ジャスティス 第1回
初夏の夕暮れその日から社員寮に入寮した坂井博の部屋に、同じ日に入寮した、
渡辺明と飯田智昭がやって来た。
二階にあるカーテンすらないその部屋に射す西日が眩しく、三人は西日に背を向けて今日の入社式の話を始めた。
話を切り出した渡辺が「今日から入寮なんて聞いてないから、着替えも何も無いんだけど此れからどうすんだ?」
と困ったような顔をして二人に訪ねた。
「着替えもだけど、俺ついこないだ結婚したばかりなんだけど、嫁に寮に入るなんて事を言ってない、どうしょう」坂井もどうしたら良いのかわからずに、焦りを隠せなかった。
「何だ坂井結婚していたの?それなら早く家に電話しろよ!」三人の中で一番背が高くがっちりした体格の飯田が坂井にそう言って事を急ぐように渡辺に目で合図をした。
「大体携帯を没収って俺らは中学生か?」やれやれと言った顔をした渡辺は立ち上がって背伸びをすると固定電話を捜しに坂井の部屋を出ていった。
「俺も行く」坂井が部屋を飛び出して行き、飯田もそれに続いた。
食堂に行けば公衆電話位あるだろうと思っていた三人をあざけ笑うように、そこに公衆電話は置いてなかった。
「どうする?」三人は食堂の椅子に座って固まってしまった。
「外に行けばコンビニの前に公衆電話があったよ」渡辺が二人の顔を見ながら興奮ぎみに喋った。
「よし行こう」坂井と飯田がそれに答えて椅子から立ち上がった。
その時食堂の戸が音をたてて、ガラーと開いた。
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