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バイイング イン インド☆my traveling diary Ⅶ ポカラでの日々

かつて小さなお店をつくり、旅をしながら遊ぶように仕事をしていた6年間の記憶をつづりたいと思います。買い付け女一人旅。出会った人々。私にとってのインドとは? 新しい旅をはじめるための心の整理。同じように新しい旅路に直面している人たちとこの物語をシェアできればとても幸せです☆

カトマンドゥのレストランでの日本人男性からの言葉(V:天から降ってきたアドバイス)によって、これまでのモヤモヤが一気に晴れ、次の瞬間には‘楽しもう’という言葉が私の中に響いた。そうとなれば、ポカラに行こう。ちょうど年末年始がやってくる。Yがちょうど山から降りてくる頃だろう。ポカラでは晴れていればヒマラヤ山脈が見えるという。私は自分の思いつきが考えれば考えるほどグッドアイデアであることにワクワクした。

ポカラへは、ツーリストバスという名の古びた大型バスで向かった。夜行で景色が見えなかったのだが、相当のでこぼこ山道を一晩中揺られて早朝に無事到着した。霞のかかった日の出前のポカラのバススタンドは、カトマンドゥとは違って、山の空気が感じられた。

適当に選んだ宿に荷を下ろした。旅人が多く集まるレイクサイドは、リラックス感のある場所で、レストラン、ゲストハウス、お土産屋、インターネットカフェなど何でも揃っている。なかでもアウトドア用品の店が多く、ここでウェアや、用具を調達して、トレッキングに出かける人も多い。正規品ではなく、バッタものなので格安で買える。

メインストリートから離れて、ぺワ湖のほとりを歩いてみる。朝のぺワ湖は、驚くほど静逸で、神聖な気に満たされた場所だった。静かに感動しつつ湖を見つめていると、ふと背に何かを感じ後ろを振り返った。青空にそびえたつ真っ白なマチャプチャレ(6993m/聖なる山とされ、登攀は禁止)がそこに在った。息をのむような美しさで、私は胸がいっぱいになった。私の中でヒマラヤ山脈はなぜか特別以上の存在だった。街からこんなにはっきりと、近距離で見えるんだ。。。その日は新年最初の日だった。そんな日にマチャプチャレを拝められたことに感謝し、これから始まる一年に期待した。

ポカラでは純粋に自分の楽しみに従って気楽に歩きまわっていた。ある日一軒の店に目が留まった。入ってみると、きれいに磨かれたガラスケースの中にはたくさんの石が飾られている。石は一つ一つが大切に扱われていることがわかる。心の準備が出来ていないまま、いきなりドンピシャなものに出会ってしまった感じだった。店主のドイツ人男性が出てきた。彼は石がそれぞれどこからやってきたのかまで丁寧に教えてくれた。石の購入を検討していると、店のカウンターにかけられた直径2センチほどもあるクリスタルの玉でできた長い数珠を見つけた。見せてもらうと一つ一つの石の内包物がまるで宇宙のようにきれいだった。聞くと、これはネパールの職人に彼がオーダーしたもの。ヒマラヤのクリスタルを一つ一つ手作業で研磨しているから、完璧な球体ではないと。だから温かみがあり、魅力的なのだ。石の加工をどこでオーダーするのか聞いてみた。それはカトマンドゥのタメルにあるお店だという。タメル??私が散々歩き周り見てきたエリアにそんな店あった??
私はその店の住所を教えてもらい、お礼を言って店を出た。楽しみ始めたら急に流れが出てきた。自分のやりたいことを信じ、それ以外のあれこれを手放して、ぼーっと歩いていたら、出会った。これがあのアドバイスの真意だったのかと納得した。

Yとはメインストリートでばったり再会した。山から降りてきたばかりで、トレッキングで一緒になった仲間達とザック姿で歩いていたが、彼女は私と同じ宿に泊まりたいと言ってきた。こちらはもちろんウェルカムだった。仲間達と実は気が合わなかったのかもしれないし、一人だった私へのやさしさだったのかもしれない。新年のお祝いに一緒にライブハウスでお酒を飲んで楽しんだ。そして、残りのポカラ生活はYと過ごすことになった。
実は私はキムチが苦手で、Yにもなんとなく申し訳ない気持ちでそのことは前から伝えていた。ある日、Yはある青空レストランへ私を連れて行った。そして私にキムチを使わない韓国料理もあるから食べてみてと、青唐辛子入りのチジミをごちそうしてくれた。ポカラの韓国料理(ポカラでも様々な国の料理が食べれる)ではあったが、きっとYが認めた店だったのだろう。カリッ とした表面に香ばしいお醤油のようなたれ、シンプルに青唐辛子の辛さとうまみが引き立ってとても美味しかった。チジミを頬張る私を見てYは、「Juneにキムチ以外の韓国料理も美味しいことを知ってほしかった・・・」とぽつりと言った。私たちの友情はこうして深まっていった。

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