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鯨を食べるんだよ私は

 和歌山県は太地町まで、
 高速を使ってもなお片道5時間かけて、
 今時マニュアルのガソリン車で向かったわけだ。

 もちろん交通法規は遵守し適宜休憩も入れている。

 エコロジーやSDGsに関してお嘆きの御仁には、
 リチウムにタンタルの産出国で、
 今起きている事態をある程度把握した上で語って欲しい。


 仕事上のストレスが、
 溜まりに溜まりまくると配偶者は、

 2、3年に一度の割合で、
 「道の駅たいじ」まで鯨カツ定食を食べに、
 また私に鯨の竜田揚げ定食を食わせに、
 さらには鯨コロッケをテイクアウトしに、
 会社には有給休暇を申請してまで行くわけだ。

 そこまでしてなぜ鯨を食いたいのか?
 不思議に思う方もいるだろう。
 全力で答えよう。


 旨いからだよ!!!


 親世代は大阪在住とはいえ先祖の一族は、
 捕鯨の本拠地であった和歌山県出身の配偶者と、
 関西からの移住民により捕鯨が伝えられた、
 長崎県出身の、更にその移住民の末裔である私だが、

 この二県の共通点は何か?

 耕した程度では実りなど得られない、
 平坦ではない土地が多すぎる事だ!

 山の恵みに森の恵みに海の恵みが生活基盤だ。
 毎日がほぼ運任せの命懸けであり、
 野菜にも米にも飢えまくっている!

 大鯨が1匹獲れた日には、
 日頃乏しい実りを分け合っている小作農も、
 普段は蔑まれ村八分に遭っている行商人も、

 誰もが、肉を、食えるんだよ!!!


 野蛮だの残酷だのと失敬な!
 肉は、文字通り、祭りである。

 約300年以前からの先祖一族の喜びが、
 一口ごとに崇め奉り拝み倒す感覚が、
 我々夫婦にはおそらくDNAにまで染み込んでいる!


 眉をひそめる方々はまず日々の食事を疑ってくれ。
 漁獲量が減らされた事は特に悲しまない。
 先祖の昔からそのくらいのものだった。
 滅多に獲れないからこそ貴重だったのだから。

 無論、食べたくない方は食べなくていい。
 ハラールミートにヴィーガン食の、
 手に入りにくさは大変だと思うし、
 私も可能な限りでの支援をしたい。

 しかしながら、
 如何なる食材であれ、
 好んで調理し食している者を蔑めるほどの権利は、
 誰も有していないと私は信じる。

 「ならば人肉食も認めるんだな?」
 などど冷笑してくる御方には、
 「人肉に限らず食事は嗜好品ではない
 と返させてもらう。

 繰り返すが、ない。
 何も食肉に限らない。

 なぜ我々はこの期に及んで、
 価格高騰とは言いながらそれでもなお、
 昼下がりのカフェで約1000円も支払えば、
 パン二つ三つにコーヒーまで頂く事が出来る?

 何が一体この生活を可能にしている?
 帰る家を無くした者に、
 飢えて亡くなる者が、
 今現在も多くいる、
 今後も増え続けるその一方でだ。

 そこに心を痛めろ、己を恥じよとは言わない。
 むしろそれを今他人に言う方々にこそ、
 己の顔を鏡に映し見てもらいたい。

 私が言いたいのはただ、
 今我々が選び出し目の前に並べる事が出来る、
 食材に飲み水の一口一口を、
 有難く大切に思っていなければ、
 バチが当たって然るべきだという事だ。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!