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【第15回】「新卒の訪問看護師って組織にとってはリスクなのでしょうか?」

個別性の宝庫である在宅医療の世界には、患者の個性と同じように、ケアする側も多彩で無数の悩みをかかえています。悩みにも個別性があり、一方で普遍性・共通性もあるようです。多くの先輩たちは、そうした悩みにどのように向き合い、目の前の壁をどのように越えてきたのでしょうか。また、自分と同世代の人たちは、今どんな悩みに直面しているのでしょうか。多くの患者と、もっと多くの医療従事者とつながってこられた秋山正子さんをホストに、よりよいケアを見つめ直すカフェとして誌上展開してきた本連載、noteにて再オープンです(連載期間:2017年1月~2018年12月)

【ホスト】秋山 正子
株式会社ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長、暮らしの保健室室長、認定NPO法人 maggie’s tokyo 共同代表
【ゲスト】松本 美香(まつもと みか)
訪問看護ステーションユーカリ

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【対談前の思い・テーマ】
①新卒での訪問看護が受け入れられない現状を変えていきたい
本当は在宅をやりたいと思っている看護学生が、世間の常識に縛られてしまったり、先輩方から「病棟の経験がないと無理」と言われて諦めてしまったりする“常識”を、変えていきたいという思いがあります。
②何年からがベテランで,何年の病棟経験があれば訪問看護師として認められるのだろう?
自分が未熟だという思いはもちろんありますが、新卒で訪問看護師になった私は、ずっと「病棟経験0年」のままです。経験という目に見えないものをはかる基準は、やはり長さなのかと悩ましい思いです。

介護と看護、ぜんぜん違った!

秋山 訪問看護師になってから半年ほど経って、いかがですか。

松本 入った当初は、すべてが目新しくて毎日感動していました。「選んだ道は間違いじゃなかった」「夜勤がなくて、夕方には帰って夕飯も作れていい」と思ったのですが、いざ独り立ちすると責任の重さを感じて。失敗もしたりして、いま壁にぶち当たっています。辞めたいなんてまったく思わないんですが、楽しいけどものすごく苦しいと感じています。

秋山 小児を主にみているステーションなんですね。

松本 はい。130名の利用者中50名が小児でビックリしたんです。「こんなに子どもだらけ?」って。

秋山 小児が半数近いとすると、あとは高齢の人ですか?

松本 いえ、難病の人などもいます。

秋山 なるほど、医療保険の対象の人が多いんですね。

松本 医療保険の人が6割です。

秋山 半年経って、1人で訪問する機会はどれくらいですか。ある程度落ち着いている人のところは、1人で行っているころかしら。

松本 今6~7人受け持たせてもらっていて、多くが経管栄養や気管切開をしている小児です。

秋山 難病の人の支援・介護経験のある松本さんにすれば、子どもと大人という違いはあるかもしれないけど、ある程度見慣れた光景ですね。介護職のころに、医療処置的な吸引などは、自分ではしなかったにしても見ることはありましたか。

松本 吸引は実際に行っていたんですが、重症児の吸引を目にすることがなかったので、ちょっと衝撃的だったんです。意思疎通が難しい小児が多く、お母さんが四六時中、サチュレーションを見ていなければならず、なかなか眠れないという環境の子どもをみたことがなかったので。

秋山 ご自身の3人の子どもさんは、大きくなっているんですか。

松本 小学生・中学生・高校生です。

秋山 病気とはあまり関係なく育ってきてくれたんですね。

松本 ええ。ですから「こんなに重症な子どもを、自宅でお母さんがみているんだ」という事実に驚いて。どう触っていいかわからず、ただ上司についていくだけでした。

秋山 小児ならではの魅力ってありませんか。例えば難病の人は、だんだんできなくなることが多くなっていきますね。ですが小児の場合、できないことは多くても、障害や病気が重複した状態でも、身長が伸びるといった「垂直の成長」ではなくて「水平の成長」というか、すごく不思議なことに「え?この前までこういう表情はしなかったな」と思うような表情をフッとしたりすることがあります。そうしたちょっとした変化がチームのなかの共通の話題となって、それが看護をするうえでとても励みになり、また家族と共に喜びながら、「今回、こんなことがあって」と医師とも連絡をとったりする。そういう醍醐味があります。ただ、小児在宅の現場では、家庭内の女性(多くは母親)が主たるケアの担い手となっていることが多く、レスパイト機能というか、母親たちが休めるようなしくみが求められていますね。訪問するだけではなく、支えていこうという動きも生まれていますから、ニーズも発展性もある分野だと思います。

