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誠実謙虚に。へラルボニー6期目の挑戦を、人・組織・カルチャーから紐解く

「異彩を、放て。」というミッションを掲げるヘラルボニーは、2023年7月24日をもって創業5周年を迎えました。数多くの作家たち、福祉施設、パートナー企業、ヘラルボニーで働く仲間、そして応援してくださる方々の協力があってこその今日が続いています。

去る8月17日には「創業5周年記念」を冠したオンライン会社説明会を実施しました。『人・組織・カルチャーから紐解く、へラルボニー6期目の挑戦』と題し、これから起きる“変化”を3つのセッションに分けて、社員自らが現状と展望を語りました。

YouTube配信では映像をはじめ、手話通訳と字幕も同時に表示。参加者からは「無音で視聴していても、様々な面でアクセシビリティが高いセミナー。運営の仕方を見習いたい」といったコメントも寄せられ、福祉や社会を「動かす」ヘラルボニーが伝える場として機能できている実感がありました。

今回は会社説明会の内容を、ポイントごとに振り返りながらまとめました。ぜひ登壇者の熱量や言葉を感じながら、チェックしてみてください。

行動指針を刷新。『誠実謙虚』に紐づく3つのバリュー

松田の表情からは、これからセッションで語られるヘラルボニーの変化と、その未来に対する熱意がにじみ出ていました。ヘラルボニーは創業5年で、現在は37の施設、153名の作家、2000点以上のアートデータの著作権管理をするまでになりました。

アートデータの著作権IPを軸に、さまざまな形でビジネスを展開していることに触れ、松田はヘラルボニーの現状を「作家のみなさまがいるからこそ、この資本主義経済で勝負ができています。この思想や考え方を拡張することで(福祉や障害に対する)世の中のイメージを変えていくことを証明したい」と改めて宣言しました。

松田 崇弥|代表取締役社長

ヘラルボニーの管理する著作権IPは、さまざまな共創パートナーと共に、各所で彩りを見せています。日本航空(JAL)の日本発国際線エコノミークラスの機内食のスリーブや、ホテル「ハイアット セントリック 銀座 東京」に展示したクリスマスツリーのほか、資生堂、成田空港、JR東日本などのパートナーとの関係を結んできました。

松田はこれらの展開をもとに「ヘラルボニー6期目では、新しい世界観や価値観を提示していきたい」と述べ、会社としてのバリュー(行動指針)の刷新を発表。最上段には「私たちのありたい姿」として『誠実謙虚』の言葉を置き、それに紐づく3つのバリューとして「挑んでいるか?」「未来をつくっているか?」「共に熱狂しているか?」を掲げました。

さらに、ビジネスをより拡張していくため、積極的な人材募集と、組織体制の変化にも触れます。大きなところでは「クリエイティブ局」の新設です。従来型のアートコラボレーションに留まらない展開を目指し、世の中へのインパクトを強化していくために設けられました。

また、障害者雇用や就労支援B型に属する福祉事業を推進する「ウェルフェア部門」を立ち上げ、障害のある人たちが働く場所そのものを創っていく動きを活性化させていくことも明かします。

「本当の意味で、障害というものへのイメージを変えていく会社になりたい。それを今日は宣言し、約束をして、これからも全力でコミットしていく思いです」と松田は強調し、今後新たに出会うはずの仲間やパートナーへ期待を寄せました。

メンバーの個性や意志を、より応援するための組織へ

最初のセッションは『変化1:カルチャー「バリュー刷新による働き方・組織の変化」として、松田から語られた新バリューに基づき、どのようにヘラルボニーの働く環境が変わっていくのかについて、HR部門の担当者や​ろう者のメンバーが語り合いました。

モデレーターを務めるPR・HR部門のアドバイザーである西丸亮からの挨拶で始まったセッションでは、6期目を迎えるヘラルボニーのカルチャーを体現するような「複業」メンバーが登壇。

HR部門のシニアマネージャーとして人事領域全般を担当する伊藤良太は、一度は引退を決意したプロバスケットボール選手として、2023年7月から復帰。ヘラルボニーの人事との「二刀流」へ挑んでいます。

伊藤 良太|HR部門シニアマネージャー

新設のウェルフェア部門でマネージャーを担う菊永ふみは、ろう者として一般社団法人異言語Lab.の代表理事を務めています。手話と謎解きを掛け合わせた「異言語脱出ゲーム」や、体験型エンターテインメントの制作に携わってきた経験を踏まえて、障害へのイメージをさらに変えたいという想いを胸に入社しました。

伊藤は今回のバリュー刷新について、「(今後のヘラルボニーが)ミッションである『異彩を、放て。』を実現していくために、どのようなバリューであれば最速で向かえるのか、メンバーが一体感を持てるのかを考え、半年以上かけて進めてきました。全てのメンバーへヒアリングしながら、積み重ねた結果です」と説明。バリュー刷新のタイミングで「メンバーの個性や意志を応援していくため」に複業規定も再設計されています。

