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VCの目にはどう映る?ヘンリーの今までとこれから【フェムトパートナーズインタビュー】後編

株式会社ヘンリーは、フェムトパートナーズ株式会社から2度の資金調達を行いました。

2度目のシリーズBの資金調達に関する情報解禁に伴い、フェムトパートナーズから磯崎哲也さん・曽我悠平さん・大久保克彦さん・山田慎吾さんの4人と、ヘンリー共同CEOの逆瀬川・林とで座談会を行いました。

前編で伺ったのは、ヘンリーとフェムトパートナーズの出会いから、資金調達を通して両社がどのような関係性を築き上げてきたのかなど。

後編ではさらにもう一歩踏み込み、ヘンリーのミッションとしている「社会課題の解決」とは一体何か? 今後ヘンリーが企業として大きく成長するためには何が必要なのか? といったことを紐解いていきます。

大規模な会社を目指すことと社会課題の解決は表裏一体

─ 「社会課題を解決する」とは、どういったゴールをイメージされているのでしょうか。

逆瀬川:“負”の部分を解消し続けて、皆が本来のパフォーマンスを出すというところを目指しています。その中間ゴールに「ノーベル平和賞の受賞」があるのかな、と。

今は医療業界の業務改善をテーマにやっていますが、取り組めば取り組むほど深い面が見えてくるんです。それをしっかりと見極めて、より難しくて深くてインパクトのある課題に取り組んでいけたらと考えています。

もちろん、医療業界ではないところの課題に取り組むこともあるでしょう。それを50年、100年と時間がかかったとしても、継続的に取り組み続けられる会社にしていけたらいいな、と考えています。

社会課題がなくなることは無いと思うので、僕らは課題を解消する組織であり続けて、より大きい課題に常にチャレンジし続けるということが、我々にとってはある種のゴールなのだと思います。

─ VCとしてはいかがですか?

フェムトパートナーズ 磯崎哲也さん

磯崎:我々の持っているビジョンは、日本のスタートアップ企業に資金を供給して、社会にインパクトを与える大きなビジネスを作りあげる成功例を積み上げていくことですね。

日本のスタートアップとVCはこの10年間ですごく盛り上がってきているんですが、一方でアメリカはもっと先へ行ってしまいました。金額ベースで言えばアメリカでは年間数十兆円の投資が行われているのに、日本ではまだ1兆円を切っていて、その差はどんどん開いているという状況なんです。

日本人も非常に優秀な人たちがスタートアップにチャレンジする世の中になってきていますが、まだまだ成功例が少ないという課題があります。

曽我:我々の一番大きな目標として「メガベンチャーを作る」というのを掲げていまして、投資するスタートアップ企業には最低でも1000億円単位、できたらそれ以上の会社になってほしいなと思っています。

大きい会社というのは、それに見合うだけの社会課題を解決しているからこそ規模が大きくなっているはず。そういった意味では我々の「メガベンチャーを作る」という目標も、ぐるっと回って社会課題を解決しているんじゃないかなという気はしていますね。

磯崎:1000億円、1兆円以上の規模まで成長していこうとすると、ちょっとした工夫や1つのアイディアだけでは絶対に達成できない。非常に多くの人の問題や深い課題を解決するという姿勢でないと、それくらい大きな規模の会社にはなれないと思うんですね。

そういう意味では、大規模な会社を目指すというのは、単なるお金儲けが目的ではなく社会課題を解決することと表裏一体なのではないかと思っています。

逆瀬川:僕らとしても社会課題につながるものを解決して、その対価としてお金をもらうことにこだわっている部分はあります。どのくらい大きなインパクトでやっていくか、というのが我々のミッションですね。

林:僕はもともと世の中のためになる仕事がしたくて、国連とかで働きたいと思っていたんです。その過程でアフリカに行ったりNPOやJICAを見たりしているうちに、世の中を良くする方法としてビジネスというアプローチが一番ダイナミックかつ持続的なのではないか、という考えに至りました。

─ 電子カルテ「Henry」について、利用者様からの反応はいかがでしょうか?

ヘンリーCEO 林

林:一番多いのは「操作がシンプルで、本当に使いやすい」という声ですね。従来の電子カルテやレセプトコンピューターは導入の際にコーチのような人を雇ったり、分厚いマニュアルがないと操作できないものがすごく多いんです。

Henryは出来る限り「なんとなくこんな感じかな、と触ったら使えた」というところを目指して設計したのですが、その手応えは確かに感じています。

─ 社会課題を解決するソリューションとしての手応えはありますか?

林:まず一番に分かりやすい手応えと言えるのは、紙で運用していたクリニック・病院においてHenryを導入していただくと、医療従事者の方の業務時間削減につながるということ。その先で言うと、Henryの導入で医療データが電子化されることによって、日本の医療データの活用推進につながるということが挙げられます。

日本のクリニック・病院における医療データのうち半分は紙で管理されていて、これはつまり今後の医療に役立つデータとして蓄積・活用できない状態になっているということなんです。

Henryはそれをデータとしての活用に推進できるものだと思っていますので、我々のビジネスの拡大それ自体が世の中に価値を提供することにつながる、すごく意味のあるプロダクトだと感じています。

─ 医療業界の業務改善という課題に向き合っていく中で、現在のヘンリーに「ここがまだ欠けているな」と思う部分はありますか?