小児在宅のやりがいと難しさ

松本 介護と看護って違うんだなって、看護師として働きはじめてまざまざと感じています。看護の責任の重みを日々実感していて、大事に育てている子どものケアで失敗してはならないし、「勉強がまだまだ足りないなぁ」と思います。

秋山 任される部分が増えてきて、1人で行くことの大変さとか、壁というものは感じますか。

松本 早く成長したいのに追いつけない自分を「未熟だなぁ」と思っています。限られている時間で、どうしたら早く成長できるんだろうと焦ってばかりいる自分が苦しいです。上司は「できないことばかりをあげないで、できていることもあるんだから、それを認めてやっていこう」と言ってくれますが、やっぱり未熟だなぁと毎日思います。

秋山 それは、実際の手の動きの面で?

松本 ベテランの先輩や上司が子どもを抱くと子どもはよく眠ったり、本当にうれしい顔をしたりするんですけど、私は新人なので、私の緊張が伝わるようで、「ああ、緊張が子どもに伝わってるなぁ」と感じます。

秋山 障害のある子どもを抱っこするのと、わが子を抱くのとでは違うけど、子育て経験者ですから、子ども自体にかかわれないということではないですよね。

松本 先輩や上司は声かけとか、コミュニケーションが本当に上手で、子どもの目がキラキラしてくるんです。

秋山 ある意味、天性のものをもっている人がいるんですよ。うちの訪問看護ステーションにもいますから。彼女が行くと、子どもは泣きやむ。技術的にどちらが上かといったら、別の人のほうが上かもしれないけれど、技術的なことではなくて、特殊な才能だと思ったほうがいいかもしれないですよ(笑)。
 看護は対人間の仕事で、それは小児を対象にしても同様です。人間に対して自分がどう反応するかというのを、客観的にみることができる必要がありますね。
 私は9人兄弟の末っ子なんですが、末っ子とはいってもすぐ下には甥っ子、姪っ子もいる家庭で育ちました。ですから、子どもは日常的に付き合うものというか、嫌いでもないけれど、ものすごく好きでもないと思っています。ところが、学生のときの小児科実習で受け持った子どもに対して、「かわいそう」という感情が自分のなかですごく動くのを感じて、「これはまずい」と思ったんです。やはり客観的にみることができないとだめだろうなと。小児看護の世界に入ったら、子どもたちにのめり込んで客観性が落ちるかなと思い、私は向かないと考えたんです。
 その視点で考えると、松本さんのステーションには小児を得意とする人たちが集まっていると思うんですよ。どこかの小児科病棟とか、障害児施設で看護師をしたような人が集まって、とてもスムーズにケアをしているから、すぐには同じようにできないでしょうし、劣等感をもつ必要はないですよ。

松本 私がふれると、子どもの脈が変わるんですよ。身体にグーッと力が入って、真っ赤になったりすると、私の触り方がちょっと急だったかな、もっと工夫したやり方があったかなとか、考えてしまいます。私が触ると、痰がいっぱい出てくるのは、まだ未熟だからではないでしょうか。

秋山 その子は、ものをあまり言わないけれども、反応が違うということは、ベテランの先輩ナースと松本さんを見分ける能力があるということですよね。
 身体を硬くしながらも、痰がよく出るというのは、その子にとってはいいことでもあります。もちろん、早く慣れて緊張しなくていいように努めますが、例えばそういう状態を母親が見てとても不安に思ったとしたら、「この子は、ちゃんと見分けていますね」「私も、慣れるようにしたいけれど、この手の感触を敏感にわかって緊張しているというのはすごいですね」と、プラスの面の見方も伝える。母親にすると、ベテランナースと松本さんが触る違いを子どもがちゃんと見分けているというのは、すごいなと思えるでしょうから。

松本 本当にわかってるんだなと思う反面、「ちゃんとしなきゃ」と思ってしまいます。

秋山 でも、すぐにはできないわけだから、そこはちょっと謝りつつ、「ごめんね。早く慣れようと思うから、どうしたらいい?」と話しかけてみては。看護って相互作用ですからね。こちらが一方的に何かをするというわけじゃないから、「どうしたらいいか、教えて」と、子どもの身体に訊くというか。逆に、先輩と同じようにすぐにできるとは、思わないほうがいいかしらね。

