ計算の一例

ところで、ボラティリティとは
一体何を意味するのでしょう。

例を挙げてみます。

 2019年12月28日、
ある暗号資産のボラティリティは
(2,185,000–1,870,000)/2,181,500=14.44%でした。

この数値が意味するのは何でしょうか。

これは12月28日の価格が
最大14.44%動いたということを意味します。

つまり、12月28日、
自分の財産をこの暗号資産に全部変えたとすれば、
1日の間に財産が最大14.44%変動したということです。

言い換えれば、
このような日には
14.44%まで損する可能性があった
ということにもなります。

恐ろしいですよね。

このように2日間連続で損をすれば、
ほぼ30%が消えてしまうのです。

5日間連続で損したら、
60%近くがなくなってしまいます。

もし、10回連続だったら?

悲しすぎて知りたくもありません。

問題はどんなに立派なトレーダーでも、
5回、10回も連続で損することが
頻繁にあるという点です。

もしその度に全財産の半分以上を
損してしまったら?

いくら立派なトレーダーでも再起不能です。

ここから秘策があります。

全財産の10%だけを暗号資産に投資し、
残り90%をキャッシュで保有すれば
どうでしょう?

暗号資産のボラティリティは14.44%ですが、
資産のボラティリティは1.44%に下がります。

資産の10%だけ投資したからです。
ボラティリティが変わらないと仮定して、
本当に運が悪く
毎日14.44%ずつ損すると想定してみましょう。

ありえないと思うかもしれませんが、
これよりずっと信じがたいことも
市場では頻繁に起きています。

市場はみなさんが思うよりもっと恐ろしい所です。

このペースで
全ての資金を暗号資産に
投資したら10日後には、
88.9%損になります。

このレベルになると
投資自体をやめたくなるか、
悔しすぎて残りのお金まで使い果たす可能性が高いです。

しかし、資産の10%だけを投資してたら?

13.5%の損で済むのです。

本当に運が悪く10日連続で14.44%損しても
資産の85%以上は無事で済みます。

これくらいだったら元本を
取り戻すことは十分可能でしょう。

ここでのキーメッセージは、
このように、確率が非常に低いことが起きても
あなたの資産の85%以上が生き残るということです。

資産の10%を暗号資産に投資し、
残り90%を現金で持つよりも
さらに、いい方法はあるのでしょうか?

それはボラティリティを
自分が耐えられるレベルまで減らすことです。

2019年12月29日、
上記の暗号資産のボラティリティは8.99%でした。

暗号資産のボラティリティを1%まで減らしたいのであれば、
資産の1/8.99=11.12%だけ暗号資産に投資すればよいのです。

暗号資産は1日8.99%動いても、
資産の一部、正確に言えば11.12%だけを投入したから
自分の資産の1日ボラティリティは
8.99%×11.12%=1%に減少します。

ボラティリティを0.5%に維持したければ、
資産の0.5/8.99=5.56%を投資すればよいのです。

ところで、ボラティリティを
どれ程維持するのが適切でしょうか?

中の人はリスクが怖い投資家には0.5%、
普通の人には1%、
リスクを許容できる心が強い投資家には2%をお勧めします。

ところで、なぜ0.5~2%なんでしょう?

ここでもう一つの秘密が出てきます。

優秀なトレーダーたちは1回の取引で1%、
いくら多くても2%以上損しないように
リスクを管理します。

10回連続で1%損したら、
合計9.6%損です。

10回連続で2%損したら、
合計19.3%損です。

どんなことがあってもMDDが
20%を越えてはならないということは
こういうことです。

優秀なトレーダーたちの考えは
中の人の考えと似ています。

もちろん正確に言えば、
中の人が彼らのアイデアを盗みました(笑)。

このように、
自分が取引する銘柄のボラティリティを
自分の全資産の一定の割合に固定して
投資の比重を決める資金管理法を

「固定比率の資金管理法
(fixed fractional money management)」


といい、最も代表的な資金管理法であり、
よく使われる戦略でもあります。

こんなやり方でビットコインに投資したら、
どのような結果が出るのか具体的に見てみましょう。

※ビットコイン、
ボラティリティ・ターゲット0.5%の戦略
ステップ 1
前5日間の1日ボラティリティ(高値-安値)を
測定し、平均を計算する。
ステップ 2
ビットコインに投資する割合を決める。
(比重:0.5%/5日平均ボラティリティ)
ステップ 3
毎日ステップ1、2を繰り返す。

