韋駄天ジョーのアメリカ横断伝説 第1伝説
俺は飢えに飢えまくっていた。
盗んだ車が砂漠のど真ん中でエンスト。
一文無しでもう3日もハイウェイを歩き通し。
他の車は半日に1度通るかどうかって有様。
車を奪おうにも上半身裸で全身タトゥーの男を拾う馬鹿はいなかった。
だが4日目の昼、ついに見えた。陽炎の向こう、小さなドライブイン。
ポケットのナイフを確認する。足元がふらつく。
こんな空きっ腹では赤ん坊も殺れやしねぇ。
まずはメシだ。
俺は韋駄天ジョーだ。恐れを知らない東部のワルだ。
自分に言い聞かせ足を前に進める。
ドライブイン。
レストハウスに入る。
客は…誰もいない。
厨房にはスコット・スタイナーみたいなマッチョコック…
俺は計画変更を余儀なくされた。
食い逃げだ。食い逃げしかない。
1マイルを4分ジャスト。韋駄天ジョーの食い逃げをなめんなよ。
俺はコックに注文を告げる。
「ホットドッグとコーラ」
コックは無言で店の奥を指差した。
食券の自販機があった。
【第1伝説その2 『恐怖のカナディアンバックブリーカー』に続く】
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