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VCの目にはどう映る?ヘンリーの今までとこれから【フェムトパートナーズインタビュー】前編

株式会社ヘンリーは、シリーズBの資金調達を行いました。

出資してくださったフェムトパートナーズ株式会社は、2012年にシード投資のフェムト・スタートアップLLPから始まり、2013年に第1号ファンド、2017年に第2号ファンド、2020年に第3号ファンドを設立し、運用しているベンチャーキャピタル(VC)です。

ヘンリーは、第3号ファンド(フェムトグロース・スリー投資事業有限責任組合)から2021年1月に1度目の資金調達を行っており、今回は2度目の資金調達となります。

今回の出資にあたって、フェムトパートナーズから磯崎哲也さん・曽我悠平さん・大久保克彦さん・山田慎吾さんの4人と、ヘンリー共同CEOの逆瀬川・林とで座談会を行いました。

ヘンリーとフェムトパートナーズとの出会いから出資のきっかけ、「社会課題を解決し続け、より良いセカイを創る」というミッションに向けた今後のビジョンなど、さまざまなお話を伺いました。

前編では、初めてコンタクトを取った時の印象や、資金調達を通してどのような関係性を築き上げてきたのかを紐解きます。

正面突破で出会い、堅実な姿勢で信頼を得る

─ ヘンリーとフェムトパートナーズがコンタクトを取ったきっかけについてお教えください。

逆瀬川:最初に連絡したのは僕からです。ヘンリーが2020年10月ごろから資金調達を開始したタイミングでフェムトさんのWebサイトにある問い合わせフォームからメールをして、返信をいただいたのが初めですね。磯崎さんと大久保さんが当時のオフィスまで来てくださって、直接ディスカッションしました。

─ その際、お互いの印象はいかがでしたか?

逆瀬川:「初めから大物の方がいらっしゃるんだな」と思ったのが率直な印象ですね(笑)
起業家であれば確実に読むであろう著書『起業のファイナンス』『起業のエクイティ・ファイナンス』を書かれている磯崎さんや、電通イノベーションパートナーズの代表取締役社長をされていた大久保さんと初めからお会いできたので、驚きました。

フェムトパートナーズ 大久保克彦さん

大久保:最初メールをいただいて、ホームページを見たら「ノーベル平和賞の受賞を目指す」と書いてあったので、「大丈夫か?この人たちは霞を食って生きていこうとしてるんじゃないか?」と思ったのが一番初めの正直な印象です(笑)

でも、今の社名にもなっている電子カルテ「Henry」のファーストリリース版をよく見てみると、ユーザビリティに長けていて良いプロダクトなのではないかと感じました。医療現場のDXには可能性があると思っていましたし、それならちょっと会ってみてもいいかな、というのが最初の印象ですね。

曽我:我々のところには年間200〜300件くらい問い合わせが来るんですが、実は投資対象から外れている等でお会いしないことも多いんですよ。その中で実際に会ってみるというだけでも、可能性があると感じたことの証になるというか。

磯崎:我々の実績としては、最初は知り合いや投資家からの紹介でコンタクトさせていただくのが一般的なんです。Webサイトの問い合わせフォームからご連絡をいただいて、実際にお会いするケースは非常に少ないんです。

曽我:普通はそういったステップを踏んで紹介してもらった方が確実に会えるんですけど、ヘンリーさんはそこを正面突破で来られたような形ですね(笑)

逆瀬川:そうですね(笑)
当時は1回当たってみてダメだったら他のルートを考えよう、という動き方をしていました。でもフェムトさんからはご返信をいただいたので驚きましたね。

初回に「1億円の資金をいただきたい」とお話ししたのですが、「もう少し事業のスピードを上げる方法はないのか?」とご提案いただいて。そういったご提案をいただいたのが後にも先にも初めてだったので、そこでまた驚いたことを覚えています。

─ 問い合わせフォームからの連絡で実際に会うケースは初めてとのことでしたが、なぜ返信しようと思われたのでしょうか?

磯崎:私も最初問い合わせを受けた時は、電子カルテにブルーオーシャン的な成長領域があるイメージは正直ゼロだったのですが(笑)、前々から自分や家族が病院に行った時に「電子カルテがイケてないな」と感じることが多々あり、小さい病院だとコンピューターすらないところもあったりして。

なので、もしかしたらそこにチャンスがあるのかもしれないなと感じたのと、経営陣に対して結構良い印象を持ったので、一度会ってみようかとなりました。

─ 実際に会ってみていかがでしたか?