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手数料+スリッページ0.1%を適用した結果は
下記グラフのようです。

数値でいうと総収益73.8%、CAGR 9.5%、MDD 14.6%です。

ボラティリティ・ターゲットを1%にした場合、

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総収益194.2%、CAGR 19.4%、MDD 27.34%です。

もちろん、これを見て
「ビットコインは4年間50倍上がったのに
今やっと年9%、19%リターンで満足できるか!」

と興奮する方もいらっしゃると思います。

しかし、フル・ベッティングして
2013年末に少し利益が出た人の多くが
おそらく2014年にその80%、
90%を損した可能性が高いと思います。

もしくは2017年下半期に再び参入して
ちょっと稼いだが、
2018年に市場に再び90%以上急落し、
瀕死状態になった可能性も非常に高いです。

中の人にこう言う人がたくさんいます。

「私は資金が50万円しかないので
あんなに消極的に投資することはできません。」

これに対する中の人の反論はいつも同じです。

「たかが50万円でも10万円稼ぐ方が
40万円損するのよりマシじゃないですか。
そして、いつまで資産が50万円にとどまると思います。
50万円が500万円、
5,000万円になることに備えて、
始めからまともな投資の原則と戦略を身につけなければなりません。」

市場は最大89%下落したことに比べ、
自分のポートフォリオの下落率ははるかに低い。

この意味を深く考える必要があります。

暗号資産は永遠に価格が上がりつづけるものではありません。

大きな下げ相場も来るでしょうし、
横ばい相場も来るでしょう。

このすべての相場を経ても、
20%以上の損をしたらいけないということです。

ボラティリティを調節することにより
不可能と思えた目標を達成することができます。

ボラティリティを調節することで
半端ないボラティリティのビットコインを
株(1%戦略)または債券(0.5%戦略)と
似たようなボラティリティを持った資産に
変身させることができます。

単純にボラティリティだけ調節しても
大きな損失なくCAGR15%が得られる
と言われたら信じられますか。

もちろん、少しの収益を求めて
暗号資産に投資するわけではないことは知ってます。

リスク・マネージメント、
正確に言うとボラティリティの調整で
どんな奇跡が起きられるかを見せるために
サンプルとして選択した戦略です。

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BTC、ボラティリティ0.5%ターゲット+上げ相場に投資(‘13.11~’19.12)

ところが、
ボラティリティを1%に調節した戦略のMDDは
ちょっと高いです。

なんと20%以上。

もちろん、ここで少し工夫します。

以前、中の人が「上げ相場にだけ投資せよ」
と言ったことを覚えてますか。

もし、上げ相場を
「価格が5日移動平均より高い場合」
と定義して、
そんな日にだけボラティリティを調節して投資し、
下げ相場では休む戦略を使ったらどうなるでしょうか?

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BTC、ボラティリティ1%ターゲット+上げ相場に投資(‘13.11~’19.12)

先ほどの上げ相場、下げ相場を考慮せずに
計算した数値と比較してみましょう。

以下の表からも分かるように、
上げ相場だけにボラティリティを調節して投資したら、
収益も高まり、MDDが半分以下に減りました。

投資は上げ相場の時のみ行った方が有利です。

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上げ相場のみ投資したらパフォーマンスがはるかによくなる

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回で「リスク管理の秘訣」は最終章です。


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