43.団塊 Jr. 世代
私が属する世代を見てみます。
ロストジェネレーションだとか、就職氷河期世代だとか、幾つかの肩書きがあります。
学生を終えようとしていた時に…、
“さぁ、社会人だ!仕事を頑張って社会で活躍しよう!”
…と気合いを入れた途端に社会から排除されたような世代です。
2000万人近くいて、まだまだ不安定な生活をしている人が多いです。
団塊ジュニア世代の多くは就職氷河期世代です。
社会に恨みを持ってしまっている人も結構いるかもしれません。
でも、この世代が本当の意味で力を発揮して、社会に役立てるのはこれからではないでしょうか…そう信じたい…。
就職氷河期はバブル経済が崩壊した1993年から2005年頃までの就職難の時期を指していいます(リーマンショックを契機として2008年前後に訪れた就職難は“新就職氷河期”と呼ばれることがあります) 。
就職氷河期の13年近くにわたる採用抑制の影響により多くの企業で人手不足になった結果、労働環境が苛酷になるブラック企業が増加するという違う問題も話題になりました。
就職氷河期の主な原因はバブル崩壊による景気の悪化です。
不況によって企業が新卒採用の人数を減らし、それによって新卒で就職できない学生が増えてしまったことが原因です。
日本では未だに新卒主義が根強くあり、新卒で就職できないとその後は正社員になるのが難しいという現状があります。
就職活動の時期に就職難が重なってしまった場合に、非正規雇用という働き方を選ばざるを得なくなることも少なくありませんでした。
実際のところ、就職氷河期には能力があるにも関わらず、フリーターや派遣社員になった学生が多かったです。
就職氷河期世代は高卒の場合は1975〜1985年生まれ、大卒は1970〜1980年生まれの人たちのことをいいます。
現在30代後半〜50代前半の人です。
就職氷河期世代は非正規雇用で働く割合が高く、年収も低い傾向にあります。
福祉業界のように正規雇用で働いても年収が極端に低い例もあります。
また、晩婚化が進んだ為、育児や介護と仕事を両立させなければならないという問題もあります。
就職氷河期世代は新卒時の就職率が低かったことと、30代以降も非正規雇用のままである割合が高い傾向にあります。
就職氷河期世代が新卒で就職した割合は、大卒が69.7%、高卒が70.9%でした。
就職氷河期を除いた1985年~2019年の大卒の平均就職率は80.1%なので、10.4%も低いことが分かります。
高卒の場合も平均就職率78.1%に対し7.2%も低いです。
新卒時にフリーターや派遣社員などの非正規社員になった人が多いので、30代以降もキャリアが積めずに非正規社員として働き続けている人が多いと考えられます。
好景気時代(バブル期)と就職氷河期では、給与の伸び率が大きく異なります。
1989年から1990年にかけての給与の伸び率が5.7%なのに対し、1994年から1995年にかけては0.4%に落ち込みました。
この影響から就職氷河期世代はバブル世代に比べて年収が平均的に低く、生涯年収も圧倒的に低いと言われています。
また、非正規社員の期間が長い人ほど、将来もらえる年金の額も少なく、老後の生活も不安定になりやすいと考えられています。
就職氷河期世代は非正規社員の時期が長かった人が多い為、晩婚化が進みました。
その為、30~50代の働き盛りといわれる時期に育児をしている人が多いです。
また、就職氷河期世代の親は団塊の世代です。
団塊の世代は2025年には、全員が75歳以上の後期高齢者になります。
育児をしながら共働きをする世帯が多いのに加えて、介護という新たな問題も抱えることになります。
2022年3月に卒業した人の就職率は大卒が95.8%で、高卒の就職率は99.2%です。
前述のとおり、就職氷河期の就職率は大卒が69.7%、高卒が70.9%だったので、現在の方が就職しやすいことが分かります。
就職氷河期の有効求人倍率は大卒が0.99倍、高卒が1.21倍でした。
好景気の時期は大卒が2.77倍で高卒が2.57倍だったので、就職氷河期になって大幅に減ったことが分かります。
就職氷河期の就職がいかに厳しかったかが分かります。
有効求人倍率は求職者1人につき、求人が何件あるかを示した数値です。
有効求人倍率が2倍であれば、求職者1人に対して2件の求人があると分かります。
1倍を切る場合は、1人当たりの求人数が1件に満たないので就職できない人が確実にいるという状況です。
就職氷河期世代は団塊ジュニア世代ともいわれ、子どもの人数が多かった時代でもありました。
その為、そもそも就職の競争率は高い傾向にありました。
更に不景気が追い打ちとなって、求職者の人数は多いのに採用人数が少ない状況となってしまい失業率が高まりました。
就職難の時代に社会人になった就職氷河期世代は、入社後は1日も早く戦力になることを求められました。
しかし、企業側に充分な教育コストをかける余裕はなかったので、自力で成長せざるを得なかったという背景があります。
企業の採用人数が少なかったことから、少数精鋭であることを求められた就職氷河期世代は仕事に対しての考え方が厳しい人が多いと言われています。
上司や先輩から丁寧に仕事を教えてもらう機会が少なかったので、自分で勉強し先輩の背中を見て仕事を覚えたという人も多いです。
