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昼過ぎ

たまらなくなった
うつうつと電車に乗る。
やらなければならないことは山ほどあって、期限は迫っている。
何から手をつけようか思案するものの身体は重く、しかし眠くもなく、ただどうにもうつうつとしている。
とにかく日々をこなしている。
どうにか予定ギリギリに布団からはい出し(オンラインの用事ならたまにはい出ることもせず、だが)散らかった部屋でメイクをし、
学食で朝昼兼用のご飯を食べ、用事をこなす。
打ち合わせやら授業やらミーティングやらの間に課題をし、資料をつくる。
最近はお風呂に向かうのが億劫で30分とか1時間とか永遠とネットサーフィンをする。その間に2度ほど「よし、行くぞ!」と思うのだが、なかなか動けない。
そうやって2時とか3時に眠り、気づいたらまた朝が来てしまっている。
また、追われている。

うつうつと電車に乗る。
生活習慣を直さなくてはいけないのは明白で、でも身体は重いし起きれる気がしない。ぐるぐる思考しながら揺られる。
とりあえず私の機嫌をとるために何かおいしいものを。
目的地近くのお気に入りのコーヒー屋さんに行き、ホットコーヒーを1杯、テイクアウトで頼む。
店主が「今日は〇〇と~」豆の説明をしてくれたので、新しく入ったというグアテマラをお願いする。
最近寒いけど今日はあったかいですね、お昼は暑いからストーブ切るんです、とか、結構この時期に新しい豆が来るんです、船でね、飛行機だと高くなっちゃうのでとかいろんな話をしてくれる。
お会計をして、袋に入れましょうか?-いえ、すぐなので大丈夫です、とカップを手に取って店の戸口に向かう。
店主は小走りで戸口を開けに来てくれ、「ありがとうございました~」と。
(いつもは朝の忙しい時間に来るのでこんなことはないのだが)
店を出つつ「ありがとうございます~」と頭を下げる。
なにかたまらなくこみあげた。
たまらなくなった。泣きそうな
カップを顔に近づけるといい香りが広がる。
今日の豆は香りが強いんですよ、と言ってくれていたな。
この瞬間。
なにかたまらなくなったという感覚が後ろから知覚された。

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