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「障害=劣っている」のではない。あなたの持っているものは、欠陥ではなく、大事なものであるー佐々木めばえ

こんばんは!佐々木めばえです。
ヘラルボニーが運営する、知的障害のあるアーティストのアート作品を製品に落とし込むブランド「MUKU」で2ヵ月間、皆さんの応援の下進めてきたクラウドファンディング。本日、世界自閉症啓発デーに最終日を迎えました。
最後の最後ですが、私が今回のクラウドファンディングに込めた思いをお伝えさせてください。


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あれは去年の12月。
MUKU代表のたかやさんと一緒にアーティストに会いに、福島県郡山市に伺ったときのこと。今回のクラウドファンディングでコラボレーションさせていただいているはじまりの美術館は、郡山市からさらに車で1時間ほど走った猪苗代町にあります。

はじまりの美術館の運営母体は、安積愛育園。
郡山市をはじめ、福島県の社会福祉を数十年、支え続けている社会福祉法人です。安積愛育園が運営する、地域生活サポートセンターパッソに、アーティストの土屋康一さん、渡邉行夫さんはいました。


土屋さんの代表的な作品は「葉っぱ」。柔らかいクレヨンの色が印象的で、何枚も葉っぱが折り重なっていくカラフルな作品。その作品を刺繍に落とし込んだネクタイを手渡すと、沈黙し、なんとも愛おしげな眼差しでそのネクタイを見つめていました。


土屋さんのその穏やかな表情を見た時に、思ったのです。

「あなたの持っているものは、欠陥ではなく、素敵なものである」ということを。「障害」として見られてきたものに対しての肯定のプレゼントだということを。MUKUは、プロダクトを通して、それをアーティストにも、社会にも伝えられるブランドなんだと、その時にはっきりと思ったのです。

土屋さんの持っているもの、それは感性と呼ぶことができるかもしれないし、人柄・性格と呼ぶこともできるかもしれません。そして今までの社会の中ではそれは、「障害」だと呼ばれていました。
でも、その土屋さんの持っているものがまるごと表現されているアート作品に出会って、そこに価値を見出した人が、お金を払うという仕組みがあることで、今まで「障害」だとして捉えられてきた土屋さんの持っているものが日常の中で「価値」のあるものとして一人の人の中で捉え直される。

松田崇弥さん、文登さんが原体験をもとに、兄弟で創ったMUKU。
MUKUの役割の一つは、ここにあるのだと思いました。

知的障害のあるアーティストの日常、彼らとの出会い、アート作品ができてくる背景、それを製品に落とし込む過程、製品に価値を見出して購入してくれる方の存在。そしてその方へアーティストの人柄がこもった製品をお届けする。日常の中に、知的障害のあるアーティストが描いた作品が価値のあるものとして存在するようになる。

サイクルの中の全ての要素が不可欠で、お客様の元へお届けしてはじめてMUKUがある意味が生まれるのだと考えるようになりました。

MUKUを通して描くこと

一人一人の中で、「障害」のフィルターを通してアーティストを見るのではなく、その人の持っているものに注目する視点が生まれる。MUKUは、それを可能にするブランドだと信じています。

そしてMUKUがより多くの「一人」に届いていった世界ではきっと、『障害=劣っている』とするのではなく、『違う』だけであり、違う感覚を持って生きていることは価値のあることだと捉えるコミュニティが増えていくのではないかと思います。

どうして私はMUKUに関わっているのか、今回のクラウドファンディングで目指していることについて、最後にもう一度お伝えさせてください。

これは完全に私の個人的な見解ですが、私は、人間はみんなこの地球に生まれてくるときに「欠如」が与えられると思っています。完璧な形をした、まんまるの人はいません。みんな必ずどこかに苦手なところや得意なところを抱いて生きています。

まるい形をしていたところから、欠如と肉体が与えられて、この世界にやってくる。その「欠如」はこの社会の中で人と人とが出会うときに、「違い」として認識されるものかもしれません。その欠如と向き合って生きることがその人の物語を生むと、個人的に信じています。

反対に、人が何かの完成図を通して、人を見るときに生まれるのが「欠陥」なのではないかと思うのです。相手の中に欠陥があると思うとき、自分の中には確かに、「こうするべき」という概念、もしくは「こうしてほしい」という思いが存在しています。

固定概念を壊すものはなにか。きっとそれも、自分以外の異質な何かとの出会いだと思います。私の場合は、自分とは違った感覚を持った自閉症のある18歳の男の子と出会ったときに、自分の中の「こうするべき」といった概念や、相手に対して「こうしてほしい」という思いを自分自身が強く抱いていたことに気が付かされました。
でも、異質な何かに出会う機会が少なくなっている現状では、相手を見るときのフィルターは、どんどん同質なものを求める視点になっていきがちなのではないかと思います。

欠如を抱いた人間同士が出会うと、それは「違い」になります。今まではそれが文字通り「間違い」になることが多かったように思います。同じことが愛や共感を生み、違うことが憎悪を生むという風潮がまだ少し、あるような気がします。

でも、新しい社会の中では、そうであってほしくない。一人の人間に与えられた欠如こそ、愛おしく大事なものであると思うからです。そして欠如を抱いた人間同士が出会ってその違いを活かして繋がっていくことが、これからの社会の中で必要なことだと思っています。

Not less, different.

「障害=劣っている」のではない。
何かできないことがあるということは、劣っているということ同じことではない。
ただ、違う世界の見方・感じ方をしている。
そしてその「違い」を持っているのは、今の社会の中で障害者と呼ばれる人たちだけではない。
人間として生まれてきた私達全員が、それぞれに与えられた「欠如」を抱いていて、それは欠陥でもなければ、劣っているということでもないんだということを、私は今回のクラウドファンディングを応援してくださっている皆さんと一緒に形にしていきたいと思っています。

本日、クラウドファンディング最終日となりました。
MUKUは、日常の中で、人が抱く欠如を価値あるものに転換する役割を持っています。それは、人に届いてはじめて成立することです。
どうか、この文章を読んで、少しでも似た思いや、同じ社会を創っていきたいと思ってくださった方がいたら、このクラウドファンディングを、このメッセージを、あなたの大事な人に伝えていただきたいです。ご支援をしていただいたお金は、責任をもって、わたしたちMUKUが目指す社会を一つずつ形にするための資金に使わせていただきます。
ご支援のほど、どうぞどうぞよろしくお願いいたします!クラウドファンディンページはこちらから飛べます!


ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

佐々木めばえ


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