磯崎:「ノーベル平和賞」と掲げている突飛なところから感じた印象よりは、何というか……かなりまともそうだと感じましたね(笑)

話してみると、今までの経験をもとに具体的な目先の目標設定などを持ちながら、長期的な大きいビジョンを見据えている人だというのが分かったんです。それが起業家としてあるべき姿だと思っていたので、そういった意味でも非常にいいなと感じました。

VCに背中を押してもらいながらの成長

─ 今回は2回目の出資ということですが、1回目・2回目それぞれ出資を決めたポイントはどういったところにあるのでしょうか?

大久保:初回の投資の決め手は、実際にプロダクトを見たところ、大きな成長の可能性があると思ったからです。「医療経営の高度化・効率化を実現できるようなソリューションを提供していきたい」という将来像に共感できたのも、投資を決めた1つのポイントですね。

また、創業者の2人が相互補完的ないい組み合わせで、この2人なら上手くチームを作ってリードしていけるだろうと感じました。
業界素人の2人が想いだけで入ってやっているわけではなくて、ユーザーの立場からプロダクト開発にアドバイスをしてくれる現役医師の顧問がいることや、逆瀬川さん自身にも医療領域に知脈と人脈があることも評価点になりました。

曽我:2回目については、1年間お付き合いしてみて、お2人の進め方や課題に取り組む姿勢を高く評価したのが大きいですね。何よりチームアップがすごく上手くいっていると感じました。

最初は4〜5人が狭い部屋で背中を向き合わせながらお仕事をされていたんですが、先日オフラインでお会いしてみると、シェアオフィスの中にギークな人たちが25〜26人集まっていて。この1年間でこんなに熱いチームを作ってきたのだということを評価して、これからも伴走させていただきたいなと考え、追加投資を決めました。

─ 今回の資金調達でヘンリーが達成したいと考えている目的や課題についてお教えください。

ヘンリーCEO 逆瀬川

逆瀬川:事業スピードを加速させることと、今のフェーズの中でなるべく高く評価してもらうことが大きな目的です。電子カルテとレセプトコンピューターを開発してきて、クリニック向けのものはすでに販売していますが、本丸である中小病院向けのものについて目処が立ってきたタイミングで資金調達に踏み切りました。

─ 出資する前と今とで、お互いの印象に変化はありましたか?

曽我:初めの時から2人ともスマートで物腰柔らかい印象がすごくあって、お話ししてみると受け答えもすごくしっかりされていて、好印象だなと思ったんですよね。

実際に投資をしてお付き合いしてみると、柔らかい物腰を持ちながらもある一定の芯を持ってきちんとやっている2人なんだな、という気がしました。だから印象が変わったというよりは、プラスの要素が増えていったような感じですね。

とはいえ我が強いというわけでもなくて、きちんと自分がマネジメントできているか、成長しているかを測るような姿勢もある。それはなかなか若い経営者の方で出来ている方は少ないので、すごく尊敬しています。

─ ヘンリーに出資して良かったな、と思うポイントは何かありますか?

大久保:今の時点で良かったなと思うポイントは、きちんとプロダクトを開発・リリースし、順調に成長してきているところですかね。

​​その証として、一番苦労すると言われているシリーズB 2回目の資金調達も無事にクローズできたわけですし、ユーザーとなった医師たちもプロダクトの有用性を評価しています。そう考えてみると、私たちの見立ても間違っていなかったな、と思いますね。

フェムトパートナーズ 山田慎吾さん

山田:電子カルテやレセプトコンピューターで中小病院を対象に取り組んでいる企業としては、おそらくヘンリーさんが唯一のプレイヤーだと思うんですよね。投資後の今、業界を見渡してみても、UI/UXに優れたプロダクトを実現し、難易度の高いレセプトコンピューターの開発も自社でやっていけるチームは見当たらず、その意味で唯一の企業だなと感じています。

─ 資金調達を実施したことで、ヘンリーからVCに対して印象の変化はありましたか?