松本 子どもと母親って、「すごくつながってるなぁ」って、いつも思うんです。だから、子どもにかかわりながら母親とも信頼関係を築かなくてはならないという面に、大きなやりがいも難しさも感じています。
 強い思いをもって子どもをケアしている母親たちに受け入れてもらえるようなケアができる看護師になりたいと、日々思っているんですが、急にはなれないなぁって。

秋山 子どもにとっては、ママが一番で、私たちは二番手、三番手。もちろん、それで母親たちに重責を担わせてしまってもいけなくて、その肩の荷をちょっと軽くするために私たちが行くという感じですよね。
 病院の入院期間が長い子どもの母親は、看護師以上に医療用語を駆使し、器械のことにも詳しいから、「え?」と驚かされることもあります。でも、それは子どもの命を守るために、医師と母親が1対1でやり取りして、家に連れて帰ってきたということでもあります。そういう母親を超えるのではなくて、「ママが一番」ということを伝えて、立てるということだと思うんです。そういうふうにしている素敵な先輩がいる職場で、時間をかけて育ててもらえているのであれば、がんばってそれをよく見て身につけつつ成長できますね。在宅の現場を知ったうえで看護師になっているので、母親とのコミュニケーションの面は大丈夫じゃないでしょうか。

全員に無理と言われた新卒訪問看護師への道

秋山 新卒で訪問看護の道に進みたいと考えたとき、学校の先生は、どういうアドバイスをくれましたか。

松本 看護学校の在学中に、実習先や実際に在宅で働いている看護師に、「新卒でなりたいんです」と言ったら、「うーん、難しいね」と言われて。実習の先生からは、「私は、10年経っても難しいと思うわ。無理無理、使えないよ」って言われました。質問した全員が「無理」だと言いました。新卒の訪問看護師って、リスクなのかと悩みました。

秋山 それでも、採用先があったわけですね。その採ってくれた先の管理者は、どういう考え方だったんでしょうか。

松本 看護学校に在宅看護論の先生として来ていたのが今の私の職場の社長だったんです。そのときに社長が言ったのは、「私がここで教えているのは、新卒を採りたいから」「だけど、何年やれども1人も来ない」という話で、それで「一度見に行ってみよう」と思って、1日体験をさせてもらいました。

秋山 新卒を採りたいために教鞭をとる社長の意気込み、それはたぶんいろいろな思いがあってのことだと思います。その人も、初めて新卒を採られたと思うのですが、もちろん在宅で十分研修はできるけれど、技術的な面ではどこかと提携して何か勉強するような機会はありますか。

松本 神経病院や小児病棟での研修や、子どもの看護に生かせるように通園施設を見学したり、東京都看護協会の訪問看護師育成基本コースなどに申し込んでもらって、たくさんの研修を受けることができています。毎月1/3は研修や講義で学べる環境です。

秋山 現場でいろいろ教えてもらうこととはまた別の意味合いで、講義も役に立ちそうですか。

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楽しくても苦しい毎日,
でも自分も人を励ますことができる看護師になりたい!

松本 そうですね。講義内容もそうですが、励ましてくれる先生が大勢いますから…。
 矢尾知惠子先生(社会医療法人河北医療財団河北訪問看護・リハビリステーション阿佐谷)の講義のときに「新卒はだめですか」と質問しました。矢尾先生からは「私は逆に新卒を採りたいわよ、あなたは絶対大丈夫よ」と言ってもらえました。別の講義で柴田三奈子先生(株式会社ラピオン山の上ナースステーション)からは、「半年の壁」について講義で教えてもらいました。入職してちょうど半年くらいに「病棟に戻りたい」「看護師を辞めたい」と思う時期があって、「私は入職前の訪問看護師に、必ずそれを言っている」と。そうすれば、苦しいなと思ったころに「これは半年の壁だ」って気づけるからと話していました。
 ストレスを感じたりすることもあって苦しいけれど、こうやって素直に表現すれば、励ましてくれる人たちは大勢いるんだと思ったら、自分も人を励ますことができる看護師になりたいと思うようになりました。