ヘラルボニーへ入社して3カ月が経った菊永は複業で働くことで「良い循環が生まれ、精神的にも満足して元気になれる」と明るい表情。「異言語Lab.とヘラルボニーは目指すミッションが近しいからこそ、お互いに学び合い、価値を発揮し合えていると思います」。

菊永 ふみ|ウェルフェア部門マネージャー

さらに、菊永の入社をきっかけに組織として発足されたのが「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)チーム」です。障害のある方たちも健常者と同等に働き、主体的に自ら動いていくことができる場とするためには、設備や手段といったハード面と、個々人のマインドやスキルといったソフト面の整備が欠かせません。例えば、車いす利用者なら建物内をスムーズに移動できる仕組み、ろう者であれば手話通訳や字幕が必要といったように、あらゆる場所で課題は山積みのままです。

イベントには手話通訳者も入り進行した

その課題を広く開いて議論し、スピード感をもって改善していくことが、DE&Iチームの役割でもあります。菊永は「ヘラルボニーはソフト面が素晴らしく、みんなが一生懸命それぞれのことを考えられる良い職場。一方で、ハード面はさらに整備が必要。ハード面が揃えば最強の職場になれるはずだと思っています」と展望を語ります。

バリュー刷新をきっかけに、個々人の働き方に加え、組織としての不足をさらに整備する方針を明かしたセッション。6期目以降のヘラルボニーが向かう道筋を表す指針の一つとしても、今伝えるべき内容に満ちていました。

西丸 亮|ヘラルボニーHR/PRアドバイザー
全体の司会進行は広報PRチームの安藤奈穂が務めた

ヘラルボニー自身が料理人となり、クリエイティブで社会を変える

続くセッションの『変化2:組織「クリエイティブ局の発足」』では、この日の冒頭の挨拶で、代表の松田がヘラルボニーのビジネス拡大を担う部署として位置づけたクリエイティブ局が主役に。

登壇者には、クリエイティブ局でクリエイティブディレクターを務める桑山知之と、マネージャー/プランナーの朴里奈が名を連ねました。モデレーターはヘラルボニーの顧問であり、クリエイティブ局を含むアカウント部門のサポートを続けている、アート・プロデューサーの笠間健太郎が務めます。

元・東海テレビ放送の出身者である桑山は、報道記者やドキュメンタリー制作者として活動していた経歴を持っています。2018年頃から発達障害や障害のある人に関するドキュメンタリー映像制作の取材を続ける中で、ヘラルボニーとの出会いが転身のきっかけになったと言います。朴は、セレクトショップ「ビームス」で新規事業開発やコーポレートブランディングを手がけていましたが、次なるキャリアを考えた際に、ヘラルボニーのスタッフが連載するnoteの情熱的な記事に感銘を受け、自ら問い合わせをして入社をしました。

桑山 知之|アカウント部門クリエイティブ局クリエイティブディレクター

二人ともが異なるバックグラウンドから参画し、発足したクリエイティブ局に所属。部署発足の大きな動機を「ヘラルボニー自身が料理人になること」という例えを用いて説明します。これまでは福祉や障害に関連する社会課題に、外部クリエイターという料理人に、異彩作家の作品データという「最高の素材を料理してもらってきた」ケースが多くありました。活動の一環として、FABRIC TOKYOやMaison KOSÉ、SUQQUといった企業や団体とのコラボレーションを実現してきました。

しかし、今後のビジネス拡大を考えるのであれば、ヘラルボニー自身が料理をできるように腕を磨き、異彩作家たちのパーソナリティについても深く理解した上で、プランニングをしていくことが欠かせないと考えています。

「クリエイティブはヘラルボニーの思想を拡張する源泉である」と桑山は語ります。この新設部署は、ただの制作部門ではなく、会社のビジョンや使命を体現し、さらにそれを具現化するための「頭脳」であるとも。見方を変えれば、ヘラルボニーがクリエイティブエージェンシーとして機能し、クライアント企業の課題を知り、福祉や障害に関わる社会課題と結びつけながら、双方とも解決していく道を探る役割をより強めていくともいえます。

クリエイティブ局には現在、7人のメンバーが所属。学芸員やアートマネージャーといった多様な業界バックグラウンドを持っています。朴はこのチームのミッションを「社外に向けてはクライアントの課題を理解し、作家の特別な才能やアートを基盤に、コミュニケーションデザインを設計すること。社内においては、作家やクリエイターを深く理解し、その作品や意志を尊重すること」だと語ります。

朴 里奈|アカウント部門クリエイティブ局マネージャー/プランナー

桑山もこのミッションに共鳴しています。「私たちが目指すのは、思想を拡張する存在になること。toB(企業向け)の事業でも、企業とのコラボレーションをしながら、我々の主義主張をしっかりと伝えたい」と述べます。そして、クリエイティブ局が目指すのは「額縁のような存在」でもあります。額縁は作品を保護するだけでなく、その価値を高める役割も果たすからです。

