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7. ワ行に隠された意外な秘密

※復刻版なので、少し古い話になります。が、W発音が苦手なのは、今も同じです。(汗;)

2002年11月のことです。

ニュージーランドの各地では、A&Pショー(Agricultural & Pastoral Show)と呼ばれる、農業をテーマにしたショーが開催されます。
私が暮らすクライストチャーチでも、年に一度11月に、カンタベリー地方のA&Pショーが開催され、多くの人で賑わいます。
特にカンタベリーは、各地方にある年に一度のその地域の記念日(対象地域のみ祝日になる)として、Show Dayを設定しているので、このA&Pショーのある週は、各種イベントで盛り上がります。
(※追記…このShow Weekの金曜日が祝日でお休みになります。)

各種家畜の品評会、ファッションショー、農機具の展示、丸太割り競争、羊犬による羊の追い込み競争、乗馬、犬のレースなど、ありとあらゆるプログラムに加えて、迷子になりそうなほど広い会場では、食べ物や商品展示販売の露店、ミニ遊園地、大試食コーナー等など、丸一日楽しめます。(ショーは数日間開催されます。)
こんなイベントは見逃さない私と、同じく、イベント好きの友人カレン。既に、ショーなんか行き飽きたという地元の友達に拒否されたことにもメゲず、二人で出かけることにしました。直接見かけたことの一度もない、ヘレンクラーク首相(※任期は1999年12月5日 - 2008年11月19日だった37代目首相)も来ると言うし、車で迎えに来てくれたカレンと一緒に、私は張り切って出かけました。

その日の、楽しいエピソードについて書き始めると、終わらなくなってしまうので、核心の部分にいきなりジャンプしますね。

それは、二人でいろんな羊毛が展示されているテントに入った時のことでした。

テントの中には、毛糸等に加工していない、刈ったままの状態のいろんな種類の羊毛が展示されていました。金、銀、銅賞など、採点後の評価が記してあるのですが、私には、どれをみても同じにしか見えないし、触っても全然違いが分かりませんでした。
何でもよく知っているカレンは、各羊毛に添付表示してある重さや太さの数値について説明してくれて、受賞理由などを説明してくれていました。

そんな会話の途中、その「瞬間」は突然やって来ました

いきなり、カレンの目が点になったのです。
「What? What did you say?」(えっ、今なんて言ったの?)
私は、何か変なことを言ったかなぁと思いつつ、カレンが何について驚いているのか分からず、お互いに「???」の状態がしばらく続きました。

とても中途半端な”間”の後、「???」の原因は、私の言った「ウール」という一言にあることが判明しました。
普段、普通に英語で会話をしている私たち。カレンには、私が何故、簡単な「Wool」の一言を言えなかったのかに驚いた様子。
とりあえず、その場は、私の「Wool」の発音は間違っているのねと納得し、やっぱり、「L」は苦手だよなぁなどと思いつつ、私が「Wool」と言う度に、「ごめんごめん」と言いながら笑いを堪え切れずにいるカレンを横目に、次のテントへと散策を続けました。

ニュージーランドで生まれ育ったわけでもないのに、ファームでも働いた経験を持っているカレンは、とにかく、いろいろなことをよく知っていて、その日一日、しっかりガイドさんになってもらって、何かある度に、「ひゃぁ~、これ何?」とカレンに聞き、詳しく説明してもらいました。
首相のスピーチもしっかり聞き、ショーを満喫して会場を後にしました。

その帰りの車の中です。
何かの話から、ふと、また「Wool」についての話題が出たのです。
カレンの「Water(ウォーター)」は言えるのに、どうして英子は「Wool」が言えないの?という素朴な疑問から、問題は「L」ではなく「W」にあることに、はたと気づいたのです。

そう、「ウール」と発音したのでは、冒頭の「W」が消えてしまっているのです。

ん?日本のワ行は、ワイウエオ「ワ」以外は、アイウエオと一緒?
でも、英語の場合は、「Wu」と「U」は全くの別物
私の中で、ワ行に関する、いや、日本のカタカナ語表記に関するいろいろなことが駆け巡ります。
カレンの言う、Waterのカタカナ表記の場合、「オーター」ではなく、「ウォーター」と、音の初めに「W」が組み込まれているのです。
例えば、週を意味するウィーク(Week)も、「イーク」ではなく、「ウィーク」と、音の初めに「W」が組み込まれます。
なのにウールは、音の初めにあるべき「W」を、完全に無視してしまっているのです。