秋山 柴田さんは「半年の壁」と表現していますが、中村順子さん(秋田大学)が書いたもののなかに「揺らぎ」という言葉があります。
 訪問看護師が独り立ちしていく途中で、壁にぶつかるというのと同じようなことなんだけれども、例えば「ここまで入り込んでいいのか」「ここから先、自分が思い切って踏み出さなければうまくいかない」とか、そういうことですごく揺らぐ。その「どうしよう」と思う揺らぎを誰でもが経験するし、逆にその揺らぐところにぶち当たらないと、揺らぎを乗り越えた先にある自信にはつながらない。だから管理者側は、揺らいでいることによく気がついたうえで、揺らいでいる人を揺らぎから取り戻すのではなく、「揺らいでいていいからね。その揺らぎを乗り越えた先のところまで、もうひと踏ん張りがんばってね」と背中を押す、そういう管理者が求められる、と書いています。
 松本さんはきっと今、そういうとき。「大変だ」と思うことをただ否定するのではなくて、今がそういう時期なので、そこを乗り越えた先にある何か、そこに向かって走っていかなくてはなりませんね。

松本 勉強をし続けるしかないですね。

揺らぎながら、新卒として輝きたい!

秋山 新卒からの訪問看護は今後増えていくと思います。今の急性期の病院はあまりに忙しすぎて、バーンアウトして辞めてしまう看護師が多いんですね。松本さんのステーションは小児に特化していますが、一般的な訪問看護ステーションは高齢者が多く、非常にゆっくりとした療養を看護として支えていくという面があって、そのなかでは、コミュニケーションをしっかりとりながら非常に基本的な看護ケアをきちんとやっていくことが求められる。新卒の看護師にとっては、かえっていいのではないかという考え方があります。

松本 同じ学校を卒業した仲間と会うと、皆が盛り上がるのは、「夜勤で採血を何人して」「点滴を何人して」といった技術の話なんです。在宅にいる私はそのときに、「なんか取り残されてるな、世界が違うんだな」とちょっと寂しくなりますね。

秋山 そういう技術的な面で、すごくうれしくなっちゃう1年目・2年目というのがあるんです(笑)。それから、驚きなのですが、大学病院には研修医がたくさんいるし検査室があるから、採血や静脈注射を看護師が全然しない施設もあるそうです。だから、大学病院での臨床経験があって訪問看護に就職したときに、採血ができない状態の人もいるんですよ。

松本 へぇー!

秋山 でも松本さんは、例えば人工呼吸器をつけている子どものところに訪問しますよね。器械がとても優秀になっているとはいえ、この器械がどういう理屈で動いているかということは勉強しておかないといけないし、回路交換を自分でもするから、そういうことは自分たちで勉強する。器械の進歩に合わせて新しい知識を入れていくことも必要で、それは病棟とは違う在宅の一面です。ですから採血ひとつをとって、それほど出遅れていると思わなくてもいいんですよ。

松本 私は、これでいいのかなぁとか、本当にこれで訪問看護師といえるのだろうかと、まだ自信がないんですよね。

秋山 そんなにあわてなくてもいいんじゃない(笑)。6カ月の壁と、揺らぎという概念と重なっているころだと思うんですけどね。

松本 ただ明らかに感じているのは、入職したときと今だと、自分の顔つきが変化しているなということです。本当に真剣に仕事と向き合おうとしていると、自分自身で感じていて、だけど、苦しさもあって…。揺らぎですね。半年の壁だなぁって、自分で毎日思っていますね。

秋山 もうちょい!(笑) まるまる1年経つと、またちょっと違うかもしれないですね。
 もちろん1人で訪問するので、その場での責任は自分にあるわけだし、大事なところではあるんですが、後ろに先輩がついていて、チームがいて、なおかつそこには家族がいて、主治医がいる。そのチームで動いているなかの1人なんです。わからなかったら恥ずかしがらずに聞けばいい。責任の重さを感じてもらえているのはとても大事なことだけれど、全部を自分が背負っているわけではないですから。