社会課題やソーシャルグッドをテーマにした広告キャンペーンが世の中に増える今、ヘラルボニーがなすべきことの価値はより高まっていると、クリエイティブ局の二人は考えています。メンバーそれぞれが自らの課題として社会課題に向き合い、「クリエイティブの力で真剣に解決しようとしている」と朴は強調します。

クリエイティブ局は、多様な才能と視点を持つプロフェッショナルで構成されていますが、共通しているのは、クリエイティブで社会に変革をもたらそうという強い意志です。それが彼らが集まる理由であり、その力強いメッセージがまだ見ぬメンバーに響くことを信じて、今日も制作を続けています。

笠間 健太郎|アカウント部門アート・プロデューサー

人生の時間を燃やす価値のある仕事

最後のセッションは『変化3:人「新たな経営陣の参画」』と題し、代表の松田崇弥と、ヘラルボニーの経営顧問に就任した株式会社ユーグレナのCEO・永田暁彦が登壇。モデレーターは1つ目のセッションに続いて登場の西丸亮が務めました。

永田がCEOを担うユーグレナは、一般に「ミドリムシ」と呼ばれる微細藻類の「ユーグレナ」などを活用し、食品や化粧品の販売、バイオ燃料の開発・製造を行うバイオテクノロジー企業として知られます。創業者の出雲充さんが、バングラデシュを訪問したことを契機として、栄養不足や気候変動、食糧危機など様々な社会課題に立ち向かうべく、2005年に立ち上げた企業です。「人と地球を健康にする」という存在意義を果たすために、ビジネスの成長と社会貢献を両立するミッションを実現しようとしているのも特色です。

永田 暁彦|経営顧問

ユーグレナのミッションにはヘラルボニーと重なるところもありながら、永田自身にはより親近感のある体験があります。永田の両親は福祉関係の職についており、「幼少期から福祉の世界が身近」でした。家庭でも「福祉は目の前の人を救う仕事として大切だけれども、世界を変えたいのであれば他にやるべき仕事もある」といった、「社会を変える方法」について語り合うことが日常的だったと言います。

永田は福祉業界が抱える課題について問われると、両親の経験や自らのビジョンで、どう立ち向かうのかを語りました。

「社会の中で障害手帳を持っている人の比率は13〜14%程度だが、実際に健常者が出会う人の割合からすれば(10人程度に1人は)多いと感じるはず。実は関わっている人や、自分ごとにして動ける人が、社会にはたくさんいます。彼らの救いになり、求めるべきものになれば、事業はいくらでも成り立っていく」

西丸が「ヘラルボニーの創業を踏まえると共通点が多い」とコメントを寄せると、松田も同意します。「これだけ障害のある人が存在しているのであれば、その存在を可視化させること自体が、ヘラルボニーが担う大切な役割。資本主義経済の中にも、障害のある人を尊重し、その存在を社会に示す状態を作り切ることにコミットしたい」と改めて意気込みます。

クリエイティブ局の発足など、ヘラルボニーがビジネス拡大を試みることに、永田は「会社を拡大することは、ソーシャルインパクトを最大化する手段でもある」と表現。素晴らしいが小さな事業だけで満足するよりも、社会に大きな影響を与えるためには「厳しい山も登らなければならない」と熱く語ります。

しかも、ヘラルボニーが登ろうとしているのは、ただ利益を追求する山登りよりも厳しい、「エベレスト級の登山だ」と喩えます。「目的に対して事業を加えていき、会社が拡大し、社会が変革していく。加えていくビジネスにもヘラルボニーらしさを宿すことはできると、僕は思っています」と、『誠実謙虚』を守りながら、社会貢献と事業収益の両輪を叶えることのチャレンジについて、二人は改めて認識を合わせていました。

そのミッションが実現された先に、永田は「逆説的に『異彩』という言葉がなくなる」世界がやってくると示唆。障害者と健常者がいる世界の“溝”を埋める表現であり、それらが平坦な世界になれば「異」という言葉を使う必要はなくなるでしょう。

さらに永田は「福祉や障害に対する原体験がある人はもちろん、そういった原体験を持たない人も、ヘラルボニーで仕事をすることは、人生の燃やす価値があること」だと強調します。これに重ねて松田も、ヘラルボニーがまだ50名を超える規模の組織でありながら、急速に成長を遂げていることを肌身で感じています。「自分の人生においてもヒリヒリと燃える仕事」であり、これから加わる仲間にも「最高だったと思える体験と共に、社会を本当に変える可能性がある会社にいる事実は間違いない」と、ヘラルボニーの未来を語りました。


イベントのなかで代表の松田は「本当の意味で、障害というものへのイメージを変えていく会社になりたい。それを今日は宣言し、約束をして、これからも全力でコミットしていく思いです」と心強く話した。人・組織・カルチャーに大きな変化を促し、これまで以上の飛躍を担うのは、紛れもなく私たちであり、未来の仲間です。

へラルボニーはいよいよ6期目に突入。「異彩を、放て。」というミッションの実現へ向けて、今後さまざまな挑戦をより一層続けていく。誠実謙虚をモットーに。

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執筆 長谷川 賢人
編集 西丸 亮
撮影 橋本 美花

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