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その選択が暮らしの中で日々生きていくことのはじまりの高揚感|ヘラルボニーカード

「使うたび、社会を前進させる」ヘラルボニーカード

2021年11月に株式会社ヘラルボニーと株式会社丸井グループの共創の取り組みとしてスタートしたクレジットカードは、券面に佐々木早苗「(無題)(丸)」Fumie Shimaoka「宇宙」の2作品を起用して始まりました。

そして、本日3/14からそのカードデザインに新たに6作品が加わり、合計8作品のアートからデザインを選べるカードとして展開することになりました。

私は、2022年4月から株式会社ヘラルボニーでクリエイティブの担当させていただいております、大門倫子(おおかどのりこ)と申します。
丸井グループとの共創チームの一員として、昨年よりクリエイティブの視点からプロジェクトに携わらせていただいております。

本noteでは、新たに6作品を追加した背景と、この取り組みで私たちが皆さんと一緒に歩もうと思っていることについてお伝えできればと筆を取りました。

1.「使うたび、社会を前進させる」ヘラルボニーカード

買い物をすればするほど、社会を前進させるカード。

2021年の11月に始まったこのサービスを知ったとき、私は大学4年生でした。

通常のクレジットカードには珍しい、色鮮やかで緻密なアートが描かれたカードデザイン。

その唯一無二で、繊細でもあって、大胆でもある。まさに「異彩」の作品たちは、コロナ禍で何もかもが頓挫し、落ち込んでいた私の心を掴むのには十分すぎました。

なんだこのカードは。

「利用額の0.1%が福祉を支えるちからに」

カードデザインはもちろんですが、私の心を掴んだのはなんといってもこのカードの仕組みでした。

通常のクレジットカードであれば、使えば使うほど利用額の一部がポイントとなって返ってくるイメージがあるかと思うのですが、この「ヘラルボニーカード」は、使えば使うほど作家や福祉施設に還元されるカードなのです。

このカードを作っているのは、ちょっと不思議な響きの「ヘラルボニー」という株式会社。

<ヘラルボニーとは>
「異彩を、放て。」をミッションに、国内外の主に知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、アートをモノ・コト・バショに落とし込んでいくことで、障害への考え方の変容を目指す、福祉実験カンパニー。

アートライフスタイルブランド「HERALBONY」を立ち上げ、百貨店に出店したり。
工事現場の仮囲いと呼ばれる白い壁ををアートで彩ったり。
最近では、知的障害のある方のルーティン音を聴取し、音楽に載せて発信する「ROUTINE RECORDS」という音楽レーベルを立ち上げたりしています。

この会社のビジネスパートナーは福祉施設に在籍する主に知的障害のある作家たちです。

一般的に福祉施設(就労支援B型施設)にいる障害のある方の平均月収(工賃)は、月額16,507円*。
年収にすると約20万円程度です。

*就労継続支援B型の場合
出典元:厚生労働省 障害者の就労支援対策の状況(令和3年度)

今の社会では、障害のある方は社会の中で「弱い」立場であり、当たり前に「支援される」ものだという考え方が一般的になってしまっているのが現状です。

でも「ヘラルボニー」の考え方はそうではありません。

「”普通じゃない”ということ。それは同時に可能性だと思う。」

彼らの豊かな感性、繊細な手先、大胆な発想、研ぎ澄まされた集中力。真似をしようと思ってもできない彼らの無数の個性にはたくさんの可能性が眠っていて。その可能性を1つの「ブランド」として社会に送り届けるのが、ヘラルボニーの仕事なのです。

障害のある方をビジネスの渦に巻き込むのではなく、障害のある方がありのままに生活する場所に、ビジネスの渦を作る。彼らが世の中に「異彩」を放てば放つほど、会社は成長する

私はこの頃、「支援される側」になってしまう3歳上の兄のことを思い浮かべながらこうしたヘラルボニーの思想に強く強く共鳴していました。

このカードでお買いものをすると、その一部がライセンスフィーとして作家に還元され、その還元額は作家の新しい作品として形を変えて私たちの目の前に現れ、その作品が社会の「障害」への考え方を変えていく。

つまりこのカードは、券面だけでなく「仕組みをデザインする」カードだったのです。

それから巡り合わせのように、私は「株式会社ヘラルボニー」に新卒として入社しました。

ヘラルボニーに入社して、実際に作家さんたちにお会いする中で、わかったことがあります。

それは彼ら・彼女らにとってアートは「仕事」ではなく、1つの「コミュニケーション」だということ。

重度の知的障害のある方の知能レベルは3歳〜5歳程度と言われており、言語でのコミュニケーションが難しいことが多くあります。しかし、アートを介することで私たちは確かに、非言語の感情を作家と共有できる瞬間があるのです。

