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18.続コミュニケーション

コミュニケーション能力が高いと言われる人には共通点があります。
 
“伝える”だけではなく“伝わる”ことを重視しています。
 
コミュニケーションには必ず相手がいるので、単に自分の言いたいことを伝えれば良いわけではなく、相手がきちんと理解できるように“伝わる”コミュニケーションをする必要があります。
 
具体的には、伝えるべきポイントを明確にした上で伝えている、相手に伝わる言葉や話し方を選ぶ、相手の興味を引く話の引き出しをもっているなどの特徴があります。
 
そして、傾聴のスキルが高いです。
 
傾聴とは、単に話を“聞く”のではなく、相手の話に丁寧に耳と目と心を傾けて、真摯な姿勢で相手の話を“聴く”会話の技術です。
 
このスキルを活用することで、相手を深いレベルで理解できるようになり、信頼関係を構築しやすくなります。
 
また、身振り手振りや話し方なども意識しています。
 
例えば、プレゼンテーションをする際に、提案する内容だけでなく、身振り手振りを交えたり、話し方や話すスピードを意識したりすることも重要になります。
 
こうした言葉以外の情報も含めて、相手に伝わるような工夫ができることもコミュニケーション能力の1つです。
 
相手の言葉を深く理解し、相手の非言語コミュニケーションから本当の想いを汲み取るには、何よりも大切なのが相手に興味、関心を持つことです。

相手を知ろうとすることで“具体的にはどういうことですか”、“もっと詳しく教えてください”といった質問に繋がり、より深いコミュニケーションが生まれていきます。
 
また興味、関心を持って相手を観察することで、表情や声のトーンの変化に気づいたり、相手の感情を敏感に受け取ったりすることができます。

逆に、コミュニケーション能力が低い理由にも共通点があります。
 
コミュニケーションは、会話のキャッチボールが基本になります。
 
相手の話を途中で遮ってしまうと、結論まで聞かない為にピント外れの会話になってしまったり、自分の言いたいことばかりを言って相手にフラストレーションを与えてしまったりして、コミュニケーションが成立しにくくなります。
 
コミュニケーションを取る意思があっても、うまく伝えられない人もいます。
 
話の内容が伝わりにくい理由としては、自分の中で会話の目的や伝えたいポイントが明確になっていない場合があり、話の内容がわかりにくくなってしまうといった原因が考えられます。
 
そして、相手に興味、関心が持てないと、相手の話をしっかり聴く姿勢が持ちにくくなります。
 
相手の話を聞かなければ、話の内容を理解したり、相手の本音を引き出したり、的確に自分の意見を主張したりすることも難しくなります。
 
また、興味、関心のない態度は相手にも伝わるので、有意義なコミュニケーションは生まれにくくなります。
 
自分の価値観や立場ばかりを押し付けていては、双方向のコミュニケーションにはなりません。
 
相手の話に耳を傾けて、自分とは違った意見も理解しようとすることがコミュニケーションの基本になります。
コミュニケーション能力の基本は相手との意思の疎通にあります。
 
常に相手の立場になって物事を考え、相手の伝えたいことを受けとめること、自分が話す時には相手に伝わるように意識することが何よりも重要です。
 
相手に伝える為の技術としては、まず結論から伝え、それを説明する情報として、5W1H(When:いつ、Where:どこで、Who:誰が、What:何を、Why:なぜ、How:どのように)を付け加えることで、より具体的にイメージさせることができます。
 
相手が理解できるように、難しい専門用語を使わず、例え話などを交えることも効果的です。

また、一方的に話すのではなく、話の途中で“どう思う?”など、相手の反応や理解度を確認しながら、会話の方向性を意識することも大切です。
 
相手に、短い時間で簡潔に伝わるように“伝えたい要点を明確にする”、“結論から先に言う”、“相手のメリットを伝える”など、相手に興味を持ってもらう工夫をすることも大切です。
 
傾聴力としては、“相槌や頷きを返す”、“アイコンタクトで反応する”、“相手の言葉をそのまま返すオウム返し“や“相手のジェスチャーを真似するミラーリングをする”といったものもあります。
 
5W1Hは質問をする際にも有効です。
5W1Hを活用して問いかけることで、より情報が深まっていきます。
 
また、相手に話してもらう方法として、自分から情報を開示するという手段もあります。
 
まずは自分がオープンに話すことで、相手が安心して、心を開いて話がしやすくなるからです。
 
仕事でのコミュニケーションとなると、まず基本は“報連相”です。
 
必要なタイミングで、必要な報告、連絡、相談を行うことが求められるので、伝える目的を明確にして、相手に正確に情報を伝えることが大事です。
メールやチャットで報連相をする際には、的確な文章力も必要になります。
 
打ち合わせや会議の内容をまとめて、多くの人に共有する議事録も重要です。
 
一見すると簡単な業務に見えますが、情報を分類、整理し、読み手を意識してわかりやすく伝えていく力が必要です。
 
そして、プレゼンテーションです。
言葉だけではなく、身振り手振りや声のトーン、資料の内容など、言語、非言語でのコミュニケーション能力をフル活用して相手に伝えるのがプレゼンテーションです。
 