逆瀬川:まだまだ20名ちょっとの小さな会社なので、組織自体を作り上げていかなければならないと思っています。いいものを作れば売れるという業界ではないので、特に営業組織を力強く推進していくことが重要かなと考えています。

我々2人よりも、もっと得意な方にお願いしたいと思っています。そこがまだまだ欠けている部分で、セールスを力強く推進してくれる人と出会って一緒に組織を大きくしていけたらいいな、という気持ちがあります。

林:Henryのクリニック版はリリースから1年が経ち、病院版も開発が大詰めでこれから改善するフェーズに入っているので、あとはどれだけ世の中に広めていけるかが勝負だと思っています。

どんなに良いプロダクトであっても会社自体が大きくならないと広まっていかない業界なんですが、まだまだ小さい会社に留まっているのが1つの課題。会社を大きくして世の中に広めていくというところを、僕や逆瀬川の考えるスケールをさらに超えていくような規模感でスピードアップさせてくれて、僕らと一緒に組織を大きくしたい人が加わってくれると一番ありがたいですね。

─ VCの立場から見て、ここを強化したらもっと良くなるのではないか、と思われる部分はありますか?

曽我:コアとなる部分はお2人を中心に出来上がりつつあると思うんですが、それをもう一段階、二段階と大きくしていくのがこれからの課題ですよね。お2人の右手・左手になるような、役割で言うと執行役員体制を作ったり、そういった組織としての厚みの部分はまだまだ高めていく必要があるかな、と感じています。

これからはどんどん外に発信していって「うちはこんないい会社だよ」と表に出してほしい。スタートアップ界隈だけではなくて、社会的な認知度を高めていく、というのがこれからやってほしいなと思うところです。

─ 組織を大きくして、社会的認知度を高めていくのが今の課題ということですね。

ヘンリーが大きく成長するために必要なものは“人”

─ 「社会課題を解決し続け、より良いセカイを創る」というミッションのため、今後取り組んでいきたい課題はありますか?

逆瀬川:今作っているシステムは医療DXのセンターピンです。こちらを提供するだけでも、医療機関の業務改善や売上アップに繋がる部分は大きいです。でも、病院・クリニックにとってまだまだ非効率な部分や、しっかりと売り上げが伸びていないと感じている部分もあるはずです。そこの解決をお手伝いできるシステム作りをしていきたいですね。

加えて、提供したシステムが実装されてより良くなっていくと、医療機関様の時間・精神・お金の面で余裕ができて、地域を支える医療の質を間接的に上げることができるのではないかと考えています。

そこを解決していった上で、医療費をはじめとする医療業界の大きな課題にも取り組んでいきたいと思っています。

林:医療業界の課題がとても大変で、次の課題に取り組めるのがいつになるかイメージはできないんですが、今対象としている中小規模の病院から密接につながるのは介護になるのかな、と。

我々もこれから中小病院向けにサービスを提供していく以上、介護の繋がりを避けては通れないでしょうし、おそらく医療機関の方々の要望に応えていくと、自然とそこにつながっていくのかなと思っています。

逆瀬川:50年、100年の時間軸で言うならば、今はNPOが取り組んでいてビジネス上で解決しづらい、教育や文化などの分野にも取り組んでいきたいですね。いかにビジネスとして、経済的合理性の中で解決していくか、というチャレンジです。

1つずつ解決するきっかけを見つけて、皆がその分野の社会課題を解決していくようになれば、解決スピードが上がる。そのリーディングカンパニーになれたらと思っています。

─ VCの立場から見て「こんな方向へ進んでほしい」と期待されていることはありますか?

フェムトパートナーズ 曽我悠平さん

曽我:今ある商品だけでもすごく大きな会社になると思いますが、さらに先を見ておられて、病院の働き方経営を進化させていくような言葉が出てきたので、すごく頼もしいですね。本当にそういった、できるだけ沢山の課題を解決するような会社になっていってほしいなと思います。

─今後、ヘンリーがより一層大きく成長していくために必要な要素は何だと思われますか?

林:そうですね、今一番必要なのはやっぱり“人”だな、とここ1年で強く痛感しました。逆瀬川と2人でできることにはすぐ限界が来たんですが、10人、20人と優秀なメンバーが入ってきてくれたことによって、推進力が上がったなと感じています。

これからも単純にメンバーの数を増やすというよりは、僕や逆瀬川の思考範囲を超えていってくれるような人に入ってもらって、組織をどんどん良くしていけたらと思っています。

逆瀬川:会社としてはより難しい課題、より時間のかかる課題を解決して、世の中により大きなインパクトを残していくことが重要だと考えています。そう考えていくと、ピラミッド型でトップダウンの組織で僕や林が思いつく範囲の中で解決しようとすると、視点が偏ってしまい大きなインパクトを出すことは難しくなる。

ですので、より難しい課題を本質的に解決しようという意思があり、胆力があり、経験したことがないことにむしろわくわくしながら取り組み、自ら学んでいける、という熱意を持った方に多く入っていただけると、解決のスピードも上がっていくはずだと思っています。

─VCの立場から見て、今後の成長のために必要な要素は何だと思われますか?