スタートアップの企業らしい、目まぐるしい日々の中で私たちが頑張れるのは、そうした作家さんとのコミュニケーションのお陰であることが多いのです。

そういった意味では「ヘラルボニーカード」はカードを持っていただくお客様とその作家を繋ぐコミュニケーションツールでもあるのかも。

だから、「寄付」ではなく「応援」として。

もっともっとこのカードを、ストーリーを、より多くの人に届けていきたい。美術館でアートを選ぶように、カードを選んでほしい。

そんな思いが実を結び、これまで2つの券面で展開をしていたヘラルボニーカードに本日から新たに、6つのアートが追加されることとなりました。

2. 地域の「異彩」の存在を自慢したくなるカード

ヘラルボニーの大きな強みの1つとして「全国に契約作家がいる」ということがあります。

北海道から沖縄まで、約150名、40以上の福祉施設とアートのライセンス契約を結んでいるヘラルボニーが「地域性」を大切にするのにはある理由があって。

それは、「自分のよく知る土地」にこんな「異彩」がいたんだと感じることでよりその存在を身近に思えるから。初めましての人でも、同郷だと知った途端急に親近感が湧いたり、距離が近づくあの感じ。

カードを持つ人たちが「異彩」の存在を自慢したくなる、広めたくなることでその土地の街の風景は少しずつ変わっていくと、私たちは確信しています。

そんな思いを言葉にしていたら、エポスカードの担当の方からも「絶対実現しましょう!」と心強いお言葉をいただき、この企画が実現することになりました。

最終的には47都道府県の作家と47枚のカードを彩る「地域アーティストカード」として展開することを目標に、まずは、都道府県を6ブロックに分けて、6枚のカード券面が追加されます。

【既存券面】

Sanae Sasaki「(無題)(丸)」るんびにい美術館
Fumie Shimaoka「宇宙」

【追加券面】

Asuka Tazaki 「森の道-赤い森」(岩手県)
Kaoru Iga 「夜景」(東京都)
Yuma Hayashi「無題」/アトリエ・ブルート(愛知県)
Masahiko Kimura「伏見稲荷赤門」/ アトリエやっほぅ!!(京都府)
GAMON「無題」/ 一般社団法人HAP(広島県)
Eri Nitta「帰り道の噴水、藤棚の木洩れ日とカラー、ガーベラ、ミスカンサス」
アトリエブラボォ(福岡県)

このアートたちがお店のレジトレーを彩っていく景色、最高じゃないですか。

2022年、11月のある日。

「カード券面のサンプルができあがりました!」

そう言って出来上がったサンプルをエポスカードさんが持ってきて下さいました。会議室の机には、既存券面を加えた合計8枚のカード券面が並びます。

「とってもいいですね・・!」

書かれた画材も、書き方も、色合いも違う。
カードの1つ1つは、作家自身の人柄を物語っているように感じられました。

それぞれのアートの質感を大事にした色再現も、エポスカードさんが試行錯誤を重ねて下さったお陰で生まれたものです。

さあ、モノはできた。お披露目の日付も決まった。


3.自分だけの一枚を、探し求めるカード。

クリエイティブ担当の私に任された一番の仕事はここからでした。それは「お客様にどうこの世界観を伝えていくか」の設計です。

「大門さん的には、どう見せていきたいですか」

クリエイティブチームとのキックオフミーティングで聞かれ私は迷わず

「選べるカードにしたいんです」

と答えました。

作品から、作家のストーリーから、都道府県から。
たくさん悩んで自分の意思で選択をしたカードは同じデザインでも「自分だけの1枚」になる。財布の中を見ると、その選択をしたことによる充足感に包まれている。

手に取ってくださったお客様にとって、そんな大切な一枚になるような世界観を作りたい。このときの私はそんなことを考えていました。

「わかりました」

数日後、クリエイティブチームからデザインコンセプト案が上がってきました。

個性豊かな、もはや作品のようなカードを見たとき、美術館の中でたったひとつの自分のお気に入りの絵画を選ぶときの情景が思い起こされました。それはもはや、選ぶというよりも、探し求めるという行為なのかもしれません。ここで表したいのは、意志を持って自分の納得のいく選択をすることの、その選択が暮らしの中で日々生きていくことのはじまりの高揚感。

これだ。

これは社会課題を解決するカードではない。
”意識高い系”のためだけのカードではない。
自分らしさを表現する、ライフスタイルカードなのです。

絶対にいいものにしたい、その思いでクリエイティブチーム、そしてエポスカードの皆様と奔走した3ヶ月。
(これは比喩ではなく、本当に走り続けていました。)


ついに本日、WEBサイトがリニューアルしました。
https://www.eposcard.co.jp/designcard/heralbony/index.html

美術館のようなマテリアルの中で、それぞれのアートが存在感を放つ。
どれにしようかな、と上下に何度もスクロールしてしまう。

カードの選び方は「作品」「作家」「地域」の3つで構成されていて、それぞれをクリックすることで、ちょっとした仕掛けが登場します。

まさに、「選ぶ」カードになりました。

ーーー

このお仕事を、作家さんに報告しよう。
それが、今の、いちばんのたのしみ。

このカードが広まるその日まで。
47都道府県の作家と共に、カードを彩っていくその日まで。
手に取っていただいた皆様と、社会の景色を変えていくその日まで。
私は走り続けます。

もしよかったら「あなただけの一枚」をこっそり聞かせてください。

株式会社ヘラルボニー
アカウント部門 クリエイティブ
大門 倫子(おおかど のりこ)

【Credit】
Creative Directer:木本梨絵(HARKEN)/小林大地(The Breakthrough Company GO)
Branding Producer:松隈太翔
Artdirecter/Designer:オダヒロト(HARKEN)
Camera:yansuKIM(YOIN inc.)
Set Design:石井大智(STUDIO STONE)

Special Thanks
株式会社エポスカード


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