その後、車の中で、「ウォーター」と「ウール」という呟きを繰り返す私。
横で笑うカレン。

「これは、日本のカタカナ表記が悪いからなの。原因は私の英語じゃないのよ」と言い訳する私。
「これって、もしかすると、カタカナ表記に関する大発見かもしれない!」と興奮してカレンに説明しても、「???」の彼女。
そう、ワ行を使う英語が語源のカタカナ語を英語読みする時は、「W」の音が消えないように注意しなければならないんです。
これは、私にとって、大発見でした。

後日、他の友達も含めて集まった時に、またまた「ウール」の話題になりました。
英子は「ウール」が言えないのよ~とひやかされ、そこで「W」に気をつけながら「Wool」と言ってみるものの、長年のカタカナ表記の記憶から、どうしても「W」が弱くなってしまう私の「Wool」。
日本語を勉強する人の為の、「英和」の電子辞書(※追記…スマホがなかった当時、電子辞書という独立したデバイスがありました!)で、逆に、日本の「ウール(u-ru)」の発音を聞かせてあげたところ、「日本式英単語(カタカナ語)は変」ということで、意見はまとまりました。

私の中でのWoolの発音に関する結論は、
ウールは、英語読みする場合は、「ウゥール」にした方が良いということ。
(追記:友達に日本語カタカナ発音で試したところ、「ワゥ-ル」の方がより良いようです。が、その試した時に、新たな発見が…。詳しくは下手英通信のページで。)

私のように長年海外で暮らしていても、前後の流れから意味を理解してもらえる場合、カレンのように、間違いを指摘してくれる人は少ないので、英語で同じ間違いを繰り返していても、気づかないことも多いのです。
私を嫌な気持ちにさせないよう、楽しく間違いを指摘してくれるカレンのような友達は、本当にありがたいです。

長くなってしまうので、それ以外の「A」と「E」についての解説は簡単に。
基本的に、日本語のカタカナ表記がどうなっていようと、「A」は、「ア」ではなく「エイ」、「E」は、「エ」ではなく「イ-」に近い発音になることが多いことを頭の片隅に残しておくと良いようです。
例えば、ニュージーランドのランドは、「ランド」というよりは、「リャンド」又は、「リェィンド」に近い「ランド」のような。
十を表すテンは、「テン」というよりは、「ティン」に近い「テン」であるような。
(注…カタカナで表記した時点で、どう記しても、実際の英語の発音とは異なってしまいますので、あくまでも参考例ということで理解して下さい。)

もう一度くらい、日本語のカタカナ表記、日本的発音を通じさせる為の技について特集したいと思うので、詳しくはその時に解説させていただきます。

全然関係ありませんが、ショーに関して報道した地元の新聞の掲載写真の片隅に、私の顔と、カレンの腕(彼女の前には馬が…)が写っているのに後日気がつき、他の友達も巻き込んで、ちょっと騒いでしまいました。

今回の技は:

「ワ行の”ウ音”には気をつけましょう!」



※この記事は、2003年に発行していた「下手英メールマガジン」で紹介していた「下手な英語を使うための技」に加筆修正を加えて、現在無料再掲載中のものです。令和版は、近日有料公開予定!

下手英メールマガジン発行から20年後、「2023年の後書き」:
例えば、「LとR」や「VとB」など、ある発音が苦手だと意識し過ぎていると、実は、それ以外の音の発音が原因で相手に話が通じていない場合でも、勝手に通じない理由を決めつけて、まったく役に立たない修正や練習を続けてしまうことがあります。
英語が通じない時には、通じない理由を自分で勝手に決めつけるのではなく、話し易い相手である時は、しっかりちゃっかり、どの部分が通じていないのかを聞いて、通じていない「音」をはっきりと教えてもらいましょう。
どうしても発音できない音がある場合は、他の単語に置き換えたり、例えば、Woolなら、Sheep Skinといった関連する単語と一緒に使えば、より理解してもらえるようになると思います。


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