今日も0メートルの旅に出る。
ショッピングセンターに向かう車中で、最寄りのコンビニを通り過ぎたあたりで娘が「なんか旅みたいだね」と言ったことがある。
たしかに、自宅のある山奥の奥からコンビニまでは車で20分以上かかるし、お店まで行くにはその倍はかかる。でも、山に住んでいたら車で40~50分の移動なんて日常茶飯事だ。だから私は、これを旅だなんて言う娘を大袈裟だと思って笑った。
………でもこれ、今なら娘を全力で肯定できるし、する。あのとき笑ってごめん。
12月に、『0メートルの旅』という本に出会った。この本を知ったきっかけは、何の気なしに #ピロウズ で検索したら出てきた、著者である岡田さんのnote。
彼の文章に一瞬で心を掴まれた私は、これは本を買わないわけにはいかないと思い、衝動買いのような形で購入に至った。
『0メートルの旅』は、簡単に言うと岡田さんの旅の思い出を詰め込んだ旅行記。一つ一つのエピソードが強烈すぎて、次の場所では何があるのか?と、どんどん先を読みたくなる。
この本の面白いところは、南極に始まり、南アフリカ、モロッコ、イスラエル…………仙台、青ヶ島…と、読み進める度にだんだん自宅に近づいてくる仕組みになっているところ。終盤には駅前の寿司屋や郵便局がきて、ラストを飾るのはまさかの「部屋」。
部屋の旅。部屋で旅?
この本を読んで気づかされたのは、旅ってどこか遠く離れた地に行くことだと思っていたけれど、それだけじゃないということ。
今日もどこも行かずに息子と二人で家にいて、息子を背負って家事をして、テキトー極まりないお昼ご飯を食べながら息子にもご飯を食べさせて、オムツを替えて、遊ぶのを見守りつつダラダラして、シルバニアのうさちゃんを踏んでしまって、散らかり放題なおもちゃを片付けて、あっという間に娘が帰ってくる時間が来て……なんてことのない、冴えない1日だった。
そう言ってしまえばただそれだけのことだけれど、見方を変えればこれさえも立派な旅になる。
予定通りにいかないことを受け入れた瞬間、偶然の巡り合いに心奪われた瞬間、いつもの視界に新しい景色を創った瞬間
これらの瞬間って、子育てをしていると何度も訪れる。
娘が「旅みたい」と言った買い物も、今日こうして部屋の中で息子と二人で過ごしているのも、大事な旅の一つだ。
ピロウズのおかげで出会えた『0メートルの旅』おすすめ。