林:そうですね、私の感覚としては、出資していただいてからの印象にはポジティブな変化がありました。VCという立場の方々に対してイメージしていたよりも、さらに任せていただいているなと思います。

初めは投資家さんから口出しをされたくないなという思いもあり自己資金だけでやってきたのですが、いざVCのサポートを受けてみると「口うるさい」といったことはなく、我々を信じてサポートしていただいているな、と感じました。そこは印象が変わったというか、自分の先入観を変えてくれたなと思っています。

適宜アドバイスを頂くこともあるんですが、後から振り返ってみると、この1年間で「失敗したな」と思うことはだいたい事前に皆さんからご指摘いただいていたことだったんです。昨年はアドバイスいただいたことに取り組むのが遅れてしまっていたので、今後はしっかり対応していきたいなと考えています。

逆瀬川:僕も同じ考えです。初めての起業ということもあり、どうしても守りに入った意思決定をしようとする部分があったんですが、そんな時に背中を押していただけるのが非常にありがたいですね。

続きは後編へ

正面突破の出会いから始まり、今では共に今後の成長へ向けて走り続けているヘンリーとフェムトパートナーズ。後編ではさらに踏み込み、両社の考える「社会課題の解決」とは一体何か、ヘンリーが今後さらに大きく成長するためには何が必要なのかを紐解いていきます。ご期待ください!

【座談会参加者プロフィール】

フェムトパートナーズ / General Partner 磯崎 哲也

長銀総合研究所で、経営戦略・新規事業・システムなどの経営コンサルタント、インターネット産業のアナリスト等として勤務。その後、カブドットコム証券の社外取締役、ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師などを歴任。
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。公認会計士・システム監査技術者。著書『起業のファイナンス』『起業のエクイティ・ファイナンス』。ブログ「isologue」や「週刊isologue」、Facebook等で情報を発信。

フェムトパートナーズ / General Partner 曽我 悠平

2002年、新生銀行入行。2004年からベンチャー投資業務に従事。2009年、東証一部上場製造業関連会社にて投資、アドバイザリー業務に従事。2012年、新生銀行プライベートエクイティ部、2013年よりフェムトグロースキャピタル参画。2017年、当社設立、ゼネラルパートナー就任。
中央大学法学部卒、同大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

フェムトパートナーズ / Managing Partner 大久保 克彦

長銀総合研究所にて、組織人事ならびに事業再構築領域のコンサルティングならびにM&Aのアドバイザリー業務に従事。その後、デロイト・トーマツコンサルティング、ネットイヤーグループ等を経て、株式会社電通に入社。
電通では国内事業部門においてM&A、事業投資ならびに事業再編を担当。「電通デジタル投資事業有限責任組合(電通デジタルファンド)」の組成も主導し、ポートフォリオマネジメントを担当。当該ファンドのGPである電通イノベーションパートナーズの代表取締役社長を務めた。
2020年5月、フェムトパートナーズのマネジングパートナーに就任。
早稲田大学人間科学部人間基礎科学科(細胞生物学専攻)卒

フェムトパートナーズ / Principal 山田 慎吾

2015年、新生銀行グループで投融資を手がける新生インベストメント&ファイナンス入社。債権買取、エクイティ投資、不動産ファイナンス案件に携わり、主に貸付債権や未上場の中小企業株式、不動産の評価分析業務を担当。不動産ファイナンス案件では、ローンのオリジネーションから実行後のモニタリングまでの一連の業務に携わる。
2017年8月より新生企業投資からフェムトパートナーズに参画。
慶應義塾大学法学部卒、中央大学法科大学院修了。

ヘンリー/共同CEO 逆瀬川光人

楽天にて複数の新規事業開発を経験。2016年にウォンテッドリー株式会社に転職し、新規事業室長として、ビジネス・マーケティング領域全般を統括。デザイン、営業、マーケティングを担当。林とともに2018年5月に株式会社B&Wを創業。2020年より慶應義塾大学病院眼科学・研究員を拝命。

ヘンリー/共同CEO 林太郎

学生時代、アフリカで日本の中古重機をレンタルする新鋭スタートアップで現地リーダーとして活躍。楽天株式会社入社後、楽天カード全体のSEOマーケティング業務や、楽天市場・楽天カードのビッグデータ分析等を実施する。逆瀬川とともに2018年5月に株式会社B&Wを創業し、2021年10月に社名を株式会社ヘンリーに変更。

インタビュー:鶴留彩花
写真:中村友莉那


ヘンリーでは、さらなる成長に向けて採用も積極的に行っています。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。