松本 病棟経験もなくて、臨床経験も短いですけど、がんばれると思います(笑)。

秋山 もちろん、病院の経験があるかないかだったら、あったほうがいい部分もあるかもしれないけど、急性期の大病院の激務に消耗しちゃって、もったいないほどに多く辞めてしまう看護師たちがいて、その後は定着できずに転職を繰り返してしまう様子を知ると、それだったら、在宅へ来たいという希望があるのだったら、最初から在宅に進んでもいいんじゃないかなと思いますよ。
 病院は患者の安全管理をとても重視している場なので、しくみも医療者自身も、残念なことに患者よりも医療者側を向いていることが多い。それに比べて在宅は、看護の対象である患者・家族がど真ん中にいるので、実践の場として非常に大事な部分を見逃さないと思うのです。
 逆にいえば、ある程度の在宅経験を積んで元の病院に戻る、病院の経験もするという道もあるとは思いますが、病院の文化に染まり過ぎても、ねぇ(笑)。人は自分の生活空間のなかで生きているので、病院のなかで管理されている患者像しか知らないと、そこの大切さが見えなくなります。生活しているその人を支えるという視点は、高齢者でも小児でも変わりはない。その視点さえブレなければいいと思うんですよね。だから、それは病院の経験が何年あるかなんて関係ないんじゃないかしら。

松本 秋山さんの著書のなかで、目の前の患者や利用者の本音を聞き出すという一文があって、とても共感できました。日々の看護でも相談業務でも、本当に自分の話をするには相手との信頼関係が大事だと思うので、その信頼を得るような雰囲気や人間性がとても大事なんだろうなと思います。

秋山 相手が人生を語りたくなる人でありたいなと思いますね。

松本 私も、憧れます。

秋山 「この人になら、話してもいいかな」って思える看護者でないと。それには時間が長くあればいいというわけではなくて、ものすごく短い時間でも、フッといろいろな本音を言えるかどうかに大きな違いがあると思うんですね。患者や家族は、いろいろな経験をしたなかで、フッと本質を突いた話をすることがあるので。
 松本さんは、声のトーンがとても穏やかで、相手が話したくなる雰囲気をもっておられるから、大丈夫だと思います。
 「言葉は音楽」なので、音楽性があるというのか、話しているトーンや声の高さとか強さとか、それが相手に対してすごく影響があると思うので、きっと大丈夫です。

松本 胸がいっぱいになりました。(了)

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対談をおえて

松本 私は入職してちょうど半年くらいで「楽しくて苦しい」の、「苦しい」の比重がすごく大きくて、今日(対談当日)もどういうことをお話ししようかな、苦しいことを苦しいとお話ししちゃっていいのかなとか、葛藤があったんですけれども、秋山先生のお話を聞いて、そんなに背負わなくていいんだ、チームの連帯があって、私はそのなかの1人なのだと思ったら気が楽になれて、安心しました。お会いできて、本当によかったです。私自身が癒されました。私もいつか、秋山先生のように(相手を)癒せる人になれたらなぁと、目標ができました。

秋山  穏やかな声のトーンの松本さんの話しぶりに、きっと利用者の癒される環境が生まれるなと感じました。新卒での入職。不安を多く感じながらも自分の足りないところをきちんと見つめて勉強をしようという姿勢、6カ月の壁・揺らぎに直面しながら、そこを乗り越えられるようにチームが新人を支えている様子が松本さんをとおして感じられます。小児在宅の最前線で大きく育っていくことを期待します。

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【ゲストプロフィール】
重度心身障がい者の自立を支援する自立生活センターや療養通所、重度認知症対応型デイサービスで介護福祉士として13年間勤務。人工呼吸器を装着し在宅で生活している方々と出会い、専門的知識を深めたいと一念発起、看護学校を受験し41歳で看護師に。株式会社フローレンス 訪問看護ステーションくれよんに勤務し新卒訪問看護師となる。
現在は株式会社わやたみ訪問看護ステーション ユーカリ 西東京サテライトに勤務。

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【ホストプロフィール】
2016年10月 maggie’s tokyo をオープン、センター長就任。事例検討に重きをおいた、暮らしの保健室での月1回の勉強会も継続、2020年ついに100回を超えた。2019年第47回フローレンス・ナイチンゲール記章受章。

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※本記事は、『在宅新療0-100(ゼロヒャク)』2016年3月号「特集:高齢者の在宅医療」内の連載記事を再掲したものです。

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『在宅新療0-100』は、0歳~100歳までの在宅医療と地域連携を考える専門雑誌として、2016年に創刊しました。誌名のとおり、0歳の子どもから100歳を超える高齢者、障害や疾病をもち困難をかかえるすべての方への在宅医療を考えることのできる雑誌であることを基本方針に据えた雑誌です。すべての方のさまざまな生活の場に応じて、日々の暮らしを支える医療、看護、ケア、さらに地域包括ケアシステムと多職種連携までを考える小誌は、2016年から2019年まで刊行され、現在は休刊中です。

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