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往生しました洗濯機

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 8月に入ったところで、
 我が家の洗濯機様が御臨終と相成った。

(文字数:約2000文字)



彼の人生に一片の悔い無し

  今では一切推奨されていない事だが、
  我が家の洗濯機置き場はベランダだ。
  直射日光が射し込み雨風も降り込む

  時折洗濯槽クリーナーを突っ込みながら、
  不調を感じつつも騙し騙し使っていたが、
  最終的に引導を渡したのはおそらく、
  今年の猛暑であったか。

  とは言え私が大阪で、
  一人暮らしを始めた際に買ったもので、
  実に20年も使い続けた。

  人間であれば大往生であろう。
  これまで大変お疲れ様でした。


人生とコインランドリーの選択

  夫婦揃って大型電気店に赴き、
  新しい洗濯機を購入したのだが、
  配偶者の在宅時が望ましいので、
  配達・設置してもらえるのは一週間後だ。

  幸運にも我々夫婦は、
  これまでの人生で一切、
  コインランドリーを使う事無く生きて来られた。

  私は転勤で大阪に移り住むまで、
  実家から大学にも就職先にも通えていたし、
  配偶者は学生寮に社員寮を渡り歩いたので、
  住民なら自由に使える洗濯機が配備されていた。

  つまり人生初のコインランドリー。
  我が家から通えるのは2店舗。

  おそらく一般的にイメージされるであろう、
  夜中でも煌々と明るい窓から、
  乾燥機が立ち並ぶ室内が見えている、
  コンビニそばの1店舗と、

  銭湯横の配管口そばを利用した、
  薄暗いスペースに、
  今は無きSANYOの洗濯機が、
  コンクリート直置きされている1店舗。

  僅かだけの検討で我々は、
  銭湯横の店舗に決めた。
  なぜって1回200円と安かったから。
  夏場でほぼ毎日通うとなると。

  しかし業務用の洗濯機なので、
  ガシガシ回してくれる。

  明らかに衣服が傷むので、
  100円ショップで洗濯ネットと、
  乾燥機まで使う料金は毎日掛けられないので、
  網状のランドリーバッグを購入。
  洗濯が終わり次第持ち帰って干す。


君は文化住宅を知っているか

  話は変わるようで舞い戻ってくるものなので、
  気を長くして待ち受けてもらいたいのだが、

  大阪は河内かわち地域の中でも、
  とりわけ我が家の近所は、

  明治や江戸、
  いやもしかすると戦国時代辺りからの、
  豪商や地主と、
  小作人や職人たちが、
  隣り合わさって絶妙に、
  棲み分けられながら暮らしていて、

  九州から移り住んで来た私は、
  日々暮らしながら、
  まさに我が国を凝縮した姿のように、
  感じているのだが、

  我が国自体が世界各地各緯度ごとの、
  植生に食文化を、
  サンプルとして寄せ集めた姿のように、
  感じてもいるので、

  標本の中の更に縮図である。

  通う前から気が付いてはいたのだが、
  ここのコインランドリーは日々その機能を、
  十二分に発揮し続けている。

  表通りからは見えにくい、
  裏側の文化住宅並びに住んでいる、
  おじちゃんおばちゃんおじいちゃんたちが、

  自転車の前カゴに洗濯物を乗っけて、
  この地域ではあるあるだが他所では信じ難かろう、
  くわえタバコでやって来ては、

  自転車は銭湯脇の駐輪場に止め、
  自分の住居には無いひとっぷろを浴びる間に、
  洗濯機を回す事が日課になっているのである。

  隣の市の文化住宅並びは取り壊され、
  新しく商業施設として開発されるに至った。

  「あっこのおじいちゃんら、
   どこに行きはるんやろうか」
  「あん人ら住めるとこ無いやん。
   他はどっこも高いでぇ」

  そうした会話が令和の今現在でも、
  地域によっては交わされているのを、
  私はよく耳にするばかりではなく、
  掃除の現場では会話の端に加わってもいる。

  当てになる親族などは終生頭にも浮かばない。
  いざとなったら文化住宅があるさ。

  そうした人々も今現在の我が国内には、
  現実に存在し、
  かつそれぞれに生き続けているのである。


コインランドリー通い終了

  新しい洗濯機が届き、

  エアコンなど無いので開け放した配管スペースで、
  せめて道路沿いの風を受けていた一週間も終了。

  網状のランドリーバッグは、
  配偶者のキャンプ道具に再利用。

  操作パネル部分が、
  直射日光にも雨風にも弱かろうから、
  エアコンの室外機用日除けを買って、
  洗濯機前面とパネル部分を覆うように、
  両面テープで貼る。

  もう流石に20年は持たないだろうが、
  今から5年くらいは頑張ってほしい。


以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。
  

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