曽我:我々もやっぱり“人”が一番大切なのかな、と思っています。お2人がおっしゃるように、どんどん優秀な人を組織に加えていくというのが会社の成長には一番です。ただ、なかなかそれができないんですよね。

お2人には経営者として会社を大きくするという視点に立っていただいて、自分たちを超えていくような人をどんどん巻き込んでいくべきだと思います。それを今お2人の口から直接おっしゃっていただいたので、非常に心強かったです。その気持ちを忘れずに、優秀なメンバーを集めて会社を大きくしていこう、と腹をくくってやっていただきたいと思います。

─ありがとうございました。最後に、何か話しておきたいことはありますか?

曽我:次のファイナンスをいつにするかについて話しますか?(笑)

逆瀬川:確かに、いいですね(笑)
ここまでのお話を聞いていて、よりスピード感を出すには、次の資金調達も早い方が良いんじゃないかという気持ちも出てきました。

曽我:やっぱりスピード感を上げるためには、資金調達が必要になってくると思うんです。私たちもまだまだ投資をしたいので、早く次の機会が来ることを願っています。

逆瀬川:次のファイナンスはそれこそ、新しく入る方にやっていただけたらいいなとも考えています。まだまだ成長し続けますので、今後ともどうぞよろしくお願いします!

ヘンリーは、これからもチャレンジと成長を続けます!

フェムトパートナーズとのインタビューを通して、ヘンリーにとっての「社会課題を解決する」ことにかける思いや、今後の成長に向けた動きを紐解いていきました。これからも社会課題の解決にチャレンジし続け、成長のスピードをどんどん上げていきますので、どうぞご期待ください!

【座談会参加者プロフィール】

フェムトパートナーズ / General Partner 磯崎 哲也

長銀総合研究所で、経営戦略・新規事業・システムなどの経営コンサルタント、インターネット産業のアナリスト等として勤務。その後、カブドットコム証券の社外取締役、ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師などを歴任。
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。公認会計士・システム監査技術者。著書『起業のファイナンス』『起業のエクイティ・ファイナンス』。ブログ「isologue」や「週刊isologue」、Facebook等で情報を発信。

フェムトパートナーズ / General Partner 曽我 悠平

2002年、新生銀行入行。2004年からベンチャー投資業務に従事。2009年、東証一部上場製造業関連会社にて投資、アドバイザリー業務に従事。2012年、新生銀行プライベートエクイティ部、2013年よりフェムトグロースキャピタル参画。2017年、当社設立、ゼネラルパートナー就任。
中央大学法学部卒、同大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

フェムトパートナーズ / Managing Partner 大久保 克彦

長銀総合研究所にて、組織人事ならびに事業再構築領域のコンサルティングならびにM&Aのアドバイザリー業務に従事。その後、デロイト・トーマツコンサルティング、ネットイヤーグループ等を経て、株式会社電通に入社。
電通では国内事業部門においてM&A、事業投資ならびに事業再編を担当。「電通デジタル投資事業有限責任組合(電通デジタルファンド)」の組成も主導し、ポートフォリオマネジメントを担当。当該ファンドのGPである電通イノベーションパートナーズの代表取締役社長を務めた。
2020年5月、フェムトパートナーズのマネジングパートナーに就任。
早稲田大学人間科学部人間基礎科学科(細胞生物学専攻)卒

フェムトパートナーズ / Principal 山田 慎吾

2015年、新生銀行グループで投融資を手がける新生インベストメント&ファイナンス入社。債権買取、エクイティ投資、不動産ファイナンス案件に携わり、主に貸付債権や未上場の中小企業株式、不動産の評価分析業務を担当。不動産ファイナンス案件では、ローンのオリジネーションから実行後のモニタリングまでの一連の業務に携わる。
2017年8月より新生企業投資からフェムトパートナーズに参画。
慶應義塾大学法学部卒、中央大学法科大学院修了。

ヘンリー/共同CEO 逆瀬川光人

楽天にて複数の新規事業開発を経験。2016年にウォンテッドリー株式会社に転職し、新規事業室長として、ビジネス・マーケティング領域全般を統括。デザイン、営業、マーケティングを担当。林とともに2018年5月に株式会社B&Wを創業。2020年より慶應義塾大学病院眼科学・研究員を拝命。

ヘンリー/共同CEO 林太郎

学生時代、アフリカで日本の中古重機をレンタルする新鋭スタートアップで現地リーダーとして活躍。楽天株式会社入社後、楽天カード全体のSEOマーケティング業務や、楽天市場・楽天カードのビッグデータ分析等を実施する。逆瀬川とともに2018年5月に株式会社B&Wを創業し、2021年10月に社名を株式会社ヘンリーに変更。

インタビュー:鶴留彩花
写真:中村友莉那


ヘンリーでは、さらなる成長に向けて採用も積極的に行っています。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。