また企業側も“成果主義”の傾向を強めたので“結果を出さなければ意味がない”とストイックになる人も多くなりました。
転職市場では就職氷河期世代は優秀でありながら、安くても雇えると言われています。
実際に同時期に雇われた若い世代よりも収入が少ないという経験を私もしたことがあります(私の場合は優秀ではないですが…笑)。
就職に苦労した経験から“手に職を身につけよう”、“資格を取得してスキルを高めよう”という考えの人が多い傾向があります。
非正規社員から正社員を目指す為に資格を取得したり、会社が倒産しても転職できるようにスキルを身につけたりした人が多いです。
その為、就業機会に恵まれなかったものの、高い専門スキルを持つ人がいます。
就職氷河期世代は年収が低い傾向にあることから、節約志向の人が多いといわれています。
当時は大手証券会社の倒産や、メガバンクの経営統合といったニュースもありました。
また、両親がバブル崩壊の煽りを受けたという人もいます。
その為、いつ何が起きるか分からないと実感し、節約、貯蓄を重視する人が多いです。
2019年6月になって、政府は「就職氷河期世代支援プログラム」として、3年間の集中プログラムを策定しました。
新卒時に希望に沿った就職ができなかった就職氷河期世代が、現在も非正規社員や無職といった不本意な状態にあることを問題視して、支援を強化しようと打ち出したものです。
ちょっと対応が遅すぎにも感じますが…。
ハローワークに就職氷河期世代の専門窓口を設置して、専門の担当者が相談から職場定着までをサポートしています。
対象者は2019年当時の35〜54歳で、正社員の就職を希望する人です。
書類作成や面接指導、求人紹介を行い、就職後に不安や悩みがあれば相談もできます。
正規雇用に役立つリカレント教育も整備されています。
リカレント教育とは“学び直し”とも言われていて、社会人がスキルを磨く為に再び学校へ通うことなどを指します。
非正規社員として働きながら資格取得ができる短期集中型の講座や、実務に役立つ職場実習などもあります。
条件を満たせば、教育訓練給付金やキャリア形成促進助成金の活用も可能です。
選考を兼ねた社会人インターンシップが拡充されたので、入社後のミスマッチを防ぎやすくなったのは本人にとっても企業側にとっても良い点です。
企業側が就職氷河期世代を採用した場合に各種助成金が支払われるといったメリットもあります。
また、このプログラムを活用して良い事例を作ることで企業のイメージアップに繋がる効果も期待できます。
就労が不安定な人に向けて、民間の事業者に委託して教育訓練や職場実習を行うことも支援プログラムに盛り込まれています。
ハローワークの支援と民間事業者の支援を組み合わせて、就職氷河期世代が安定した職業に就けるように支援することを目指しています。
例えば、農業、漁業、建設業、宿泊業などの研修や就業体験を民間事業者が実施しています。
自分からハローワークや支援機関に行けない人の為に、職員が出向くアウトリーチ型の支援も強化しています。
例えば、ひきこもり地域支援センターや地域若者サポートステーションの支援員が自宅に行って本人と信頼関係を作り、就職支援を進めるという取組が行われています。
就職氷河期世代には、希望の就職が叶わないでひきこもりになってしまった人も多いと言われています。
アウトリーチ型支援の他に地域社会との繋がりを作る為に、企業やNPO、地域包括支援センターなどが連携して本人の自立をサポートするといった支援の輪も広がっています。
就職氷河期世代はバブル世代やゆとり世代に比べて忍耐力があると言われています。
アルバイトや派遣社員などで希望と異なる待遇や職種でも耐えてきた経験があるからです。
また、企業の経営状態や社会動向によって異動や転職を何度か経験している人も多く、変化に対応する能力が高い傾向にあります。
その為、40〜50代でも新しい職場や業務に馴染みやすく早期離職もしにくいと言われています。
就職氷河期世代には、手に職を身につけようという人が多いので、専門スキルを要する仕事で即戦力になれる可能性があります。
また、10年以上の社会経験があるのでビジネスマナーや基本的なPCスキルなどは身についている人が多いです。
更に、仕事に対して厳しい姿勢を持ち合わせているので、採用後の活躍が期待できます。
競争の時代に活躍してきたバブル世代と個性を尊重する時代に育ったゆとり世代は仕事のやり方や人付き合いの仕方が大きく異なります。
バブル世代の時代にはインターネットもパソコンもなく、コミュニケーション能力や営業力で仕事を獲得していました。
一方で、ゆとり世代はITスキルが高く、分からないことがあれば先輩社員に聞くよりも自分で検索するといった合理的な性質があります。
この2つの世代の中間に位置するのが、就職氷河期世代です。
アナログとデジタルの両方の時代を知っている就職氷河期世代が異なる世代の溝を埋めるのに適していると考えられます。
この世代が、これまでと同様に最後まで何とか粘り切ることが、これから状況がますます悪化するであろうと予測される日本社会においては、とても重要なことになると考えられます。
写真はいつの日か…サッポロビール園で撮影したものです。
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