正確に情報を伝えるだけでなく、わかりやすく、相手の興味を引くコミュニケーション能力が求められます。
コミュニケーション能力は、日常生活でも、仕事においても、良好な人間関係を構築する上で重要です。

言語コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションも意識して、実践していく必要があります。
 
ついでに、バイスティックの7原則です。

振り返れば、バイスティックさんがいる…。
 
そう思えてしまうぐらい、コミュニケーションに関連することをお勉強すると、必ず見直す7原則です。
 
この7原則は、1957年にアメリカの社会福祉学者であるフェリックス・P・バイスティックさんが「ケースワークの原則」で記したものです。
 
援助者とクライエントが信頼関係を構築する為の倫理と行動の原理方法が記されています。
 
1.個別化の原則
クライエントが抱える悩みや問題は十人十色で同じ問題は存在しませんので、性別や年齢、障害などでカテゴライズしてはいけないという原則です。
クライエントひとりひとりに合わせた個別的な対応が求められます。
 
2.意図的な感情表出の原則
クライエントが感情を自由に表現することを認め、それができるように“意図的に”対応するという援助者の心構えです。
ネガティブな感情や独善的な感情は抑圧されやすいものですが、それを表に出して良いということを認め、クライエント自身が内面や取り巻く問題に向き合えるように導きます。
安心して話せる環境づくりや雰囲気づくりが大切になります。
 
3.統制された情緒的関与の法則
この原則はクライエントに対してではなく、援助者自身の心の在り方の原則です。
援助者は相手の感情に飲み込まれず、自分自身の感情に対して冷静にコントロールする必要があります。
クライエントの問題解決に向けて、感情に共感しながらも客観的な視野で関わり、クライエントが抱く様々な感情に感情移入することなく、冷静に対応する必要があります。
その為には、援助者自身が自分の感情に向き合い、自己覚知することが大切です。

4.受容の原則
援助者の基本的姿勢である“受容・共感・傾聴”の1つです。
クライエントの感情や態度をあるがまま受け入れ、先入観を持って否定してはいけないという原則です。
 
5.非審判的態度の原則
援助者側の価値観でクライエントの行動や感情を評価しないという原則です。
善悪の問題について、援助者が判断するのではなく、“なぜ、そのような行為に至ったのか、その背景にあるのは何か”を理解する必要があります。
援助者はこれまでの生活歴や状況を分析し、善悪の判断をクライエント自身が考えられるように中立的な立場で物事を捉えてサポートします。
 
6.自己決定の原則
クライエントの意志を大切に自己決定できるよう支えましょうという原則です。
人生の主役はクライエント自身です。
生活や人生に関わることで、問題を考えることはあくまでも本人で判断すべきことであり、人生において自己決定は当たり前のように行ってきたことです。
自分の人生の進行方向は自分で決めていますが、加齢や障害によってこの当たり前の自己決定ができなくなってしまうこともあります。
援助者は、自己決定しやすいように情報提供や援助を行います。
 
7.秘密保持の原則
クライエントに関する情報を同意なく他人に漏らさないという原則です。
援助者はクライエントの人生や生活に関わる為、個人情報や内に秘めておきたい問題について知っていますが、個人が抱えている問題や悩みは隠したいものです。
“秘密はきちんと守られる”と実感されることで、より深い相談に繋がり、信頼関係が生まれると考えられます。
 
バイスティックの7原則は信頼関係を構築する方法の1つで、人と関わる職種の基本的な姿勢の在り方です。
相談援助や介護、医療現場だけではなく、障害者分野や保育、教育機関、企業の研修でも広く活用されています。
 
バイスティックの7原則は、簡単に言うと、“クライエントを尊重し、専門職として冷静に対応する”ことを伝えています。

専門職としてだけでなく、コミュニケーションや人間関係でも活用できます。
 
現在は、新型コロナウイルス禍による行動自粛やオンライン授業によって、若者や子ども達のコミュニケーション能力に変化が出てきています。
 
新型コロナの感染拡大になって、4年目に入りましたが、オンライン授業への切り替え、部活、サークル活動の停止、営業自粛によるアルバイト機会の喪失など、学生生活は大きく変わりました。

こうした学生生活の変化は、学生や新しい社会人たちが身につけている能力に影響しています。
 
今の大学生や昨年から社会人になったような人たちに多く見られる特徴としては(みんながそういうわけではありません)、優れている点は、オンラインツールの活用法に詳しい、急激な環境変化への適応力が高い、オンライン上でのコミュニケーション能力が卓越しているなどです。
 
一方で、不足している能力は、対面でのコミュニケーション能力や自ら他人に話しかけたり、分からないことを質問したりする積極性と言われています。
 
そして、ストレス耐性がないことです。
 
このVUCAの時代において、不足している能力に関しては、個人やその家族に任せるだけではなく、学校や企業が課題を共有し、本人と産学協働で克服、育成する必要があると考えられます。
 
最後に、松下幸之助さんの御言葉です。
 
“視野の狭い人は、我が身を処する道を誤るだけでなく、人にも迷惑をかける。”
 
「19.コミュニケーション3」に続きます。


写真はいつの日か…有珠山上部から昭和新山を撮影したものです。
 


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