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カメラと行く建築さんぽ#1 旧関川家住宅 高知県

Data

所在地 高知県高知市一宮
竣工年 1819年 (建築もしくは一部改築)
重要文化財指定 1974年

撮影機材 Fujifilm GFX50R GF30mm F3.5

関川家とは?

今回訪れた旧関川家住宅は高知県高知市一宮にある茅葺き屋根の古民家です。
なんの変哲もない普通の住宅地に突然茅葺き屋根の家が現れるのでビックリします。

関川家は織田信長の次男、信雄の家臣で1790年に郷士となりました。
なんとなく織田信長の名前が出るだけでロマンを感じますよね。
建築年は江戸後期の1819年で、当時の典型的な土佐郷士の住宅です。

1974年に国の重要文化財に指定され、現在は住宅民家資料館として一般に公開されています。

郷士制度

郷士とは、言うなれば武士と農家の中間みたいな感じです。
1600年より土佐の国主となった山内氏が旧国主の長宗我部氏の遺臣を懐柔するために農民の者に武士の身分を与えたり、庄屋として登用したりしました。
それが郷士制度です。

武士身分としては下層ですが、一部には農業収入などにより専属の下級武士よりよっぽど裕福な郷士も存在していました。
有名なところで言えば坂本龍馬や武市瑞山なども郷士出身です。

表門〜外観

前置きが長くなりました。
早速入ってみます。
西側の県道からすぐ入れる入口は裏門との事で、ぐるっと住宅地を廻って東側の表門から入ります。

表門

この表門自体も重要文化財に指定されています。
入場料は無料。
ありがたい事です。
それではお邪魔します。

主屋へ続く飛び石のアプローチ

敷地に入ると此処を管理されている方だろうか、女性の方が閉じていた雨戸を全て開けてくれました。
他にお客さんはいない様子。
正面の入り口がシキダイ。
今で言う玄関です。

南西の庭から

玄関左側が庭になっています。
茅葺き屋根の下に瓦屋根の庇が伸びています。

北側

実は西側も撮ったつもりでしたが、痛恨の撮り忘れ。
ドマの入り口やイド、ミズヤがあったのですが・・・
残念。
なので北へ廻ります。
手前の戸がドマからの出入り口です。
奥の開口部はダイドコ。(台所)

ダイドコの縁側

通気性抜群。
北庭から南庭まで筒抜けです。
夏は涼しそうです。

東側

東側も縁側になっています。

南東から

ぐるっと一周して南東の角まで来ました。
正面の開口部はザシキです。
ザシキは高貴な人を向かい入れる部屋との事。
確かに此処にだけ立派な踏石が置かれているます。

南東の庭園

ザシキの前には庭園があります。
植栽越しに一般住宅が見えていて、此処だけ時が止まったかのような空間に感じられました。

建物の中へ

さていよいよ建物の中へお邪魔します。
入り口はシキダイから。

シキダイ

シキダイは5畳ほどの南北に細長い部屋。
奥のイマと東側のザシキへ繋がっています。

槍掛け

シキダイには槍掛けがありました。
初めは何だろうと思っていましたが、管理人の方に教えて頂きました。
なるほど、郷士の家ですね。

ザシキ

シキダイの東側にザシキ。
先ほどの庭園の向かいの部屋です。
本床と天袋、床脇があります。
和風な部屋でよく見かけるこの様式。
もちろんそれぞれの名称は今回始めて知りました。

ザシキから庭の眺め

ザシキから庭園を。
心地よい風が舞い込んできます。
最高の癒し空間です。
しばらく座って眺めていました。

欄間

精巧な造りの欄間。
こりゃすごい。

ザシキから北

ザシキから北向き。
南からザシキ、オク、ブツマ、オナゴベヤとある。
ザシキとオクの間は当初は土壁で仕切られていたらしい。
オク、ブツマは居室と寝室を兼ねていたとの事。
その奥のオナゴベヤは女子専用の居寝室。

オクとブツマの前の縁側

個人的に日本の家といえばこの縁側の風景を思い起こします。
なぜか落ち着きます。

イマ

次はイマ。
黒光りする板張りの部屋です。
囲炉裏があります。
シキダイ、ヨウノマ、ブツマ、ダイドコ、ドマに接続していてまさにこの建物の中心部です。
今にも日本昔話しのお爺さんとお婆さんが出てきそうです。

屋根

ドマ側から見上げると茅葺き屋根の内側が覗けます。
雨漏りの心配は無いのかと、いつも思いますが調べてみると素材のススキやヨシを束ねた時に生じる隙間が導水効果を発揮し、水が内部に侵入する事を防いでいるとの事。
さらに通気性が高く、吸音性、断熱性、保温性にも優れている為、冷暖房の無かった時代に快適に過ごす為の素材、仕組みだったわけです。

写真の左側がダイドコ

奥にはダイドコ。
イマと同じく板張りです。
調味料を保管したり、食事室としても使われていました。
現在台所といえば調理全般を行う場所のイメージですが、かまどはドマ側にあるし少し使い方が違っていたのかも知れません。

ドマ

そしてイマ、ダイドコに接続してドマがあります。
明治時代に敷地内には二つの倉が作られましたが、それまでは此処を物置きとして使用していたようです。

ドマの西出口

農機具なども置かれていました。
ここで作業なども行なっていたとの事。
農家の特徴が色濃いスペースで、シキダイの槍掛けと共に郷士の住宅だと感じさせてくれます。

二つの倉

ようやく外に出てきました。
敷地には他に二つの倉が建っています。
左の土佐漆喰壁が米倉、右の貼瓦壁が道具倉です。
どちらも明治前半の頃の建築で両方とも重要文化財に指定されています。

最後に

いやはやあっという間の1時間でした。
そんなに大きな家ではないのですが、全てが新鮮で楽しい撮影でした。
当時の状況に思いを馳せ、一枚一枚じっくり切り撮る。
歴史は全然詳しくなく、建築知識もサッパリの素人でもなにか心が洗われるというか、落ち着ける空間でした。

個人的に此処のおすすめポイントは、

1.お手軽にしっかり200年前の古民家を見学できる!

入場料は無料です。
しかも訪れる人が少ないのでゆっくり静かに自分のペースで楽しめます。

2.撮影OK!

敷地内は撮影可能です。
歴史に興味なくても写真好きは撮影に来るだけで楽しい。
まあ時代背景も分かればより写真が深く楽しめます。

3.最高の癒し空間!

何より通気性抜群の畳の空間が最高に心地良かったです。
夏なんか最高じゃないかな。
写真なんか関係ねぇ、歴史なんてこれっぽっちも興味ないねって猛者でもフワッとした気分にさせてくれそうな空間です。

普段から写真が好きでよく撮影はするのですが、大体家族を撮ったり趣味の山登り、たま〜にスナップを撮ったりする程度で正直今までこういう古民家や建築には興味ありませんでした。

ただせっかくの中判カメラを活かせる被写体って他に何かないかなと考えた末に思いついたのが建築でした。
情報量豊かな中判カメラなら細かなディテールは勿論のこと、その建物の持つ歴史の重みや空気感が写真に写り込む気がしてまさに打ってつけだと思いました。

今はしっかり対象物を腰を据えて撮りたい病が発症しておりますのでそう感じる訳ですが、まあ飽きっぽいのですぐブームは終わってしまうかも知れません。
でも今はとにかく色々な建物を撮りに行きたいです。
そして少しでも長くこのnoteが長続きしますように・・・

ではまた。
ありがとうございました。



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